「違う」を表す言葉
「考え方が違う」
「色が違う」
「答えが違う」
「話が違う」
「予定と違う」
「違う」は、日常会話で非常によく使われる日本語である。
しかし、これらの「違う」はすべて同じ意味ではない。
「この二つは違う」なら、二つのものに差があるという意味である。
「その答えは違う」なら、単なる差ではなく「正しくない」という意味に近づく。
「思っていたのと違う」なら、現実と予想が一致していない。
さらに周辺には、「異なる」「間違う」「ずれる」「食い違う」「異質」「別」「区別する」などの言葉がある。
英語でも「違う」は一つの単語では表せない。
different、differ、wrong、unlikeなど、何と何が、どのような意味で違うのかによって表現が変わる。
では、そもそも「違う」とはどのような概念なのだろうか。
「違う」に意味のある漢字違いはあるのか
「ちがう」は現代日本語では基本的に「違う」と書く。
「見る・観る・診る」のように、同じ読みを漢字によって使い分ける言葉ではない。
ただし、「違」という漢字を使った関連語には「違い」「相違」「違反」「違和感」などがあり、中心には広く基準や他のものと一致していないことがある。
| 表記・関連語 | 中心となる概念 | 使用例 |
|---|---|---|
| 違う | 同じではない・一致しない | 二人の意見は違う |
| 違い | 二つ以上のものの差 | 色の違い |
| 相違 | 二つ以上のものが一致しないこと | 認識に相違がある |
| 違和感 | 周囲や期待とうまく一致しない感覚 | 説明に違和感がある |
「相違」は「違い」より改まった言葉であり、日常会話では「違い」のほうが一般的である。
「違う」に関係する日本語
まず英語を考える前に、日本語の「違う」の周辺を整理してみよう。
| 日本語 | どのような「違う」なのか |
|---|---|
| 違う | 同じではない・一致しない |
| 異なる | 性質・内容などに差がある |
| 別 | 同じものではなく、分かれている |
| 違いがある | 比較したものの間に差がある |
| 間違う | 正しいものから外れる |
| 間違っている | 内容・判断などが正しくない |
| ずれる | 本来の位置・時間・基準などから外れる |
| 食い違う | 意見・説明などが互いに一致しない |
| 異質である | 性質や種類が周囲と異なる |
| 似ていない | 共通する特徴が少ない |
| 区別する | 違いを認識して分ける |
| 見分ける | 違いを見つけて識別する |
| 差がある | 程度・数量・性質などに隔たりがある |
| 変わっている | 普通・一般的なものと異なる |
「違う」は非常に広い。
そのため、「何が違うのか」だけでなく、どのような種類の違いなのかを見る必要がある。
「違う」の概念はどこへ枝分かれするのか
「違う」の中心には、
二つ以上のもの、あるいは現実と基準が一致していない
という概念がある。
そこから、いくつかの方向へ意味が広がる。
| 概念の方向 | 日本語 | 注目しているもの |
|---|---|---|
| 単純な差 | 違う・異なる | AとBが同じではない |
| 独立性 | 別 | 同じものではなく分かれている |
| 正誤 | 違う・間違っている | 正解・基準から外れている |
| 位置・時間 | ずれる | 本来の位置や時間から外れる |
| 意見・説明 | 食い違う | 複数の内容が一致しない |
| 性質 | 異質である | 種類・性質が周囲と違う |
| 類似性 | 似ていない | 共通点が少ない |
| 認識 | 区別する・見分ける | 違いを認識して分ける |
| 程度 | 差がある | 数量・程度に隔たりがある |
ここで重要なのは、「違う」が必ずしも「間違っている」を意味しないことである。
「あなたと私は考え方が違う。」
と言っても、どちらかが間違っているとは限らない。
一方、
「その答えは違う。」
では、「正解ではない」という意味になる。
同じ「違う」でも、比較なのか正誤なのかで概念が大きく変わる。
「違う」と「異なる」|日常的な表現か、差を客観的に示すか
「違う」と「異なる」は非常に近い。
「二人の考え方は違う。」
「二人の考え方は異なる。」
どちらも成立する。
ただし、「違う」は日常会話で非常に広く使える。
「今日の服、いつもと違うね。」
「それは私の考えとは違う。」
「この味、前と違う。」
一方、「異なる」はやや客観的・説明的な表現である。
「地域によって制度が異なる。」
「二つの製品は構造が異なる。」
文章では使いやすいが、
「今日の服、いつもと異なるね。」
とすると日常会話ではやや硬い。
つまり、意味の中心は重なるが、「違う」は日常的で広く、「異なる」は差を客観的に示しやすいという違いがある。
