「言う」を表す言葉|話す・伝える・述べるからsay・tell・speakまで

「言う」を表す言葉

「言う」は、日本語の中でも非常に広い意味を持つ言葉である。

「ありがとうと言う」「名前を言う」「意見を言う」「本当のことを言う」「彼に言う」「先生がそう言っていた」など、日常会話ではさまざまな場面を「言う」一語で表せる。

しかし、「話す」「伝える」「述べる」「伝達する」「説明する」「主張する」「つぶやく」「叫ぶ」など、「言う」の周辺には多くの日本語がある。

さらに英語では、say / tell / speak / talk をはじめ、mention / explain / state / claim / announce などへ細かく枝分かれする。

「言う=say」と覚えるだけでは、この違いは見えてこない。

では、そもそも「言う」とはどのような概念なのだろうか。

まず日本語の「言う」の世界を整理し、そのあとで英語がこの世界をどのように切り分けているのかを見ていこう。

「言う」と「いう」は違う?

「いう」には「言う」とひらがなの「いう」が使われる。

基本的に、実際に言葉を発する意味が強い場合は「言う」と書ける。

彼が「ありがとう」と言った。
自分の意見を言う。

一方、

犬という動物
そういう考え方
田中という人

のように、名称や内容を示したり、形式的な働きをしたりする場合には「いう」とひらがなで書かれることも多い。

ただし、「見る」に対する「観る・診る」のように、漢字そのものによって「言う」の種類が明確に分かれているわけではない。

この記事では、言葉を発したり内容を表現したりする中心的な意味を「言う」と表記する。

「言う」に関係する日本語

まず英語から離れ、日本語の「言う」の周囲にどのような表現があるのかを見てみよう。

日本語どのような「言う」なのか
言う言葉として表す
話すある程度まとまった内容を言葉にする
しゃべる会話したり言葉を発したりする
伝える相手に情報・気持ちなどを届かせる
述べる考え・意見などをまとまった形で表す
語る出来事・経験・考えなどをまとまりとして話す
説明する相手が理解できるように内容を伝える
教える相手が知らない情報・知識などを伝える
報告する状況や結果などを知らせる
知らせる相手が知らない情報を伝える
告げる重要なことなどを相手に伝える
主張する自分の考えや立場を強く示す
発言する人前や会議などで言葉を発する
宣言する意志や方針などをはっきり公に示す
発表する情報や結果などを多くの人に示す
言及するある話題に触れる
つぶやく小さな声で短く言う
ささやく相手に聞こえる程度の小声で言う
叫ぶ大きな声で強く言う
尋ねる答えを求めて相手に問いかける
答える問いに対して言葉を返す

「言う」を中心に考えると、何を言うのか、誰に言うのか、何のために言うのか、どのように言うのかによって、多くの言葉へ枝分かれしていることがわかる。

「言う」の中心は「内容を言葉として外に出す」

「言う」のもっとも基本的な概念は、

頭の中にある内容を言葉として外に出す

ことである。

たとえば、

「ありがとう」と言う。

では、「ありがとう」という言葉そのものを発している。

自分の意見を言う。

では、頭の中にある考えを言葉にしている。

ここから「言う」はさまざまな方向へ広がっていく。

言う
→ 相手とのやり取りを続ける → 話す
→ 相手に内容を届ける → 伝える
→ 考えをまとまった形で示す → 述べる
→ 内容をわかるようにする → 説明する
→ 自分の立場を強く示す → 主張する
→ 小さな声で言う → つぶやく・ささやく
→ 大きな声で言う → 叫ぶ

