「難しい」を表す言葉|難解・困難・複雑からdifficult・hard・challengingまで

「難しい」を表す言葉

「難しい」は、日常会話でも非常によく使う言葉である。

「この問題は難しい」
「説明が難しい」
「今日中に終わらせるのは難しい」
「人間関係って難しい」
「その条件では難しいですね」

どれも「難しい」だが、同じ種類の難しさではない。

内容が理解しにくいのであれば「難解」である。実行するのが大変なのであれば「困難」である。いくつもの要素が絡み合っているなら「複雑」である。「できない」と断定せず、実現可能性が低いことをやわらかく伝える「難しい」もある。

英語でも、これらをすべて一つの単語で表すわけではない。difficult、hard、challenging、complicated、complex、tough、trickyなど、何がどのように難しいのかによって表現が変わる。

では、そもそも「難しい」とはどのような概念なのだろうか。

「難しい」と「むずかしい」|漢字とひらがなの違い

「難しい」には、「見る・観る」のように漢字によって意味を大きく分ける表記はない。基本的には「難しい」と「むずかしい」の表記の違いである。

表記中心となる概念使用例
難しい理解・実行・達成などが容易ではない難しい問題
むずかしい意味は同じ。やわらかい印象になりやすいむずかしい話
難い「〜しにくい」の意味を持つ文語的表現理解し難い、信じ難い

「難い」は「むずかしい」と読む通常の形容詞とは少し異なる。「信じ難い」「許し難い」のように、動詞と結びついて「〜することが容易ではない」という意味を表す。

重要なのは表記よりも、「難しい」という言葉が非常に広い範囲を覆っていることである。

「難しい」に関係する日本語

まず英語から離れて、日本語の「難しい」の周辺を見てみよう。

日本語どのような「難しい」なのか
難しい容易に理解・実行・達成できない
難解内容を理解するのが難しい
困難実行・達成するのが難しい
複雑要素や関係が入り組んでいる
ややこしい複雑で分かりにくい
厄介対処するのが面倒で難しい
手ごわい相手や課題を簡単には攻略できない
骨が折れる多くの労力が必要である
大変労力や負担が大きい
難関突破するのが難しい関門
高度高い知識・能力が必要である
微妙単純に判断・処理しにくい
一筋縄ではいかない普通の方法では簡単に解決できない
無理がある実現・実行が難しい
できそうにない実現可能性が低い

こうして並べると、「難しい」は単に難易度が高いことだけを表しているのではないことが分かる。

「難しい」の概念はどこへ枝分かれするのか

「難しい」の世界は、「何が障害になっているのか」で整理すると分かりやすい。

概念の軸日本語表現難しさの中心
理解難しい・難解分かりにくい
実行難しい・困難やるのが容易ではない
達成困難・難関ゴールに到達しにくい
構造複雑・ややこしい要素が入り組んでいる
対処厄介・手ごわい簡単に処理できない
労力大変・骨が折れる多くの努力が必要
能力高度・難しい高い能力が必要
判断微妙・難しい簡単に結論を出せない
可能性難しい・無理がある実現可能性が低い

