「賛成する」を表す言葉
「賛成する」は、相手の意見や提案に対して「よいと思う」「自分もそう思う」という態度を示す言葉である。
しかし、日本語には「同意する」「支持する」「賛同する」「認める」「承認する」「受け入れる」など、似ているようで少しずつ異なる言葉がある。
たとえば、
- 「あなたの意見に賛成する」
- 「あなたの意見に同意する」
- 「あなたの活動を支持する」
- 「その計画を承認する」
- 「その考え方は認める」
では、同じ「YES」の方向を向いていても、何に対して、どの程度「YES」と言っているのかが違う。
英語でも同様である。日本語の「賛成する」が、いつでも agree になるわけではない。support、approve、accept、endorse などへ枝分かれする。
では、そもそも「賛成する」とはどのような概念なのだろうか。
「賛成する」に関係する日本語
まず英語から離れ、日本語の「賛成する」の周辺を見てみよう。
| 日本語 | どのような「賛成」なのか |
|---|---|
| 賛成する | 意見・提案などをよいと考える |
| 同意する | 相手と同じ考え・意思を持つ |
| 賛同する | 考えや趣旨に共感して賛成する |
| 支持する | 人・考え・活動などを支える |
| 認める | 正しさ・価値・事実などを受け入れる |
| 承認する | 正式に認める |
| 了承する | 事情や内容を理解して受け入れる |
| 納得する | 理由を理解し、もっともだと思う |
| 受け入れる | 提案・条件・考えなどを拒まず取り入れる |
| 共感する | 感情や考えに「自分もそうだ」と感じる |
| 賛成できる | その意見をよいと思える |
| 異議がない | 反対する理由がない |
| 反対しない | 積極的賛成とは限らないが拒まない |
ここで重要なのは、「同じ考えである」「よいと思う」「支える」「正式に認める」「受け入れる」は別の概念だということである。
「賛成する」の概念はどこへ枝分かれするのか
「賛成する」の周辺は、「何にYESと言っているのか」で整理すると分かりやすい。
| 概念 | 主な日本語 |
|---|---|
| 意見が同じ | 賛成する・同意する |
| 趣旨に共鳴する | 賛同する |
| 人や活動を後押しする | 支持する |
| 正しさや価値を受け入れる | 認める |
| 正式にOKを出す | 承認する |
| 提案・条件を受け入れる | 受け入れる・了承する |
| 理由を理解して受け入れる | 納得する |
| 積極的には反対しない | 異議がない・反対しない |
つまり、「賛成」の中心にあるのは単なるYESではない。
何に対するYESなのか
を見る必要がある。
「賛成する」と「同意する」|よいと思うか、考えが一致するか
「賛成する」と「同意する」は非常に近い。
「賛成する」は、意見・提案・計画などに対して「それがよい」と判断する感覚が強い。
私はその提案に賛成する。
一方、「同意する」は相手と考えや意思が一致していることに重点がある。
私も彼の意見に同意する。
そのため、
賛成する → その案にYESを出す
同意する → 相手と同じ考えを持つ
と整理すると分かりやすい。
英語の agree は特に「考えが一致する」という側面と相性がよい。
「賛成する」と「賛同する」|判断か、趣旨への共鳴か
「賛同する」は「賛成する」よりも、考え方や趣旨への共鳴を感じさせることがある。
私はその活動の趣旨に賛同する。
単に「その案でよい」というより、
その考え方に共感し、自分も同じ方向を向く
というニュアンスである。
そのため、「提案に賛成する」は自然だが、「活動の理念に賛同する」のような使い方もよく見られる。
「賛成する」と「支持する」|意見へのYESか、後押しするか
「支持する」は「賛成する」より一歩進んだ概念になりやすい。
私はその政策に賛成している。
なら、その政策をよいと考えている。
一方、
私はその候補者を支持している。
では、単に考えが同じというだけではない。その人物を選ぶ、応援する、立場を支えるといった方向へ広がる。
つまり、
賛成する → よいと判断する
支持する → その人・考え・活動を支える
という違いがある。
英語では、この「支える」という方向で support が重要になる。
「賛成する」と「認める」|同じ考えになるとは限らない
「認める」は、必ずしも「賛成する」ことではない。
たとえば、
彼の実力は認めるが、彼のやり方には賛成できない。
という文は自然である。
