「したい」を表す言葉
「したい」は、自分の希望や欲求を表すときに非常によく使う日本語である。
「旅行したい」
「英語を勉強したい」
「いつか海外で働きたい」
「ちょっと休みたい」
「できれば参加したい」
どれも「したい」を使っている。しかし、その気持ちは同じではない。
今すぐ何かをしたいこともあれば、「いつかできたらいい」という長期的な願いもある。「ぜひしたい」のように強い希望を表すことも、「できればしたい」のように控えめな希望を表すこともある。
さらに「したい」の周辺には、「望む」「願う」「やってみたい」「〜するつもりだ」「〜できたらいい」などの表現がある。
英語でも同じである。
「したい」はwant toと習うことが多いが、実際にはwant to、would like to、hope to、feel like -ing、wishなど、気持ちの種類によって異なる表現が使われる。
重要なのは、
「したい=want to」
と一対一で覚えることではない。
そもそも「したい」とは、どのような気持ちなのだろうか。
まず日本語の世界を整理し、そこから英語へ進んでいこう。
「したい」は動詞の「する」+希望の「たい」
「したい」には、「見る・観る」のような意味のある漢字違いはない。
その代わり、言葉の作り方を見ると「したい」という概念がわかりやすい。
「したい」は、
する + たい
という形である。
「たい」は動作に対する希望を表す。
| 表現 | 中心となる概念 | 使用例 |
|---|---|---|
| したい | することを望む | 旅行したい |
| 行きたい | 行くことを望む | 海外に行きたい |
| 食べたい | 食べることを望む | ラーメンを食べたい |
| 会いたい | 会うことを望む | 友達に会いたい |
| 知りたい | 知ることを望む | 理由を知りたい |
つまり、「したい」は特定の行動を表す動詞というより、行動に対して自分の気持ちを向ける表現である。
「する」が行動そのものを表すのに対し、「したい」はまだ実現していない行動へ希望を向けている。
この「現実」と「希望」の間にある距離が、「したい」を考える重要なポイントになる。
「したい」に関係する日本語
「したい」の周辺には、希望の強さや実現可能性などによってさまざまな表現がある。
| 日本語 | どのような「したい」なのか |
|---|---|
| したい | ある行動をすることを望む |
| やりたい | ある行動を実際に行いたい |
| 欲しい | 物や状態などを自分のものにしたい |
| 望む | ある状態や結果を実現してほしいと思う |
| 願う | 強く望んだり、実現を祈ったりする |
| 希望する | あることの実現を望む |
| やってみたい | 経験として試してみたい |
| できればしたい | 条件が合えばしたい |
| ぜひしたい | 強くしたい |
| いつかしたい | 将来のある時点で実現したい |
| したくてたまらない | 非常に強くしたい |
| する気がある | 行動する意思がある |
| するつもりだ | 実際に行う意図・予定がある |
| できたらいい | 実現すればよいと思う |
| してみようと思う | 行動する方向へ気持ちが動いている |
| する気分だ | 今その行動をしたい気分である |
| したくない | その行動を避けたい |
この一覧を見ると、「したい」の周辺には単なる「欲求」だけでなく、希望・願望・意思・予定・気分まで広がっていることがわかる。
「したい」の概念はどこへ枝分かれするのか
「したい」の世界は、いくつかの軸で整理できる。
| 違いの軸 | 主な日本語 | 注目する点 |
|---|---|---|
| 基本的な欲求 | したい、やりたい | 行動を望んでいる |
| 強さ | したい、ぜひしたい、したくてたまらない | どれほど強く望むか |
| 丁寧さ | したい、したいと思う、希望する | 希望をどう表現するか |
| 経験への関心 | したい、やってみたい | 経験してみたいか |
| 条件 | したい、できればしたい | 条件付きの希望か |
| 時間 | 今したい、いつかしたい | いつ実現したいか |
| 実現可能性 | したい、できたらいい、願う | 実現との距離 |
| 意思 | したい、する気がある | 欲求から行動意思へ進んでいるか |
| 計画 | したい、するつもりだ | 実行する予定まであるか |
| 一時的な気分 | したい、する気分だ | 今の気分による欲求か |
特に重要なのは、希望と意思を区別することである。
「海外で働きたい」
と言っても、まだ何も準備していない可能性がある。
一方、
「来年から海外で働くつもりだ」
となれば、単なる希望から具体的な意思・計画へ進んでいる。
「したい」という気持ちがどの段階にあるのかによって、英語表現も変わってくる。
「したい」と「やりたい」|広い希望か、行動への意欲か
「したい」と「やりたい」は近い。
「もっと勉強したい」
「もっと勉強をやりたい」
のように、似た場面で使えることもある。
ただし、「したい」は「旅行したい」「結婚したい」「確認したい」など、さまざまな動詞に「たい」を付けて希望を表す広い形である。
