「調べる」を表す言葉
「調べる」は、日常生活から仕事、勉強、研究まで幅広く使われる日本語である。
「知らない単語を調べる」「電車の時間を調べる」「原因を調べる」「事件について調べる」「資料を詳しく調べる」では、同じ「調べる」でも行っていることはかなり違う。
さらに日本語には、「探す」「確認する」「調査する」「検索する」「検査する」「研究する」「分析する」「検討する」など、「調べる」の周辺に多くの言葉がある。
英語でも「調べる」を一つの動詞で表すことはできない。look up / check / examine / investigate / research / search など、何を目的として、どのような方法で調べるのかによって表現が変わる。
では、そもそも「調べる」とはどのような概念なのだろうか。
まず日本語の「調べる」という世界を整理し、そのあとで英語ではどのように言葉が分かれているのかを見ていこう。
「調べる」の中心にあるもの
「調べる」には、「見る」のような「観る・診る・看る」といった一般的な漢字の使い分けはない。
「調」という漢字には、状態を整えたり、物事を確かめたりする意味がある。「調査」「調書」「調べ」といった言葉にもつながっている。
現代の「調べる」は非常に広く、
わからないことについて、情報を得たり、確かめたり、詳しく明らかにしたりする
という行為を表している。
重要なのは、最初に「わからないこと」がある点である。
たとえば、
明日の天気を調べる。
なら、知りたい情報を探している。
この数字が正しいか調べる。
なら、正しいかどうか確かめている。
事故の原因を調べる。
なら、まだわからない原因を明らかにしようとしている。
つまり「調べる」は、
わからない・確かでない
↓
情報を集める・見る・確かめる・分析する
↓
知る・確認する・明らかにする
という大きな流れを表す言葉である。
「調べる」に関係する日本語
まず英語を考えず、日本語だけで「調べる」の周囲を見てみよう。
| 日本語 | どのような「調べる」か |
|---|---|
| 調べる | 情報を得たり確かめたりして、わからないことを明らかにする |
| 探す | 必要な人・物・情報などを見つけようとする |
| 検索する | 条件や語句を使って情報を探す |
| 調査する | 事実や実態を詳しく調べる |
| 確認する | 正しいか、存在するか、予定どおりかなどを確かめる |
| 検査する | 基準や方法に基づいて状態・異常などを調べる |
| 点検する | 機械や設備などに問題がないか一つずつ調べる |
| 観察する | 対象の様子や変化を注意深く見る |
| 検討する | 判断のために内容や条件を詳しく考える |
| 分析する | 情報や対象を分けて、構造・原因・特徴などを明らかにする |
| 研究する | 特定のテーマについて体系的・継続的に調べる |
| 捜査する | 事件について証拠や事実を調べる |
| 探究する | 問いや本質を深く追い求める |
| 照合する | 複数の情報を突き合わせて一致するか確かめる |
| 検証する | 仮説・説明・結果などが正しいか確かめる |
| 問い合わせる | 人や組織に尋ねて情報を得る |
こうして見ると、「調べる」の中には少なくとも探す・確かめる・詳しく見る・原因を明らかにする・体系的に研究するという異なる方向が含まれている。
「調べる」は目的によって枝分かれする
同じ「調べる」でも、何を知りたいのかによって行為が変わる。
情報が欲しい
調べる → 探す・検索する
正しいか知りたい
調べる → 確認する・照合する・検証する
状態を知りたい
調べる → 検査する・点検する・観察する
原因や事実を知りたい
調べる → 調査する・分析する
テーマについて深く知りたい
調べる → 研究する・探究する
「調べる」という日本語は、これらをまとめて表せる非常に広い言葉なのである。
「調べる」と「探す」|情報を明らかにするか、対象を見つけるか
「調べる」と「探す」は、インターネットを使う場面では特に近くなる。
京都のホテルを調べる。
京都のホテルを探す。
しかし、焦点は少し違う。
「探す」は、目的のものを見つけることに重点がある。
鍵を探す。
求人を探す。
安いホテルを探す。
一方、「調べる」は、対象について情報を得ることに重点がある。
ホテルの料金を調べる。
ホテルの場所を調べる。
ホテルの評判を調べる。
したがって、
探す → どこにある?何がある?
調べる → どうなっている?何なのか?