つまり、「言う」は「言葉を使って内容を外へ出す」という広い中心概念なのである。

「言う」と「話す」|言葉を発するか、内容をまとまりとして話すか

「言う」と「話す」は非常に近い。

彼が面白いことを言った。
彼が面白い話をした。

しかし、焦点は異なる。

「言う」は、発せられた言葉や内容に焦点を置きやすい。

彼は「帰る」と言った。

一方、「話す」は、ある程度まとまった内容を言葉で表したり、相手と会話したりすることに焦点を置く。

彼と仕事について話した。

したがって、

言う → 何を言葉にしたか

話す → 言葉を使って話をする

という違いがある。

「話す」と「しゃべる」|中立的な行為か、会話的な行為か

「しゃべる」も「話す」に近い言葉である。

友達と話す。
友達としゃべる。

どちらも自然だが、「しゃべる」はより口語的である。

また、

あの人はよくしゃべる。

というと、「言葉をたくさん発する」という行為そのものにも焦点を当てられる。

「話す」は内容を伝える行為として広く使えるが、「しゃべる」はより会話・発話そのものを感じさせる表現である。

「言う」と「伝える」|言葉を出すか、相手に届かせるか

「言う」と「伝える」の重要な違いは、相手に内容が届くことを意識するかどうかである。

自分の気持ちを言う。
自分の気持ちを伝える。

「言う」は、気持ちを言葉として表すことに焦点がある。

「伝える」は、その気持ちを相手に届けることに焦点がある。

そのため「伝える」は、必ずしも口頭である必要はない。

メールで予定を伝える。
表情で気持ちを伝える。

つまり、

言う → 内容を言葉として外に出す

伝える → 内容を相手へ届かせる

という違いである。

「言う」と「述べる」|日常的に言うか、まとまった内容を示すか

「述べる」は「言う」よりも硬い表現である。

自分の意見を言う。
自分の意見を述べる。

どちらも成立するが、「述べる」には考えや意見などをある程度まとまった形で示す感覚がある。

そのため、

理由を述べる。
感想を述べる。
見解を述べる。

などで使われやすい。

一方、

「おはよう」と述べた。

とは普通言わない。

短い日常的な発話では「言う」が自然である。

「話す」と「語る」|内容を話すか、物語として展開するか

「語る」は「話す」よりも、内容にまとまりや深さを感じさせる。

昔の経験について話す。
昔の経験を語る。

「語る」では、経験・思い・歴史などを、一つのまとまりとして聞き手に示していく感覚が強い。

夢を語る。
戦争体験を語る。
当時の様子を語る。

したがって、「語る」は単に言葉を発するのではなく、ある内容を物語るように展開する表現である。

「伝える」と「知らせる」|内容を届けるか、新しい情報を与えるか

「伝える」と「知らせる」はどちらも相手への情報移動を表す。

変更を伝える。
変更を知らせる。

「伝える」は、情報だけでなく気持ち・意見・意思など幅広いものを相手へ届けられる。

一方、「知らせる」は、相手がまだ知らない情報を知る状態にすることに重点がある。

結果を知らせる。
到着したら知らせて。

つまり、

伝える → 内容を相手へ届ける

知らせる → 相手に新しい情報を与える

という違いがある。

「知らせる」と「報告する」|情報を知らせるか、結果や状況をまとめて伝えるか

「報告する」では、単に情報を知らせるだけではなく、状況・経過・結果などを整理して伝える。

結果を知らせる。
結果を上司に報告する。

「知らせる」は広く使える。

「報告する」は、仕事や組織などで、伝えるべき情報をある程度まとまった形で相手に伝える意味が強い。

「言う」と「説明する」|内容を表すか、相手にわからせるか

「説明する」は、単に言葉を発するだけではない。

ルールを言う。
ルールを説明する。

後者では、相手がルールを理解できるように内容を整理して伝えている。

したがって、

言う → 内容を言葉にする

説明する → 相手が理解できるように内容を言葉にする

という違いがある。

「説明する」では、聞き手の理解まで意識されているのである。

「言う」と「主張する」|考えを示すか、立場として強く示すか

「主張する」は、自分の考え・意見・立場などをはっきり示すことである。

彼は自分の考えを言った。
彼は自分の考えを主張した。

「言った」は中立的である。

「主張した」には、その考えが正しい、重要であるとして前に出す感覚が加わる。

そのため、議論・政治・裁判・論文などでも使われる。

「言う」と「言及する」|内容を述べるか、話題に触れるか

「言及する」は、あるテーマについて詳しく説明するとは限らない。

彼はその問題について言った。

という日本語は文脈によってやや不自然だが、

彼はその問題に言及した。

なら、「その問題を話題として取り上げた」という意味になる。

つまり、

言う → 何らかの内容を言葉にする

言及する → ある話題に触れる

という違いである。

「言う」と「つぶやく・ささやく・叫ぶ」|声の出し方による違い

「言う」は、声の大きさや話し方を特に指定しない。

しかし、日本語には発話の仕方を含んだ言葉がある。

小さく独り言のように言う
→ つぶやく

相手にだけ聞こえるような小声で言う
→ ささやく

大きな声で強く言う
→ 叫ぶ

ここでは、「何を言うか」ではなくどのように声を出すかによって言葉が分かれている。

ここまでの「言う」を概念で整理すると

概念日本語表現
内容を言葉として外に出す言う
まとまった内容を言葉で表す話す
会話的に言葉を発するしゃべる
内容を相手へ届かせる伝える
考え・意見をまとまって示す述べる
経験や思いなどを展開して話す語る
相手が理解できるように伝える説明する
知らない情報を与える知らせる
状況・結果をまとめて伝える報告する
自分の立場を強く示す主張する
話題として取り上げる言及する
公に内容を示す発表する・宣言する
小さく独り言のように言うつぶやく
小声で相手に言うささやく
大きな声で言う叫ぶ
答えを求めて言う尋ねる
問いに対して言う答える

このように、「言う」の世界は、内容・相手・目的・話し方という複数の方向へ広がっている。

では、英語では「言う」をどう表す?