「違う」と「別」|差があるのか、そもそも別のものなのか
「違う」と「別」も近いが、視点が異なる。
「AとBは違う。」
では、AとBを比較して同じではないことを表している。
一方、
「これは別の問題だ。」
では、比較して差を見つけるというより、そもそも同じものとして扱わないという意味になる。
たとえば、
「値段が違う。」
なら二つの値段に差がある。
「別料金である。」
なら料金そのものが分けて設定されている。
「違う」は比較による差、「別」は分離・独立という方向へ意味が伸びている。
「違う」と「間違う」|同じではないのか、正しくないのか
「違う」と「間違う」は特に重要な組み合わせである。
「AとBは違う。」
なら、単にAとBが同じではない。
しかし、
「答えを間違う。」
なら、正解から外れている。
つまり、
違う → 一致しない
間違う → 正しいもの・期待されるものから外れる
という違いがある。
ところが日本語では、
「その答えは違うよ。」
のように「違う」が「間違っている」の意味でも使われる。
ここが英語を考えるときに重要になる。
「違う」を見たら常にdifferentと考えるのではなく、単なる差なのか、それとも誤りなのかを判断する必要がある。
「違う」と「ずれる」|一致しないのか、基準から位置が外れるのか
「ずれる」は「違う」よりも、基準となる位置や時間、考えなどから外れている感覚が強い。
「時計が5分ずれている。」
「予定がずれた。」
「話の焦点がずれている。」
「違う」と言えば結果として一致していないことを表せるが、「ずれる」には本来重なるはずのものが少し横へ外れたようなイメージがある。
そのため、物理的な位置だけでなく、
「認識がずれている。」
「論点がずれている。」
のような抽象的な対象にも使える。
「違う」と「食い違う」|差があるのか、互いの内容が一致しないのか
「食い違う」は、二つ以上の意見・説明・情報などが一致していないことを表す。
「二人の証言が食い違っている。」
「双方の認識が食い違っている。」
単に、
「二人の意見は違う。」
とも言える。
しかし「食い違う」には、本来対応したり一致したりするはずの二つの内容が、かみ合っていないという感覚がある。
「違う」よりも、「一致しない」という関係そのものに焦点を当てた表現である。
「違う」と「異質」|差があるのか、性質そのものが違うのか
「異質」は、単に一部分が違うというより、性質や種類そのものが周囲と異なることを表す。
「この作品だけ少し違う。」
なら、何らかの違いがあるという広い表現である。
「この作品は他とは異質である。」
なら、作風や性格など、根本的な性質が他と違うという印象が強くなる。
「異質」は「違う」より狭く、違いの深さや種類に焦点を当てた言葉である。
「違う」と「似ていない」|差を見るか、共通点の少なさを見るか
「違う」と「似ていない」は同じ場面で使えることがある。
「この二人は性格が違う。」
「この二人は性格が似ていない。」
しかし視点は逆である。
「違う」は差があることを見る。
「似ていない」は共通する特徴が少ないことを見る。
たとえば、少しだけ違う二つの製品なら「違う」とは言えるが、「似ていない」と言うと差がかなり大きい印象になることがある。
「同じ/違う」と「似ている/似ていない」は、関連しているが別の軸なのである。
「違う」と「区別する」|違いそのものか、違いを認識して分けることか
「違う」は状態を表す。
「AとBは違う。」
一方、「区別する」は、その違いを認識して別々に扱う行為である。
「AとBを区別する。」
さらに「見分ける」は、外見や特徴などから違いを認識することに焦点を当てる。
「双子を見分ける。」
つまり、
違う → 差が存在する
区別する → 差をもとに分ける
見分ける → 差を見つけて識別する
という流れになる。
「違い」という概念は、単なる状態から人間の認識へも広がっているのである。
ここまでの日本語を概念で整理すると
| 概念 | 日本語表現 |
|---|---|
| 同じではない | 違う |
| 客観的に差がある | 異なる |
| 同じものとして扱わない | 別 |
| 正しいものから外れる | 間違う・間違っている |
| 位置・時間・基準から外れる | ずれる |
| 意見・説明が一致しない | 食い違う |
| 性質や種類が違う | 異質である |
| 共通点が少ない | 似ていない |
| 数量・程度に隔たりがある | 差がある |
| 違いを認識して分ける | 区別する |
| 特徴から識別する | 見分ける |
「違う」という一語から、比較・正誤・位置・一致・性質・認識へと概念が枝分かれしている。
ここまで日本語を整理して初めて、英語のdifferent、differ、wrongなどの違いも見えやすくなる。
英語では「違う」をどう表すのか?