つまり「難しい」の中心には、

「何かが障害となり、簡単には理解・実行・達成・判断できない」

という概念がある。

そこから「なぜ簡単ではないのか」によって、さまざまな言葉へ枝分かれしているのである。

「難しい」と「難解」|難しさの中心が「理解」にある

「難解」は、理解することが難しいという意味である。

「難しい問題」であれば、解くのが難しいのか、内容を理解するのが難しいのかは文脈による。

一方、

「難解な文章」

と言えば、文章の内容を理解すること自体が難しいという意味になる。

  • この本は難しい。
  • この哲学書は難解である。
  • 彼の説明は難解で、よく理解できなかった。

「難しい」が広い言葉なのに対し、「難解」は理解の難しさに焦点を絞った言葉である。

「難しい」と「困難」|簡単ではないか、実現しにくいか

「困難」は、何かを実行したり達成したりすることが容易ではないという意味を持つ。

「この問題は難しい」は自然だが、「この問題は困難だ」とすると、問題そのものの難易度というより、それへの対応や解決が容易ではない印象が強くなる。

  • この問題は難しい。
  • この状況で計画を続けるのは困難である。
  • 一人で山頂まで到達するのは困難だった。

「困難」には、行動の前に大きな障害があるというイメージがある。

「難しい」と「複雑」|難易度と構造は同じではない

「複雑」は必ずしも「難しい」と同じではない。

複雑とは、複数の要素や関係が入り組んでいる状態である。

たとえば機械の内部構造が複雑でも、専門家にとって扱うのが難しいとは限らない。

逆に、

「100メートルを9秒で走る」

という課題は非常に難しいが、内容自体は複雑ではない。

  • 難しい → 簡単にできない
  • 複雑 → 単純ではない

という違いがある。

「複雑だから難しい」ことは多いが、二つは同じ概念ではないのである。

「難しい」と「ややこしい」|複雑さに分かりにくさが加わる

「ややこしい」は「複雑」に近いが、より日常的な言葉である。

単に構造が複雑なだけではなく、

「入り組んでいて分かりにくい・扱いにくい」

という話し手の感覚が入りやすい。

  • この手続きはややこしい。
  • 人間関係がややこしくなった。
  • このルールはややこしくて覚えにくい。

「複雑」は比較的客観的な状態を表せるが、「ややこしい」はその複雑さに困っている感覚まで含みやすい。

「難しい」と「厄介」|難易度より「対処しにくさ」

「厄介」は、単純に高度だから難しいという意味ではない。

対処するのに手間がかかる、面倒である、簡単に片づかないという感覚が中心である。

  • 厄介な問題が起きた。
  • この汚れはなかなか落ちなくて厄介だ。
  • 彼を説得するのは厄介である。

数学の高度な問題なら「難しい」が自然だが、何度も同じ問題を起こす機械なら「厄介」のほうが自然になる。

「難しい」と「手ごわい」|相手や課題が簡単には攻略できない

「手ごわい」には、こちらが挑戦する相手として強いという感覚がある。

  • 手ごわい相手
  • 手ごわい問題
  • 今回の交渉相手はかなり手ごわい。

単に難しいだけでなく、「こちらも本気で取り組まなければ突破できない」という対抗関係が感じられる言葉である。

そのため、人、試合、交渉、問題などとの相性がよい。

「難しい」と「大変」|難易度と負担は違う

「大変」は「難しい」と重なることが多いが、中心にあるのは負担の大きさである。

たとえば、

「1,000個の箱に同じシールを貼る」

作業は難しくないかもしれない。しかし一人で行えば大変である。

反対に、高度な数学問題は一問だけでも難しい。

  • 難しい → 能力・理解・達成などの壁が高い
  • 大変 → 時間・労力・精神的負担などが大きい

この違いは英語を考えるときにも重要になる。

「難しい」と「微妙」|判断しにくいという難しさ

日本語の「難しい」には、直接「できない」と言わないための表現として使われることもある。

「明日までにできますか?」

「うーん、それはちょっと難しいですね」

この場合、知識や能力が足りないという意味とは限らない。

条件を考えると実現可能性が低い

という意味である。

「微妙ですね」「厳しいですね」なども、この領域に近い。

日本語の「難しい」は、難易度だけでなく、判断や可能性の表現にまで広がっているのである。

ここまでの日本語を概念で整理すると

概念日本語表現
広い意味で容易ではない難しい
理解しにくい難解
実行・達成しにくい困難
構造が入り組んでいる複雑
入り組んで分かりにくいややこしい
対処しにくい厄介
攻略しにくい手ごわい
労力が大きい大変・骨が折れる
高い能力が必要高度
判断しにくい微妙・難しい
実現可能性が低い難しい・厳しい・無理がある

「難しい」の反対を単純に「簡単」と考えるだけでは、この世界全体は見えてこない。

「なぜ難しいのか」を見ることが重要なのである。

英語では「難しい」をどう表すのか?

