「困る」を表す言葉|悩む・苦労する・行き詰まるからtrouble・struggle・difficultyまで

「困る」を表す言葉

「困る」は、日常生活で非常によく使う日本語である。

「お金がなくて困っている」
「どう答えればいいか困った」
「仕事が多くて困っている」
「パソコンが動かなくて困った」
「そんなことをされると困る」

どれも「困る」だが、困っている理由や状態はかなり違う。

何をすればよいかわからないこともあれば、問題を抱えていることもある。苦労している場合もあれば、選択に迷っている場合もある。「それをされると困る」のように、相手にやめてほしいという意味で使うことさえある。

英語でも、この広い「困る」を一つの単語だけで表すことは難しい。trouble、difficulty、struggle、problem、be stuck、be at a lossなど、困り方によって表現が変わってくる。

では、そもそも「困る」とはどのような概念なのだろうか。

「困る」という日本語が表しているもの

「困る」には、「困」という漢字以外に一般的な書き分けはない。しかし、この漢字そのものには興味深いイメージがある。

「困」は、もともと「囲まれて自由に動けない」といった意味につながる漢字である。現代の「困る」も、問題や事情によって思うように動けない状態と考えると理解しやすい。

「困る」の中心にあるのは、単に「悪いことがある」ことではない。

何かが障害となり、どうすればよいかわからない、あるいは思うように進めない。

これが「困る」の中心的な概念である。

「困る」に関係する日本語

「困る」の周辺には、問題の存在、精神的な迷い、苦労、行き詰まりなどを表す言葉が広がっている。

日本語どのような「困る」なのか
困る問題や事情によって思うようにできない
悩む答えや解決策について考え続ける
迷うどれを選ぶか、どうするか決められない
苦労する大きな労力や困難を経験する
苦しむ肉体的・精神的につらい状態になる
手こずる思ったより簡単に処理できない
行き詰まる先へ進む方法が見つからない
困惑する予想外のことなどに戸惑う
戸惑う状況がつかめず、どう対応するか迷う
困り果てる非常に困り、方法が見つからない
お手上げになる自分ではどうにもできない
問題を抱える解決すべき問題を持っている
支障がある何かを進めるうえで障害がある

「困る」はこれらを広く包む言葉である。そのため、「何に」「どのように」困っているのかを考えることが重要になる。

「困る」の概念はどこへ枝分かれするのか

「困る」の世界は、困難の種類によっていくつかの方向へ分けられる。

概念の軸日本語表現中心となる違い
問題の存在困る / 問題を抱える解決すべきものがある
判断困る / 迷う / 悩むどうするか決められない
労力困る / 苦労する / 手こずる簡単にはできない
進行困る / 行き詰まる先へ進めない
心理困る / 戸惑う / 困惑する状況への対応がわからない
深刻さ困る / 困り果てる / お手上げ解決できない程度が強くなる
相手への要求それは困る相手の行為を受け入れにくい