一方、「やりたい」は「やる」という動作そのものに意欲を向ける。
「私がやりたい」
「その仕事をやってみたい」
「サッカーをやりたい」
などでは、行動への意欲が感じられる。
つまり、
したい → ある行動を望む広い表現
やりたい → その行動を自分で実際にやろうとする気持ち
という違いとして捉えられる。
「したい」と「やってみたい」|実行したいか、経験してみたいか
「やってみたい」には「みる」が入っている。
ここでの「みる」は視覚ではなく、試しに経験するという意味である。
「スカイダイビングをしたい」
なら、スカイダイビングをすること自体を望んでいる。
「スカイダイビングをやってみたい」
なら、「経験として一度試してみたい」というニュアンスが強くなる。
「海外で暮らしてみたい」
「この料理を作ってみたい」
「一度その仕事をやってみたい」
などにも同じ感覚がある。
したがって、
したい → 行動そのものを望む
やってみたい → 経験・試行として行動してみたい
という違いがある。
「したい」と「望む」|行動への欲求か、実現への希望か
「望む」は「したい」より広い。
「海外で働きたい」
なら、自分が働くという行動への希望である。
一方、
「世界が平和になることを望む」
では、自分自身が直接行動するとは限らない。
「望む」の中心には、ある状態や結果が実現してほしいと思うことがある。
そのため、
したい → 自分の行動への希望
望む → 状態・結果の実現への希望
という違いが見えてくる。
もちろん両者は重なることもあるが、何に希望を向けているかが異なる。
「したい」と「願う」|行動への希望か、実現を強く望むか
「願う」は「望む」よりも、実現への強い気持ちや祈りに近づくことがある。
「成功を願う」
「無事を願う」
「平和を願う」
などである。
「旅行したい」のような日常的な欲求に対して、
「旅行することを願う」
とは普通言わない。
「願う」は、自分の意思だけでは実現できないことにも使いやすい。
したがって、
したい → 自分が行動したい
願う → あることが実現してほしい
という違いがある。
「したい」から「望む」「願う」へ進むほど、自分の直接的な行動から「実現してほしい状態」へ視点が広がっていく。
「したい」と「できればしたい」|直接的な希望か、条件付きの希望か
「できればしたい」は、希望を弱めたり条件付きにしたりする表現である。
「参加したい」
なら、参加への希望を直接表している。
「できれば参加したい」
なら、事情や条件によっては参加できない可能性を残している。
「できれば早く帰りたい」
「可能なら参加したい」
「時間があれば行きたい」
なども同じ方向にある。
したい → 希望を直接示す
できればしたい → 条件が整えば実現したい
という違いである。
この「希望を少し控えめにする」という感覚は、英語のwould like toなどを考えるときにも重要になる。
「したい」と「するつもり」|希望か、意思・計画か
「したい」と「するつもり」は大きく異なる。
「来年アメリカへ行きたい」
なら、希望である。
まだ航空券を買っていなくても、具体的な計画がなくても言える。
一方、
「来年アメリカへ行くつもりだ」
なら、行く方向に意思が固まっている。
つまり、
したい → 実現を望んでいる
するつもり → 実際に行う意思がある
という違いである。
希望が強くなったから自動的に「つもり」になるわけではない。
「ものすごく行きたい。でも行くつもりはない」
という状況もあり得る。
欲求と意思は別の概念なのである。
「したい」と「する気分」|持続的な希望か、そのときの気分か
「する気分」は、その時点の一時的な感覚を表す。
「今日は外食したい」
と、
「今日は外食する気分だ」
は近い。
しかし「する気分」には、「今の自分の気持ちがその行動に向いている」という感覚が強い。
「今日は料理する気分じゃない」
「映画を見る気分だ」
「ちょっと散歩したい気分だ」
などと使う。
長期的な目標で、
「将来医者になる気分だ」
とは通常言わない。
したがって、
したい → 一時的にも長期的にも使える
する気分 → 今その行動をしたいという一時的な気持ち
という違いがある。
ここまでの日本語を概念で整理すると
日本語の「したい」の世界を整理すると、次のようになる。
| 概念 | 日本語表現 |
|---|---|
| 基本的な行動欲求 | したい、やりたい |
| 経験してみたい | やってみたい |
| 強い欲求 | ぜひしたい、したくてたまらない |
| 控えめ・条件付きの希望 | できればしたい、可能ならしたい |
| 将来への希望 | いつかしたい |
| 結果・状態への希望 | 望む、希望する |
| 強い願望・祈り | 願う |
| 行動への意思 | する気がある |
| 具体的な意図 | するつもりだ |
| 一時的な欲求 | する気分だ |
| 実現すればよいという願い | できたらいい |
日本語の「したい」の周辺には、欲求だけでなく、希望、願望、意思、計画、気分が存在している。
この違いを土台にして英語を見てみよう。
英語では「したい」をどう表すのか?