では、英語では「難しい」をどう表すのだろうか。

代表的な表現を、日本語で整理した概念から見てみよう。

日本語のイメージ英語コアイメージ
難しいdifficult容易ではなく、能力や努力が必要
難しい・大変hard大きな努力が必要
難しいが挑戦する価値があるchallenging能力を試される
複雑complex多くの要素が組み合わさっている
ややこしいcomplicated入り組んで扱いにくい
手ごわい・厳しいtough簡単には突破できない
厄介・判断が難しいtricky注意や工夫が必要
理解しにくいconfusing混乱させる
不可能に近いimpossible実現できない

この表も「難しい=difficult」のような一対一の対応表ではない。

同じ状況でも、難しさのどの部分に注目するかによって英語表現が変わる。

difficult|容易ではなく、能力や努力が必要

difficultは「難しい」を表す代表的な語である。

コアイメージは、

「簡単にはできず、能力・努力・思考などが必要」

である。

問題、仕事、判断、状況など幅広いものに使える。

This question is difficult.
この問題は難しい。

It was difficult to make a decision.
決断するのは難しかった。

日本語の「難しい」にかなり近い範囲を持つが、日本語ほど遠回しな断りとして自由に使えるわけではない。

difficultは、比較的客観的に「容易ではない」ことを表しやすい語である。

hard|努力が必要な「難しい」

hardも日常会話では非常によく使われる。

This test is really hard.
このテストは本当に難しい。

difficultと重なる部分は大きい。

ただしhardにはもともと「硬い」「強い」といった感覚があり、そこから簡単には突破できない、努力が必要であるというイメージにつながる。

Learning a new language is hard.
新しい言語を学ぶのは大変である。

この文では「難しい」だけでなく「大変」という日本語も自然である。

difficultが「難易度が高い」という方向に向きやすいのに対し、hardは「やるのが大変」という感覚にも広がりやすい。

challenging|能力を試される難しさ

challengingは単なる「難しい」ではない。

challengeと関係する語であり、

「自分の能力を試されるような難しさ」

が中心にある。

This job is challenging, but interesting.
この仕事は大変だが、面白い。

ここでdifficultを使うこともできるが、challengingには「難しいからこそ挑戦しがいがある」という前向きな響きが出やすい。

It was a challenging project.
それは難しいプロジェクトだった。

日本語では「難しい仕事」「大変な仕事」「やりがいのある仕事」など、文脈によって訳し方が変わる。

tough|簡単には突破できない

toughには「丈夫な」「強い」という意味がある。

そこから、

「簡単には突破できない」

という難しさを表す。

It was a tough decision.
難しい決断だった。

We had a tough week.
大変な一週間だった。

They are a tough team to beat.
彼らは倒すのが難しい手ごわいチームである。

toughは「難しい」「厳しい」「大変」「手ごわい」など、日本語ではさまざまに訳される。

特に、人間が実際に直面する厳しい状況との相性がよい。

tricky|注意や工夫が必要な難しさ

trickyは、単にレベルが高いというより、

「一筋縄ではいかず、注意や工夫が必要」

という難しさを表す。

This question is a little tricky.
この問題はちょっとややこしい。

This part can be tricky.
この部分は少し難しいことがある。

「難問」というほどではなくても、落とし穴があったり、判断を間違えやすかったりする場合に使える。

日本語の「ややこしい」「厄介」「微妙」「ちょっと難しい」に近づくことがある。

complexとcomplicated|「複雑だから難しい」を分けて考える

日本語では「難しい」と「複雑」が簡単に結びつく。

英語でもcomplexとcomplicatedは「難しい」と関係するが、中心は複雑さである。

英語中心イメージ日本語イメージ
complex多くの要素が組み合わさっている複雑な