英語では、日本語の「言う」に関係する中心的な言葉として say / tell / speak / talk がある。

しかし、この4語は単なる言い換えではない。

日本語のイメージ英語コアイメージ
言葉・内容を言うsay発せられた内容に焦点
人に内容を伝えるtell相手に情報を届ける
言葉を話すspeak発話する行為・能力に焦点
人と話すtalk会話・やり取りに焦点
ある話題に触れるmention話題として出す
わかるように説明するexplain内容を理解できるようにする
はっきり述べるstate内容を明確に述べる
主張するclaimあることが事実だと主張する
発表するannounce多くの人へ公式に知らせる
報告するreport状況・結果などを報告する

この表も「言う=say」「伝える=tell」という固定的な対応ではない。

日本語と英語では概念の区切り方が違うため、文脈によって訳し方は変化する。

say|「何を言ったか」に焦点を置く

say は「言う」の中心的な英語の一つである。

コアイメージは、言葉・内容を口に出すことである。

She said, “Thank you.”
彼女は「ありがとう」と言った。

He said he was tired.
彼は疲れていると言った。

say では「何を言ったのか」という内容が中心になる。

そのため、

What did he say?
彼は何と言ったの?

という疑問文が自然である。

日本語の「言う」と比較的近いが、すべての「言う」に say が使えるわけではない。

tell|相手に情報を伝える

tell では、単に言葉を発するだけでなく、誰かに情報を伝えることが重要になる。

Tell me the truth.
本当のことを教えて/言って。

I told him the news.
私は彼にその知らせを伝えた。

say が「言った内容」に焦点を置きやすいのに対し、tell は情報が相手へ渡ることに焦点を置きやすい。

比較すると分かりやすい。

She said, “I’m busy.”
彼女は「忙しい」と言った。

She told me that she was busy.
彼女は私に忙しいと伝えた。

日本語ではどちらも「言った」と訳せるが、英語では見ている部分が違うのである。

speak|言葉を話す・発話する

speak は、声を出して言語を使う行為に焦点を置く。

She speaks English.
彼女は英語を話す。

May I speak to Mr. Brown?
ブラウンさんとお話しできますか。

「何を言ったか」という個々の内容より、「話す」という行為そのものに焦点がある。

そのため、言語能力にも使える。

I can speak a little English.
私は少し英語を話せる。

また、speak は talk より改まった場面でも使われやすい。

talk|人と会話する

talk は、人との言葉のやり取りに焦点を置く。

We talked for an hour.
私たちは1時間話した。

I talked to my teacher about the problem.
私はその問題について先生と話した。

say が「発言内容」、tell が「情報の伝達」、speak が「発話する行為」を見ているのに対し、talk は会話そのものを捉えている。

したがって、

say → 内容

tell → 相手への情報伝達

speak → 発話・言語使用

talk → 会話・やり取り

という大きな違いが見えてくる。

explain|わかるように説明する

explain は、「言う」だけではなく、相手が理解できるように内容を明らかにする表現である。

Can you explain this rule?
このルールを説明してくれる?