という違いで考えると分かりやすい。
「調べる」と「検索する」|情報を知るか、情報を探し出すか
「検索する」は、データベースやインターネットなどから条件に合う情報を探し出すことである。
「英語 勉強法」で検索する。
検索しただけでは、まだ内容を十分に調べていないこともある。
検索する
↓
検索結果を見つける
↓
ページを読む
↓
情報を比較する
↓
調べる
という流れになることも多い。
したがって、「検索する」は「調べる」という大きな行為の中で使われる情報を探す手段の一つと考えられる。
「調べる」と「確認する」|知らないことを知るか、確かなものにするか
「確認する」は、「調べる」の中でも重要な方向である。
電車の時間を調べる。
電車の時間を確認する。
どちらも自然だが、ニュアンスが違う。
「調べる」は、時間を知らない状態から情報を得ようとしている。
「確認する」は、すでにある情報について、それで正しいかを確かめる感覚が強い。
たとえば、
会議は3時だったと思うけど、確認してみる。
なら、ある程度情報を持っている。それが正しいか確かめているのである。
調べる → 情報を得る
確認する → 情報を確かなものにする
という違いが中心にある。
「調べる」と「調査する」|広く調べるか、事実を詳しく明らかにするか
「調査する」は「調べる」よりも目的や対象がはっきりしており、ある事実や実態について詳しく情報を集める場合に使われる。
事故の原因を調査する。
消費者の意識を調査する。
「調べる」は、
明日の天気を調べる。
のような日常的な情報取得にも使える。
しかし、
明日の天気を調査する。
とは普通言わない。
「調査する」は、複数の情報を集め、対象の実態や事実を明らかにするという意味が強いのである。
「調べる」と「検査する」|情報を得るか、状態を判定するか
「検査する」は、決められた方法や基準などを使って、状態や異常の有無を調べることである。
製品を検査する。
血液を検査する。
「調べる」よりも、何かの状態を一定の方法で確認・判定するという意味が強い。
そのため、
単語の意味を検査する。
とは言わない。
同じ「調べる」でも、検査には対象と方法、そして何らかの判定が関係している。
「検査する」と「点検する」|状態を判定するか、問題がないか確かめるか
「点検する」は、特に機械・設備・道具などを一つずつ確認し、問題がないか調べる場合に使われる。
車を点検する。
消火設備を点検する。
「検査する」では基準への適合や異常の有無を判定する意味が強い。
「点検する」は、各部分を確認して正常に機能するか、問題がないかを見る意味が強い。
両者は重なるが、調べる目的が少し違うのである。
「調べる」と「観察する」|答えを求めるか、変化や特徴を見るか
「観察する」は、対象の様子や変化を注意深く見ることである。
植物の成長を観察する。
ここでは、すぐに答えを得る必要はない。
対象を継続して見ながら、特徴や変化を捉えている。
一方、「調べる」は、その観察結果を使って何かを明らかにするところまで含められる。
植物がどの条件でよく育つのか調べる。
この場合、
観察する → 情報を得る方法
調べる → その情報から問いの答えを求める
という関係になる。
「調べる」と「分析する」|情報を集めるか、情報を分けて関係を見るか
「分析する」は、集めた情報や対象を細かく分け、構造・特徴・原因などを明らかにすることである。
売上データを分析する。
原因を分析する。
「調べる」では、まず情報を集めることも含まれる。
一方、「分析する」は、すでにある情報を分解・比較・整理して、その中にある関係を見つけることに重点がある。
たとえば、
資料を集める
↓
調べる
↓
データを分析する
↓
原因を考える
という流れになることもある。
「調べる」と「検討する」|事実を明らかにするか、判断するために考えるか
「調べる」と「検討する」も仕事などでは近く見える。
新しい制度について調べる。
新しい制度の導入を検討する。
前者では、制度についての情報を得ようとしている。
後者では、その制度を導入するべきかどうか考えている。
したがって、
調べる → 情報・事実を得る
検討する → 情報を材料に判断を考える
という違いがある。
調べた結果をもとに検討する、という順番になることも多い。
「調べる」と「研究する」|答えを得るか、体系的に追究するか
「研究する」は、あるテーマについて継続的・体系的に調べ、知識を深めたり新しい知見を得たりすることである。
言語の変化を研究する。
新しい治療法を研究する。
日常的な、
明日の営業時間を調べる。
を「研究する」とは言わない。
「研究する」は、単発の情報取得ではなく、一つのテーマについて深く、体系的に問いを追う活動なのである。
「調査する」と「研究する」|事実を集めるか、問いを深く追うか
「調査」と「研究」も似ているが、完全には同じではない。
たとえば、
若者のスマートフォン利用について調査する。
なら、アンケートなどによって実態を明らかにすることが考えられる。
スマートフォンが言語行動に与える影響を研究する。
なら、より大きな問いを設定し、調査・分析・考察などを組み合わせて答えを追究することが考えられる。
つまり、
調査する → 事実・実態を明らかにする
研究する → 問いについて体系的に知識を深める
という違いが中心になる。
「調べる」と「検証する」|情報を得るか、正しさを確かめるか
「検証する」は、仮説・説明・主張・結果などが本当に正しいのかを確かめることである。
仮説を実験で検証する。
情報の正確性を検証する。
ここでは単に新しい情報を得ようとしているのではない。
すでに、
本当にそうなのか?