つまり「困る」は、問題がある → 思うようにいかないという大きな概念であり、そこから「迷う」「苦労する」「行き詰まる」などへ枝分かれしている。

「困る」と「悩む」|問題があるか、考え続けているか

「困る」と「悩む」は重なることが多いが、視点が異なる。

「困る」は、何らかの事情によってどうすればよいかわからない、思うようにできない状態に焦点がある。

「悩む」は、その問題について考え続けることに焦点がある。

たとえば、

「お金がなくて困っている」

は自然である。一方、

「お金がなくて悩んでいる」

と言えば、お金の問題について精神的に考え続けている感じが強くなる。

また、

「どちらの大学に行くか悩んでいる」

では、選択について考えていることが中心であり、必ずしも「困った状況」とは限らない。

困る → 状況に対処できない

悩む → 問題について考え続ける

という違いである。

「困る」と「迷う」|問題なのか、選べないのか

「迷う」は、複数の選択肢や行動の間で決められないことである。

「赤と青、どちらを買うか迷っている」

とは言えるが、これは必ずしも困っているわけではない。

一方、

「どこに連絡すればよいかわからなくて困っている」

なら、単なる選択ではなく、行動を進められないことが問題になっている。

迷う → どれにするか決められない

困る → どうすればよいかわからず支障がある

と考えると分かりやすい。

「困る」と「苦労する」|対処できないか、大変でも取り組んでいるか

「苦労する」は、何かをするために多くの労力を必要とすることである。

「新しい仕事を覚えるのに苦労した」

という場合、難しかったものの、本人は取り組んでいる。

一方、

「新しい仕事がわからなくて困っている」

なら、「どうすればよいかわからない」という問題の存在が前面に出る。

困る → 問題によって思うようにできない

苦労する → 困難なことに大きな労力を使う

という違いである。

「困る」と「手こずる」|問題を抱えるか、簡単に片づかないか

「手こずる」は、取り組んではいるものの、予想以上にうまく進まないことである。

「この問題には手こずった」
「パソコンの設定に手こずっている」

などと使う。

「困る」よりも、具体的な作業や問題と格闘している感じが強い。

「パソコンが壊れて困っている」なら問題を抱えている状態であり、「パソコンの設定に手こずっている」なら作業そのものが難航している状態である。

「困る」と「行き詰まる」|困難があるか、先へ進めないか

「行き詰まる」は、進めていたことが途中で止まり、その先へ進む方法が見つからないことである。

「研究に行き詰まる」
「交渉が行き詰まる」
「アイデアに行き詰まる」

などと使う。

「困る」はもっと広いが、「行き詰まる」には、

進んでいた → 障害にぶつかる → 先へ進めなくなる

という流れがある。

そのため、「行き詰まる」は「困る」の中でも進行不能に焦点を当てた言葉と考えられる。

「困る」と「戸惑う」|問題なのか、状況をつかめないのか

「戸惑う」は、予想していなかった状況などに直面し、どう反応すればよいかわからないことである。

「突然質問されて戸惑った」
「初めての文化に戸惑った」

などと使う。

「困る」には実際の問題や支障が含まれやすい。一方、「戸惑う」はその場でどう反応すればよいかわからない心理状態に焦点がある。

「困惑する」は「戸惑う」よりやや硬く、困り戸惑っている状態を表す。

「困る」と「困り果てる」|困難の程度が違う

「困り果てる」は、「困る」をさらに強くした表現である。

「何度言っても聞いてくれず、困り果てている」

のように、単に問題があるだけでなく、どうすればよいかわからないところまで追い込まれている感じがある。

さらに口語では、

「もうお手上げだ」

とも言える。

「困る → 困り果てる → お手上げ」

と進むにつれて、「自分ではどうにもできない」という意味が強くなる。

「それは困る」|相手にやめてほしい「困る」

日本語の「困る」には、もう一つ重要な使い方がある。

「急に休まれると困る」
「勝手に変更されると困る」
「ここに車を止めてもらっては困る」

この「困る」は、自分が困難な状態にあることを説明するだけではない。

「そうされると問題が生じる」
↓
「だから、そうしないでほしい」

という間接的な要求や拒否にもなっている。

英語にするときには、単純に「困る」を訳すのではなく、「何を相手に伝えたいのか」を考える必要がある。

ここまでの日本語を概念で整理すると

概念日本語表現
問題があって対処できない困る
考え続ける悩む
選択できない迷う
困難なことに取り組む苦労する
予想以上に難しい手こずる
先へ進めない行き詰まる
対応がわからない戸惑う / 困惑する
非常に困っている困り果てる
自分ではどうにもできないお手上げ
相手にやめてほしいそれは困る

ここで重要なのは、「困る」が単一の感情ではないことである。

問題・判断・労力・進行・心理・対人関係など、さまざまな方向へ広がっている。

英語では「困る」をどう表すのか?

では、この「困る」の世界を英語ではどう表すのだろうか。

英語には、日本語の「困る」にそのまま対応する万能な動詞があるわけではない。「どのように困っているのか」によって表現を選ぶ必要がある。

日本語のイメージ英語コアイメージ
問題・面倒trouble物事を難しくする問題や面倒
困難difficulty簡単にできないこと
苦労するstruggle困難の中で何とかしようとする
問題を抱えるhave a problem解決すべき問題がある
行き詰まるbe stuckそこから先へ動けない
どうすればよいかわからないbe at a loss方法や言葉が見つからない
対処に苦労するhave trouble ~ing~するのがうまくいかない
困った状況にあるbe in trouble問題のある状況にいる