英語では、日本語の「したい」の世界を複数の表現で表す。
| 日本語のイメージ | 英語 | コアイメージ |
|---|---|---|
| 〜したい | want to | 行動を望む |
| 〜したいと思う | would like to | 希望を控えめ・丁寧に表す |
| 〜できればと思う | hope to | 実現することを期待する |
| 今〜したい気分だ | feel like -ing | 今その行動をしたい気分である |
| ぜひ〜したい | would love to | 喜んで・ぜひしたい |
| 〜したくてたまらない | be eager to | 強く実行したがっている |
| 〜だったらいいのに | wish | 現実とは距離のある願望を表す |
この表も「したい=want to」のような一対一対応ではない。
たとえば日本語では、
「いつか海外で暮らしたい」
と言える。
英語では、単純な欲求としてならwant to、実現への希望としてならhope toなど、話し手がその未来をどう捉えているかによって表現が変わる。
want to|行動したいという欲求
want toは「したい」の中心となる表現である。
コアイメージは、ある行動を自分が望んでいることである。
I want to go home.
家に帰りたい。
I want to learn English.
英語を学びたい。
I want to travel around the world.
世界中を旅行したい。
日常的な欲求から長期的な目標まで幅広く使える。
want toは比較的直接的に自分の希望を表す。
そのため、自分の希望について話すなら自然だが、相手に何かを依頼するときには、状況によって直接的に響くことがある。
重要なのは、want toの中心が「わがままな要求」なのではなく、自分の欲求がその行動へ向いていることだという点である。
would like to|控えめに「したい」と表す
would like toも、日本語では「〜したい」と訳されることが多い。
I’d like to ask a question.
質問したいのですが。
I’d like to visit Japan someday.
いつか日本を訪れたい。
want toよりも、希望を少し距離を置いて表現するため、控えめ・丁寧に聞こえやすい。
比較すると、
I want to talk to you.
あなたと話したい。
I’d like to talk to you.
あなたとお話ししたいのですが。
のような違いが出る。
したがって、
want to → 欲求を直接示す
would like to → 希望を控えめに示す
という軸で考えると理解しやすい。
hope to|実現することを期待する
hope toは、単純な「したい」よりも将来それが実現することへの期待に焦点がある。
I hope to study abroad next year.
来年、留学できればと思っている。
I hope to see you again.
またお会いできればと思う。
want toと比べると違いが見えやすい。
I want to study abroad.
留学したい。
では、自分の欲求が中心である。
I hope to study abroad.
留学できればと思っている。
では、「実際にそうなればよい」という未来への希望が前に出る。
want → 欲求
hope → 実現への期待
という違いがある。
feel like -ing|今そうしたい気分である
feel like -ingは、日本語の「〜したい気分」に近い。
I feel like going for a walk.
散歩したい気分だ。
I feel like eating pizza tonight.
今夜はピザを食べたい気分だ。
want toとの違いは、欲求の性質にある。
I want to learn Spanish.
スペイン語を学びたい。
は長期的な希望にも使える。
一方、
I feel like learning Spanish.
なら、今そういう気分になっているという意味が強くなる。
したがって、
want to → 広い欲求
feel like -ing → そのときの気分としての欲求
という違いがある。
wish|現実との距離がある願い
wishは、日本語の「したい」と完全に対応する言葉ではない。
しかし「したい」の世界を理解するうえで重要である。
wishは、現実とは距離のある願望を表すことがある。
I wish I could travel more.
もっと旅行できたらいいのに。
ここでは単純な、
I want to travel more.