「認める」は、事実・価値・能力などについて「そうである」と受け入れることである。
自分が同じ立場になる必要はない。
ここは「賛成」の世界を理解するうえで重要である。
認めることと賛成することは別である。
「賛成する」と「承認する」|個人的な判断か、正式な許可か
「承認する」は、単に「いいと思う」よりも制度的・公式な意味を持ちやすい。
上司が計画を承認した。
これは、
上司が計画に賛成した。
とは少し違う。
「賛成」は上司個人の意見でも成立するが、「承認」はその人が持つ権限によって正式にOKを出すことを表せる。
英語ではこの領域で approve が重要になる。
「賛成する」と「受け入れる」|よいと思うか、拒まないか
何かを「受け入れる」ことも、必ずしも賛成を意味しない。
条件には納得していないが、受け入れることにした。
ということもできる。
つまり、
賛成する → よいと思う
受け入れる → 拒否せず取り入れる
である。
英語の accept にも、この「自分の側へ受け入れる」という感覚がある。
「賛成する」と「納得する」|結論へのYESか、理由を理解したYESか
「納得する」は、理由や説明を理解して「なるほど」と受け入れることである。
説明を聞いて納得した。
これは「説明に賛成した」とは言いにくい。
「賛成する」は意見や提案への態度であり、「納得する」は自分の中で理解が成立することに重点がある。
そのため、納得した結果として賛成することもあれば、
理由は分かったが、それでも私は反対だ。
ということもあり得る。
ここまでの日本語を概念で整理すると
「賛成」の周辺には、少なくとも次のような概念の違いがある。
| 概念 | 日本語表現 |
|---|---|
| 意見・提案をよいと思う | 賛成する |
| 考えが一致する | 同意する |
| 趣旨や理念に共鳴する | 賛同する |
| 人・考え・活動を支える | 支持する |
| 正しさ・価値などを受け入れる | 認める |
| 正式にOKを出す | 承認する |
| 条件・提案などを取り入れる | 受け入れる |
| 理由を理解して受け入れる | 納得する |
| 積極的には反対しない | 異議がない・反対しない |
ここまで整理して初めて、英語の違いが見えやすくなる。
英語では「賛成する」をどう表すのか?
英語では、「何に対して、どのような意味で賛成しているのか」によって表現が変わる。
| 日本語のイメージ | 英語 | コアイメージ |
|---|---|---|
| 意見が同じ | agree | 考えが一致する |
| 人・考え・活動を支持する | support | 支える・後押しする |
| よいと認める・承認する | approve | よいものとして認める |
| 提案・条件などを受け入れる | accept | 自分の側へ受け入れる |
| 公に支持を表明する | endorse | 支持を明確に表明する |
| 同じ見方・意見を持つ | share the view | 見解を共有する |
| 異議を唱えない | have no objection | 反対理由がない |
もちろん、これは「賛成する=agree」「支持する=support」という完全な対応表ではない。
日本語と英語では意味の範囲が異なる。
重要なのは、まず「どのような賛成なのか」を考え、その概念に近い英語を選ぶことである。
agree|考えが一致する
agree のコアイメージは「複数の人の考えが一致する」である。
日本語では「賛成する」「同意する」「意見が一致する」などと訳される。
I agree with you.
私はあなたに賛成である。/あなたと同じ意見である。
I agree with your idea.
私はあなたの考えに賛成である。
また、話し合いの結果として何かを決める場合にも使える。
We agreed to meet at nine.
私たちは9時に会うことに合意した。
つまり agree は単なる「賛成」というより、考え・意思が同じところにそろうと考えると理解しやすい。
support|人・考え・活動を支える
support のコアイメージは「下から支える」である。
そこから、人・政策・計画・活動などを「支持する」という意味になる。
I support this plan.
私はこの計画を支持している。
Many people support the idea.
多くの人がその考えを支持している。
agree と比較すると違いが分かりやすい。
I agree with him.
私は彼と同じ意見である。
I support him.