という対象がある。
したがって、
調べる → わからないことについて情報を得る
検証する → ある考えや情報が正しいか確かめる
という違いがある。
ここまでの「調べる」を概念で整理すると
「調べる」の周辺にある日本語を、目的によって整理すると次のようになる。
| 概念 | 日本語表現 |
|---|---|
| わからないことを明らかにする | 調べる |
| 必要な対象を見つける | 探す |
| 条件に合う情報を探す | 検索する |
| 正しいか確かめる | 確認する |
| 事実・実態を詳しく明らかにする | 調査する |
| 状態・異常などを調べる | 検査する |
| 問題がないか一つずつ見る | 点検する |
| 様子や変化を見る | 観察する |
| 情報を分けて関係を明らかにする | 分析する |
| 判断するために考える | 検討する |
| 正しさを確かめる | 検証する |
| 情報同士を突き合わせる | 照合する |
| テーマを体系的に追う | 研究する |
| 問いや本質を深く追う | 探究する |
| 事件について事実を明らかにする | 捜査する |
「調べる」はこの中心にあり、何のために調べるのか、どのように調べるのかによって周辺の言葉へ枝分かれしている。
では、英語では「調べる」をどう表す?
日本語の「調べる」に、どんな場合でも使える一つの英単語があるわけではない。
「単語を調べる」「時刻を調べる」「原因を調べる」「事件を調べる」「テーマについて調べる」では、英語で選ばれる表現も変わる。
| 日本語のイメージ | 英語 | コアイメージ |
|---|---|---|
| 辞書などで情報を調べる | look up | 情報源から必要な情報を引く |
| 情報・状態を確認する | check | 正しいか、どうなっているか確かめる |
| 対象を詳しく調べる | examine | 注意深く詳しく見る |
| 原因・事件などを調査する | investigate | 事実や原因を追って明らかにする |
| テーマについて調べる | research | 情報を集め体系的に調べる |
| 必要なもの・情報を探す | search | 対象を見つけようと探す |
| 情報・データを分析する | analyze | 分けて構造や関係を見る |
| 状態などを点検する | inspect | 注意深く検査・点検する |
| 正しさを確かめる | verify | 正しいことを確認する |
ここでも、「調べる=look up」という一対一の対応ではない。
何を知りたいのか、どんな方法で情報を得るのかを見ることが重要である。
look up|必要な情報を情報源から調べる
look up は、辞書・本・ウェブサイト・データベースなどから、必要な情報を探して確認する場合によく使われる。
I looked up the word in a dictionary.
その単語を辞書で調べた。
I’ll look up the train times.
電車の時刻を調べてみる。
ここでは、すでに「何を知りたいのか」がかなり明確である。
単語の意味、電話番号、時刻など、情報源の中から特定の情報を取り出す感覚である。
そのため、日本語の「ちょっと調べてみる」に非常に近くなる場面がある。
check|正しいか、どうなっているか確認する
check は、情報や状態を確認するときに広く使われる。
I’ll check the schedule.
予定を確認する/調べる。
Check the weather before you leave.
出かける前に天気を確認して。
look up と重なる場面もあるが、check は「情報を探し出す」ことよりも、確かめることに焦点がある。
たとえば、
Let me check the time.
なら、「何時なのか確認させて」という感覚になる。
日本語の「調べる」が「確認する」に近い場面では、check が自然になることが多い。
examine|対象を詳しく調べる
examine は、対象を注意深く見て、その状態・特徴・問題などを調べる表現である。
The doctor examined the patient.
医師は患者を診察した。
We examined the data carefully.
私たちはそのデータを詳しく調べた。
look up のように情報源から答えを探すのではない。
目の前にある対象そのものを詳しく見るという方向である。
そのため、日本語では文脈によって「調べる」「検査する」「診察する」「検討する」などさまざまに訳される。
investigate|原因や事実を追って調べる
investigate は、問題・事件・原因などについて情報や証拠を集め、事実を明らかにしようとする場合に使われる。
The police are investigating the case.
警察はその事件を捜査している。
We need to investigate the cause of the problem.
その問題の原因を調べる必要がある。
単に情報を検索しているわけではない。
まだわからない事実の奥へ進み、原因や真相を明らかにするという感覚がある。
そのため、「調査する」「捜査する」などに近くなる。
research|テーマについて体系的に調べる
research は、あるテーマについて情報を集め、詳しく調べる場合に使われる。
I’m researching the history of this town.