もっと旅行したい。
とは感覚が異なる。
wantでは「旅行したい」という欲求を表している。
wishでは「実際には十分旅行できていない」という現実を背景に、「できたらいいのに」と願っている。
したがって、
want → 自分の欲求
hope → 実現への期待
wish → 現実との距離を意識した願い
という関係が見えてくる。
「したい」から広がる英語表現
「したい」の強さや性質を変えると、さらに多くの英語表現が見えてくる。
| 概念 | 英語表現 | イメージ |
|---|---|---|
| 普通にしたい | want to | 行動への欲求 |
| 控えめにしたい | would like to | 控えめな希望 |
| ぜひしたい | would love to | 喜んでそうしたい |
| 実現してほしい | hope to | 実現への期待 |
| 今したい気分 | feel like -ing | 一時的な気分 |
| 強くしたがっている | be eager to | 実行への強い意欲 |
| したくてたまらない | be dying to | 非常に強い欲求を表す口語表現 |
| できたらいいのに | wish | 現実との距離がある願望 |
| するつもり | intend to / plan to | 希望ではなく意思・計画 |
特に重要なのが、最後のintend toやplan toである。
I want to start my own business.
自分の会社を始めたい。
と、
I plan to start my own business next year.
来年、自分の会社を始める予定である。
では大きく違う。
「したい」という希望が、具体的な意思や計画に変わると、英語でもwantの世界からintendやplanの世界へ移っていくのである。
「したい」の概念地図
「したい」の世界を概念として整理すると、次のようになる。
したい
│
├─ 行動そのものを望む
│ ├─ したい・やりたい
│ └─ want to
│
├─ 控えめに希望する
│ ├─ できればしたい・したいと思う
│ └─ would like to
│
├─ 経験してみたい
│ ├─ やってみたい
│ └─ want to try / would like to try
│
├─ 実現を期待する
│ ├─ できれば〜したい・〜できればと思う
│ └─ hope to
│
├─ 強くしたい
│ ├─ ぜひしたい
│ └─ would love to / be eager to
│
├─ 今そういう気分である
│ ├─ 〜したい気分
│ └─ feel like -ing
│
├─ 現実とは距離があるが願う
│ ├─ 〜できたらいいのに
│ └─ wish
│
└─ 希望から意思・計画へ進む
├─ する気がある・するつもりだ
└─ intend to / plan to
「したい」という一つの言葉から、欲求の強さだけでなく、実現との距離、時間、気分、丁寧さ、意思の強さによって概念が枝分かれしている。
まとめ|「どのようにしたいのか」を考える
「したい」は、ある行動に自分の希望を向ける表現である。
しかし、その希望にはさまざまな種類がある。
| どのような「したい」か | 日本語 | 主な英語 |
|---|---|---|
| 普通にしたい | したい、やりたい | want to |
| 控えめに希望する | したいと思う、できればしたい | would like to |
| 経験してみたい | やってみたい | want to try |
| 実現を期待する | 〜できればと思う | hope to |
| 強くしたい | ぜひしたい | would love to / be eager to |
| 今そうしたい | 〜したい気分 | feel like -ing |
| 現実とは距離がある願い | 〜できたらいいのに | wish |
| 実際に行う意思がある | するつもりだ | intend to |
| 具体的な予定がある | する予定だ | plan to |
学校英語では、
「〜したい=want to」
と覚えることが多い。
これは基本として間違いではない。
しかし、日本語の「したい」の世界を広げてみると、それだけでは足りないことがわかる。
「旅行したい」ならwant toが自然である。
「ぜひ参加したい」ならwould love toが見えてくる。
「いつか実現できればと思う」ならhopeが重要になる。
「今日は外食したい気分」ならfeel likeが使える。
「できたらいいのに」という現実との距離を含む願いならwishの世界へ入っていく。
さらに、希望が具体的な意思や計画へ変わればintendやplanへ進む。
つまり、英語を選ぶ前に考えたいのは、
「どのように『したい』のか?」
ということである。
単純な欲求なのか。
控えめな希望なのか。
ぜひ実現したいのか。
今そういう気分なのか。
将来実現できればと思っているのか。
それとも、すでに実行するつもりなのか。
この違いを日本語の段階で整理すれば、want to、would like to、hope to、feel like、wishなどは、ばらばらの表現ではなく、一つの「希望・願望」の世界としてつながって見えてくるのである。