私は彼を支持している。
前者は意見の一致、後者はその人を支えることに焦点がある。
したがって、誰かの意見に賛成するからといって、その人を全面的に support しているとは限らない。
approve|よいものとして認める
approve のコアイメージは「よい・適切だと認める」である。
日本語では「賛成する」「認める」「承認する」などになる。
My parents don’t approve of the idea.
私の両親はその考えに賛成していない。
一方、他動詞として正式な承認にも使われる。
The manager approved the plan.
部長はその計画を承認した。
ここが agree との大きな違いである。
agree → 自分も同じ考えである
approve → よい・適切だと判断して認める
という方向の違いがある。
accept|拒まず受け入れる
accept のコアイメージは「差し出されたものを自分の側へ受け入れる」である。
She accepted the proposal.
彼女はその提案を受け入れた。
We accepted their conditions.
私たちは彼らの条件を受け入れた。
ここでは「賛成しているかどうか」は中心ではない。
たとえば、条件に不満があっても現実的な理由から accept することはできる。
そのため、
agree → 考えが一致する
accept → 拒まず受け入れる
という違いを意識するとよい。
endorse|支持をはっきり表明する
endorse は support に近いが、より「支持を表明する」という方向を持つ。
The organization endorsed the proposal.
その団体はその提案への支持を表明した。
政治家、候補者、政策、提案などに対して使われることがある。
単に心の中で賛成しているのではなく、自分の支持を外に示すという点がポイントである。
日常会話の「うん、賛成」の中心語ではなく、公的・明示的な支持へ広がった表現と考えるとよい。
「完全に賛成」「一部は賛成」など程度を表す
「賛成」はYESかNOかだけではない。程度も存在する。
| 日本語の概念 | 英語表現 | イメージ |
|---|---|---|
| 完全に同意する | completely agree | 全面的に同意 |
| 強く賛成する | strongly agree | 強い賛成 |
| 大賛成である | totally agree | 会話的な強い同意 |
| ある程度同意する | agree to some extent | 一部分は同意 |
| 必ずしも同意しない | don’t necessarily agree | 全面同意ではない |
| 異議はない | have no objection | 反対する理由はない |
たとえば、
I agree with you to some extent.
ある程度はあなたに同意する。
なら、「全部ではないが、その考えの一部は認める」という意味になる。
賛成と反対の間にも幅があるのである。
「賛成する」の概念地図
「賛成する」を中心にすると、次のような概念地図を描ける。
賛成する
├─ 考えが同じ → 同意する → agree
├─ 趣旨に共鳴する → 賛同する → agree with / support
├─ 人・活動を支える → 支持する → support
├─ よいと認める → 認める → approve of
├─ 正式に認める → 承認する → approve
├─ 提案・条件を受け入れる → 受け入れる → accept
├─ 支持を公に示す → 支持表明する → endorse
└─ 反対しない → 異議がない → have no objection
このように見ると、「賛成する=agree」と一語だけ覚える方法では捉えられない広がりが見えてくる。
特に重要なのは、
agree = 意見が一致する
support = 支える
approve = よいと認める
accept = 受け入れる
という概念の違いである。
まとめ|「何に、どのように賛成するのか」を考える
「賛成する」は、一見単純な言葉である。しかし、その周辺には「同意する」「賛同する」「支持する」「認める」「承認する」「受け入れる」などの異なる概念が広がっている。
| 「賛成」の方向 | 日本語 | 主な英語 |
|---|---|---|
| 考えが一致する | 賛成する・同意する | agree |
| 趣旨に共鳴する | 賛同する | agree with / support |
| 人や活動を支える | 支持する | support |
| よいと認める | 認める | approve of |
| 正式に認める | 承認する | approve |
| 条件などを受け入れる | 受け入れる | accept |
| 支持を明示する | 支持を表明する | endorse |
| 積極的には反対しない | 異議がない | have no objection |
「賛成する」を英語にするとき、最初から英単語を探す必要はない。
まず、
相手と同じ考えなのか。
その人や活動を支えるのか。
よいものとして認めるのか。
提案や条件を受け入れるのか。
を考える。
「賛成」という一つの日本語から概念を枝分かれさせることで、agree・support・approve・accept がばらばらの単語ではなく、一つの「賛成の世界」の中に見えてくるのである。