私はこの町の歴史について調べている。
学術的な「研究する」だけに限定されるわけではない。何かについて情報を集めて詳しく調べる意味でも使われる。
ただし、
単語の意味をちょっと調べる。
のような単発の情報確認に research を使うのは大げさになりやすい。
research の中心には、あるテーマについてある程度まとまった情報を集めて調べるという感覚がある。
search|見つけるために探す
search は、「調べる」というより「探す」に近い。
I searched the web for information.
情報を求めてウェブを検索した。
ここで重要なのは、search の対象である。
search for information
→ 情報を探す
search the web
→ ウェブ上を探す
つまり search は、「調べて理解する」ことそのものではなく、必要な対象を見つけるために探す行為を表している。
そのため、
search → 情報を探す
research → 情報を集めてテーマを調べる
という違いが見えてくる。
「調べる」はさらに目的によって広がる
中心的な表現以外にも、「調べる」の概念からさまざまな英語へ枝分かれする。
細かく点検する → inspect
The mechanic inspected the car.
整備士は車を点検した。
inspect は、問題や異常がないか対象を注意深く見る場合に使われる。
データを分析する → analyze
We analyzed the results.
私たちは結果を分析した。
情報を集めるのではなく、得られた情報を分けて関係や特徴を見る。
正しいことを確かめる → verify
We need to verify the information.
その情報が正しいか確認する必要がある。
「本当に正しいのか」という点に焦点がある。
さらに深く追究する → explore
The study explores the relationship between sleep and memory.
その研究では睡眠と記憶の関係を探究している。
explore は、未知の領域やテーマを広く探っていく感覚を持つ。
同じ「調べる」でも英語は変わる
日本語では、次の文のすべてに「調べる」を使える。
単語の意味を調べる。
電車の時間を調べる。
車に異常がないか調べる。
事故の原因を調べる。
日本の人口減少について調べる。
しかし英語では、何をしているのかによって表現が変わる。
I looked up the meaning of the word.
その単語の意味を調べた。
I checked the train times.
電車の時刻を調べた。
The mechanic inspected the car.
整備士が車を点検した。
They investigated the cause of the accident.
彼らは事故の原因を調べた。
She researched Japan’s population decline.
彼女は日本の人口減少について調べた。
日本語訳だけを見れば、すべて「調べる」である。
しかし英語側から見ると、行われている行為は同じではないのである。
「調べる」の概念地図
「調べる」の中心を、
わからないことについて情報を得て、明らかにする
と考えてみよう。
日本語では、そこから次のように枝分かれする。
調べる
├─ 必要なものを見つける → 探す
├─ 情報を探し出す → 検索する
├─ 正しいか確かめる → 確認する
├─ 実態や事実を明らかにする → 調査する
├─ 状態・異常を調べる → 検査する・点検する
├─ 様子や変化を見る → 観察する
├─ 情報の中身を分けて考える → 分析する
├─ 正しさを確かめる → 検証する
├─ 情報を突き合わせる → 照合する
└─ テーマを深く追う → 研究する・探究する
英語では、
必要な情報を引く → look up
情報・状態を確認する → check
対象を詳しく見る → examine
原因・事実を追う → investigate
テーマについて体系的に調べる → research
対象を探す → search
細かく点検する → inspect
情報を分けて関係を見る → analyze
正しさを確かめる → verify
未知のテーマを探っていく → explore
という広がりが見えてくる。
まとめ|「何のために調べるのか」を考える
「調べる」を英語にするとき、「調べる=research」と覚えるだけでは十分ではない。
| 「調べる」の種類 | 日本語 | 英語で考えられる代表的な表現 |
|---|---|---|
| 必要な情報を調べる | 調べる | look up |
| 正しいか・どうなっているか調べる | 確認する | check |
| 対象を詳しく調べる | 調べる・検査する | examine |
| 原因・事実を追って調べる | 調査する・捜査する | investigate |
| テーマについて詳しく調べる | 調べる・研究する | research |
| 必要なものを探す | 探す・検索する | search |
| 状態を細かく点検する | 点検する | inspect |
| 情報を分けて調べる | 分析する | analyze |
| 正しいか確かめる | 確認する・検証する | verify |
| 未知のテーマを探る | 探究する | explore |
重要なのは、「調べる」という日本語を見てすぐ英単語を決めることではない。
何を知りたいのか。
情報を探しているのか。
すでにある情報を確認しているのか。
対象そのものを詳しく見ているのか。
原因や真相を明らかにしようとしているのか。
一つのテーマについて体系的に情報を集めているのか。
この違いを考えると、look up / check / examine / investigate / research / search などの違いが見えてくる。
「調べる=○○」と一つの英単語に置き換えるのではなく、まず日本語の「調べる」の中で何をしているのかを考える。
そうすることで、ばらばらに見えていた英語表現が、一つの「調べる」という概念世界の中でつながってくるのである。