単にルールを読み上げるだけではない。

内容を言葉にする
↓
関係や理由を示す
↓
相手が理解できるようにする

という方向を持つ。

日本語の「説明する」と英語の explain は比較的近いが、具体的な文型や使い方まで完全に同じというわけではない。

mention|話題として触れる

mention は、ある人・物・話題などを会話や文章の中で取り上げることを表す。

He mentioned your name.
彼はあなたの名前を出した/あなたのことに言及した。

詳しく説明したとは限らない。

「その話題を言葉として出した」という程度でも使える。

そのため、

say → 内容を言う

mention → ある話題に触れる

という違いがある。

state|はっきりと述べる

state は、事実・意見・立場などを明確な形で述べる表現である。

The report states that sales increased.
その報告書には売上が増加したと記されている。

日常的な短い発話よりも、公式な説明・文書・声明などで使われやすい。

日本語では「述べる」「明記する」「示す」などになることもある。

claim|「そうである」と主張する

claim は、ある内容について「それは事実である」と主張する場合に使われる。

He claims that he saw the accident.
彼はその事故を見たと主張している。

話し手がその主張を事実だと認めているとは限らない。

ここが単なる say との違いである。

say → その内容を言った

claim → その内容が事実だと主張した

という違いがある。

「言う」は話し方によっても英語が変わる

日本語では「小さな声で言う」「大声で言う」と説明することもできるが、一語で表す言葉もある。

つぶやく → mutter / murmur

He muttered something to himself.
彼は何かを独り言のようにつぶやいた。

mutter には、低い声ではっきりしないように言う感覚がある。

murmur は、低く柔らかな声で言う場合などに使われる。

ささやく → whisper

She whispered in my ear.
彼女は私の耳元でささやいた。

声を非常に小さくして話すことが中心である。

叫ぶ → shout / yell

He shouted my name.
彼は私の名前を大声で叫んだ。

shout は大声を出すことを広く表す。

yell も大声で叫ぶことを表し、感情の強さを伴う場面も多い。

「言う」は目的によってさらに広がる

「言う」の目的に注目すると、さらに別の英語が見えてくる。

知らせる・発表する → announce

They announced the results.
彼らは結果を発表した。

報告する → report

She reported the problem to her manager.
彼女はその問題を上司に報告した。

答える → answer / reply

He answered my question.
彼は私の質問に答えた。

尋ねる → ask

I asked him a question.
私は彼に質問した。

日本語では「何かを言う」という大きな枠の中に入る行為でも、英語ではその発話によって何をしようとしているのかが動詞に組み込まれることがある。

同じ場面でも「どこを見るか」で英語が変わる

たとえば、ある人があなたに、

「明日は休みだよ」

と伝えたとする。

この一つの場面でも、焦点によって表現が変わる。

He said, “Tomorrow is a holiday.”
彼は「明日は休みだ」と言った。

→ 発言した内容を見る。

He told me that tomorrow was a holiday.
彼は私に明日は休みだと教えてくれた。

→ 私への情報伝達を見る。

We talked about tomorrow’s holiday.
私たちは明日の休みについて話した。

→ 二人の会話を見る。

この違いは、日本語訳だけを暗記していても見えにくい。

「同じ出来事のどこに焦点を当てているのか」を考えることで、say / tell / talk の違いが理解しやすくなる。

「言う」の概念地図

「言う」の中心を、

内容を言葉として外に出す

と考えてみよう。

日本語では、そこから次のように広がる。

言う
├─ 言葉をやり取りする → 話す・しゃべる
├─ 相手に内容を届ける → 伝える
├─ 考えをまとまって示す → 述べる
├─ 経験や思いを展開する → 語る
├─ 相手にわからせる → 説明する
├─ 新しい情報を与える → 知らせる
├─ 経過・結果を伝える → 報告する
├─ 自分の立場を強く示す → 主張する
├─ 話題として取り上げる → 言及する
├─ 小さく言う → つぶやく・ささやく
└─ 大きな声で言う → 叫ぶ

英語では、

発言内容に焦点 → say

相手への情報伝達に焦点 → tell

発話・言語使用に焦点 → speak

会話に焦点 → talk

理解できるように伝える → explain

話題に触れる → mention

明確に述べる → state

事実だと主張する → claim

公式に知らせる → announce

状況・結果を報告する → report

小さな声で言う → whisper / mutter / murmur

大声で言う → shout / yell

という広がりになる。

まとめ|「言う」ではなく「どのように言葉を使っているか」を考える

日本語の「言う」は非常に広い。

「言う」の種類日本語英語で考えられる代表的な表現
内容を言葉にする言うsay
相手に情報を伝える言う・伝える・教えるtell
言葉を話す話すspeak
人と会話する話す・しゃべるtalk
わかるように伝える説明するexplain
話題に触れる言及するmention
明確に述べる述べるstate
自分の立場を示す主張するclaim
公に知らせる発表するannounce
状況や結果を伝える報告するreport
小さな声で言うささやく・つぶやくwhisper / mutter / murmur
大声で言う叫ぶshout / yell

重要なのは、「言う」を見たら say に置き換えることではない。

何を言ったのか。誰に伝えたのか。相手と会話したのか。相手に理解させようとしたのか。自分の立場を主張したのか。それとも声の出し方そのものが重要なのか。

日本語では、これらの多くを「言う」という大きな言葉でまとめられる。

その「言う」の内部にある概念の違いを先に理解すると、say / tell / speak / talk / explain / mention / state / claim なども、ばらばらに暗記する単語ではなくなる。

日本語の「言う」の世界を細かく見ることで、英語がなぜ複数の言葉を使い分けるのかが見えてくるのである。

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