では、英語では「違う」をどう表すのだろうか。
代表的な表現を整理すると次のようになる。
| 日本語のイメージ | 英語 | コアイメージ |
|---|---|---|
| 違う・異なる | different | 同じではない性質・状態 |
| 異なる・違いがある | differ | 二つ以上のものに差がある |
| ~とは違って | unlike | ~と似ていない・~とは異なって |
| 間違っている | wrong | 正しいものから外れている |
| 別の | another / separate | 同じものではなく別に存在する |
| ずれている | off / out of alignment | 基準・位置などから外れている |
| 食い違う | disagree / conflict | 意見・情報などが一致しない |
| 区別する | distinguish | 違いを認識して分ける |
この表も「違う=different」という一対一の対応ではない。
日本語の「その答えは違う」は、英語ではdifferentよりwrongが自然になる。
一方、「二人の考えは違う」ならdifferentやdifferが使える。
つまり英語を選ぶ前に、その「違う」が何との不一致を表しているのかを見る必要がある。
different|同じではない
differentは「違う」を考えるうえで最も基本的な英語である。
コアイメージは、
比較したものが同じではない
ことである。
These two bags are different.
この二つのバッグは違う。
My opinion is different from yours.
私の意見はあなたの意見とは違う。
differentは形容詞であり、「違っている状態・性質」を表す。
色、形、考え方、方法、文化など、幅広い対象に使える。
ただし、
Your answer is different.
と言えば基本的には「あなたの答えは他と異なる」という意味であり、「あなたの答えは間違っている」とは限らない。
ここが日本語の「違う」と大きく異なるところである。
differ|二つ以上のものに差がある
differは「異なる」「違いがある」を表す動詞である。
The two plans differ in price.
その二つのプランは価格が異なる。
Their opinions differ.
彼らの意見は異なる。
differentが「違っている」という状態・性質を表す形容詞なのに対し、differはAとBの間に差があることを動詞として表す。
比較すると、
Their ideas are different.
彼らの考えは違う。
Their ideas differ.
彼らの考えは異なる。
となる。
意味は近いが、differのほうがやや文章的・客観的な響きを持つことが多い。
日本語の「異なる」と相性がよいが、必ず「異なる=differ」というわけではない。
wrong|正しいものから外れている
wrongは、日本語の「違う」の中でも正誤に関係する領域を担当する重要な言葉である。
Your answer is wrong.
あなたの答えは間違っている。
I was wrong.
私が間違っていた。
日本語では、
「その答えは違う。」
「いや、それは違うよ。」
のように「違う」で誤りを指摘できる。
しかし英語では、単なる差を表すdifferentと、正しくないことを表すwrongを区別する。
different → 同じではない
wrong → 正しくない
である。
この違いは、「違う=different」と覚えるだけでは身につかない。
unlike|~とは違って・~に似ていない
unlikeは、あるものを基準として「それとは違う」「それに似ていない」と表す。
Unlike his brother, he is very quiet.
兄とは違って、彼はとても静かである。
This is unlike anything I’ve seen before.
これは今まで見たものとはまるで違う。
differentは、
「AとBは違う」
という差そのものを表しやすい。
unlikeは、
「AはBとは違って」
のように、比較対象を基準として対照させるときに使いやすい。
また、unlikeには「似ていない」という方向の意味もある。
separate|違うものではなく、分かれている
日本語の「別」は、単なる「違う」とは少し違う。
英語でもdifferentとseparateでは視点が異なる。
We have separate rooms.