complicated入り組んで簡単に扱えない複雑な・ややこしい

The human brain is extremely complex.
人間の脳は非常に複雑である。

complexは、複雑な構造そのものに注目できる。

The situation is complicated.
状況は複雑である。

complicatedには、複雑で簡単に整理できないという感覚が出やすい。

つまり、

difficult → 難易度

complex / complicated → 複雑さ

という軸の違いを意識すると理解しやすい。

周辺の英語表現|「なぜ難しいのか」から広げる

「難しい」の周辺には、さらにさまざまな表現がある。

難しさの種類英語日本語のイメージ
理解しにくいconfusing分かりにくい・混乱する
理解しにくいhard to understand理解するのが難しい
労力がかかるdemanding多くの能力・労力を要求する
疲れるほど大変exhaustingへとへとになる
厳しいtough大変・手ごわい
注意が必要tricky厄介・ややこしい
高度なadvanced高いレベルの
不可能impossibleできない
ほぼ不可能nearly impossibleほとんど不可能
扱いにくいdifficult to handle対処が難しい

重要なのは、英単語を横に並べて暗記することではない。

たとえば日本語の「この仕事は難しい」を英語にするときも、

  • 高度な能力が必要なのか
  • 作業量が多くて大変なのか
  • 状況が複雑なのか
  • 手ごわい課題なのか
  • 挑戦しがいがあるのか

によって選択肢が変わる。

まず日本語側で「どのような難しさなのか」を考えるのである。

「難しい」の概念地図

「難しい」の世界を大きく整理すると、次のようになる。

難しい
│
├─ 理解するのが難しい
│   ├─ 難解
│   └─ difficult / hard to understand / confusing
│
├─ 実行・達成するのが難しい
│   ├─ 困難
│   └─ difficult / hard
│
├─ 努力を要求される
│   ├─ 大変・骨が折れる
│   └─ hard / demanding
│
├─ 能力を試される
│   ├─ 挑戦的・手ごわい
│   └─ challenging / tough
│
├─ 構造が入り組んでいる
│   ├─ 複雑
│   └─ complex
│
├─ 入り組んで扱いにくい
│   ├─ ややこしい
│   └─ complicated
│
├─ 注意や工夫が必要
│   ├─ 厄介・一筋縄ではいかない
│   └─ tricky
│
└─ 実現可能性が低い
    ├─ 難しい・厳しい・無理がある
    └─ difficult / unlikely / impossible など

このように見ると、difficult、hard、challenging、tough、trickyなどは、ばらばらの「難しいの類義語」ではないことが分かる。

それぞれが「難しい」という大きな概念世界の異なる部分を切り取っているのである。

まとめ|「なぜ難しいのか」を考える

「難しい」は非常に広い日本語である。

最後に全体を整理しよう。

「難しい」の方向日本語英語の代表例
広く容易ではない難しいdifficult
努力が必要難しい・大変hard
能力を試される挑戦的・手ごわいchallenging
突破しにくい手ごわい・厳しいtough
理解しにくい難解difficult / hard to understand
構造が入り組む複雑complex
入り組んで扱いにくいややこしいcomplicated
注意や工夫が必要厄介・ややこしいtricky
多くの負担を要求する大変demanding
実現できない不可能impossible

英語を覚えるとき、「難しい=difficult」とだけ覚えると、その周囲にあるhard、challenging、tough、tricky、complex、complicatedなどが別々の単語に見えてしまう。

しかし日本語から、

「何が難しいのか?」

「なぜ難しいのか?」

と考えてみると、それぞれの位置関係が見えてくる。

「理解するのが難しい」のか。「努力が必要で難しい」のか。「複雑だから難しい」のか。「手ごわくて難しい」のか。「挑戦しがいがあるほど難しい」のか。

「どのような難しさなのか」を考えることで、使う英語が見えてくるのである。

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