これは「困る=trouble」のような一対一の対応表ではない。

日本語では一言で「困る」と言える場面を、英語では問題なのか、困難なのか、苦労なのか、行き詰まりなのかによって分けて表しているのである。

trouble|問題や面倒が生じている

troubleのコアイメージは、物事を難しくしたり、正常に進まなくしたりする問題・面倒である。

日本語では「困る」「問題」「面倒」「トラブル」など、文脈によってさまざまに訳される。

よく使われるのがhave trouble ~ingである。

I’m having trouble sleeping.
「なかなか眠れなくて困っている。」

直訳的には「眠ることについて困難を抱えている」という構造である。

また、

I’m having trouble with my computer.
「パソコンのことで困っている。」

のようにも使える。

一方、be in troubleになると「問題のある状況に陥っている」という意味になる。

He is in trouble.
「彼は困った状況にある。」

同じtroubleでも、表現全体で意味が変わる点が重要である。

difficulty|簡単にはできないという困難

difficultyは、何かをすることを難しくしているものに焦点がある。

「困る」という感情そのものより、「困難」「難しさ」に近い。

I had difficulty finding the place.
「その場所を見つけるのに苦労した。」

日本語なら「場所が見つからなくて困った」と表現する場面もある。

difficultyは比較的中立的で、「どれほど大変だったか」よりも、簡単にはできなかったという事実を表しやすい。

日常会話ではhave trouble ~ingのほうが口語的に使われる場面も多い。

struggle|困難の中で何とかしようとする

struggleは、「困っている」という静的な状態ではなく、困難の中でもがきながら何とかしようとしているイメージを持つ。

I’m struggling with this math problem.
「この数学の問題に苦戦している。」

She struggled to find a job.
「彼女は仕事を見つけるのに苦労した。」

日本語では「困る」「苦労する」「苦戦する」などに訳せる。

troubleやdifficultyが「困難の存在」に焦点を置けるのに対し、struggleではその困難と格闘している人が見えてくる。

そのため、

「困る」
↓
「何とかしようとする」
↓
「それでも簡単にはいかない」

という場面で使いやすい。

be stuck|先へ進めなくて困る

stuckはもともと、「動けない」「引っかかっている」という感覚を持つ。

そこから、

何をすればよいかわからず、先へ進めない

という意味でも使われる。

I’m stuck on this question.
「この問題で行き詰まっている。」

I’m stuck. I don’t know what to do next.
「行き詰まった。次に何をすればいいかわからない。」

日本語の「困っている」に近い場面は多いが、特に「行き詰まる」という概念と相性がよい。

struggleが「苦労しながら取り組んでいる」なら、be stuckは進めなくなっている状態に焦点がある。

be at a loss|どうすればよいかわからない

be at a lossは、どうすればよいのか、何と言えばよいのかわからない状態を表す。

I was at a loss for what to say.
「何と言えばよいかわからず困った。」

これは単なるdifficultyとは違う。

「難しい」というより、

選択肢や方法が思いつかない。

という「困る」である。

日本語の「困ったなあ」「どうしよう」に近い世界を表せる表現の一つである。

「困る」に近い周辺英語表現

日本語側の概念をさらに広げると、英語にもさまざまな表現が見えてくる。

日本語の概念英語表現ニュアンス
問題があるhave a problem解決すべき問題を持つ
~するのに困るhave trouble ~ing~がうまくできない
困難があるhave difficulty ~ing~することが難しい
苦労しているstruggle困難と格闘している
行き詰まるbe stuck先へ進めない
どうすればよいかわからないbe at a loss方法が思いつかない
対処するのが難しいhave a hard time大変な思いをする
面倒な状況になるrun into trouble問題にぶつかる
深刻な問題を抱えるbe in trouble困った状況にある

たとえば日本語なら、

「英語がわからなくて困っている」

だけで済む。

しかし英語では、状況によって、

I’m having trouble understanding English.
「英語を理解するのに困っている。」

I’m struggling with English.
「英語に苦戦している。」

I’m stuck because I don’t understand the instructions.
「説明がわからなくて行き詰まっている。」

などと表現できる。

「困る」を英単語へ直接置き換えるのではなく、実際に何が起きているのかを言葉にすることがポイントである。

「困る」の概念地図

「困る」の世界を概念として整理すると、次のようになる。

困る
├─ 問題を抱えている
│ └─ problem / trouble
├─ 簡単にできない
│ └─ difficulty / have trouble
├─ 大変でも取り組んでいる
│ └─ struggle
├─ 先へ進めない
│ └─ be stuck
├─ どうすればよいかわからない
│ └─ be at a loss
├─ 選べない
│ └─ 迷う
├─ 考え続ける
│ └─ 悩む
└─ 相手にされると困る
  └─ 文脈に応じて拒否・要求として表現する

ここから見えてくるのは、日本語の「困る」が非常に大きな言葉だということである。

英語のtrouble、difficulty、struggleなどがばらばらに存在しているのではない。

日本語で「困る」と呼んでいる大きな概念世界を細かく見ると、

問題がある
↓
難しい
↓
苦労する
↓
行き詰まる
↓
どうすればよいかわからない

という違いが見えてくる。

その違いを英語では別々の表現として切り分けているのである。

まとめ|「どのように困っているのか」を考える

「困る」を英語にするとき、最初から「困るは英語で何と言うのか」と考えると難しくなる。

まず日本語の「困る」を分解してみることが重要である。

どのような「困る」か日本語英語の代表例
問題を抱えている困る / 問題があるtrouble / problem
簡単にできない困る / 難しいdifficulty
大変でも取り組む苦労する / 苦戦するstruggle
先へ進めない行き詰まるbe stuck
方法がわからない困る / お手上げbe at a loss
選択できない迷う文脈によって表現する
考え続ける悩むworry / struggleなど文脈による

日本語の「困る」は、「問題によって思うようにできない」という大きな概念を持っている。

しかし、その中には「難しい」「苦労する」「行き詰まる」「どうすればよいかわからない」など、異なる困り方が存在する。

困る=troubleと覚えるのではない。

「何が問題なのか」「何ができないのか」「今どのような状態なのか」を考える。

そうすると、trouble、difficulty、struggle、be stuck、be at a lossといった英語が、一つの「困る」の世界の中でつながって見えてくるのである。

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