私たちは別々の部屋を使っている。
ここでは、部屋の性質が「違う」というより、一つではなく分かれていることが重要である。
different roomsなら「異なる部屋」「別の部屋」という意味になり得るが、separate roomsは「それぞれ分かれた部屋」という独立性に焦点がある。
日本語の「違う」と「別」の違いが、そのまま英語を理解する手がかりになる。
「違う・間違う・ずれる・食い違う」を英語でどう分けるのか
日本語側の概念から英語を見ると、違いが整理しやすい。
| 状況 | 日本語 | 英語の代表例 |
|---|---|---|
| AとBが同じではない | 違う | be different |
| AとBに差がある | 異なる | differ |
| 正解ではない | 間違っている | be wrong |
| 基準から少し外れている | ずれている | be off |
| 位置が一致していない | ずれている | be out of alignment |
| 意見が一致しない | 意見が食い違う | disagree |
| 情報・説明が矛盾する | 食い違う | conflict |
| 他と性質が大きく違う | 異質である | be distinct / be different in nature |
たとえば日本語では、
「数字が違う。」
だけでも文脈によって、
「二つの数字が異なる」
とも、
「その数字は間違っている」
とも解釈できる。
英語では前者ならdifferent、後者ならwrongが自然である。
英語を選ぶためには、日本語の「違う」が何を意味しているのかを一段深く考える必要がある。
「違い」を認識する英語へ広げる
「違う」の世界は、「差がある」という状態だけでは終わらない。
その差を人間が認識する方向へ広げると、distinguishやtell apartなどにつながる。
| 日本語 | 英語 | 概念 |
|---|---|---|
| 区別する | distinguish | 特徴の違いを認識して分ける |
| 見分ける | tell apart | 二つ以上のものを識別する |
| 違いが分かる | tell the difference | 差を認識できる |
| 比較する | compare | 複数のものを並べて見る |
| 対照する | contrast | 違いを目立たせて比べる |
I can’t tell the twins apart.
私はその双子を見分けられない。
Can you tell the difference?
違いが分かる?
ここでは「違う」という状態から、その違いを人間が認識できるかという世界へ移っている。
differentだけを覚えるのではなく、この広がりまで含めて理解すると「違い」の英語がつながってくる。
「違う」の概念地図
「違う」の世界を整理すると、次のようになる。
違う
├─ AとBが同じではない
│ ├─ 違う → different
│ └─ 異なる → different / differ
│
├─ 比較対象と似ていない
│ └─ ~とは違う → unlike
│
├─ 正しいものから外れる
│ ├─ 違う → wrong
│ └─ 間違っている → wrong
│
├─ 基準から外れる
│ └─ ずれる → off / out of alignment
│
├─ 内容が一致しない
│ ├─ 意見が食い違う → disagree
│ └─ 情報が食い違う → conflict
│
├─ 同じものとして扱わない
│ └─ 別 → separate / another
│
└─ 違いを認識する
├─ 区別する → distinguish
├─ 見分ける → tell apart
└─ 違いが分かる → tell the difference
このように考えると、different、differ、wrong、unlikeなどは、ばらばらの英単語ではない。
すべて日本語の「違う」を中心とする概念世界の中で、どのような不一致・差を見ているのかによって枝分かれしている。
まとめ|「何が、どのように違うのか」を考える
| 概念 | 日本語 | 英語の代表例 |
|---|---|---|
| 同じではない | 違う | different |
| 差が存在する | 異なる | differ |
| 比較対象とは違う | ~とは違う | unlike |
| 正しくない | 違う・間違っている | wrong |
| 同じものではなく分かれている | 別 | separate / another |
| 基準から外れている | ずれる | off |
| 意見が一致しない | 食い違う | disagree |
| 情報・内容が一致しない | 食い違う | conflict |
| 違いを認識して分ける | 区別する | distinguish |
| 特徴から識別する | 見分ける | tell apart |
日本語の「違う」は非常に広い。
「二つの色が違う。」
「考え方が違う。」
「その答えは違う。」
「予定と違う。」
「二人の話が食い違う。」
どれも何らかの意味で「一致していない」が、同じ種類の違いではない。
英語では、
同じではない
→ different
二つに差がある
→ differ
正しくない
→ wrong
比較対象とは違う
→ unlike
互いの意見が一致しない
→ disagree
というように、何と何が一致していないのかによって表現が変わる。
大切なのは、「違う=different」と一対一で覚えることではない。
まず日本語の段階で、単に差があるのか、正解から外れているのか、基準からずれているのか、互いの意見が一致していないのかを考える。
「何が、どのように違うのか」が分かれば、different、differ、wrong、unlikeなどの英語も、一つの概念世界としてつながって見えてくるのである。