「増える」を表す言葉|増す・伸びる・広がるからincrease・rise・growまで

「増える」を表す言葉

「増える」は、日常生活でもニュースでも頻繁に使われる言葉である。

「人口が増える」「値段が上がる」「売上が伸びる」「不安が高まる」「被害が拡大する」のように、何かが以前より大きくなる変化を、日本語ではさまざまな言葉で表している。

「増える」に近い言葉には、増す、増加する、伸びる、上がる、高まる、膨らむ、広がるなどがある。しかし、これらはすべて同じ変化ではない。

英語でも同様である。increaseだけでなく、rise、grow、expand、multiplyなどがあり、「何が、どのように増えるのか」によって表現が変わる。

では、そもそも「増える」とはどのような概念なのだろうか。

「増える」と「殖える」|何がふえるのか

「ふえる」は通常「増える」と書くが、生物が繁殖して数が多くなる場合には「殖える」という表記もある。

表記中心となる概念使用例
増える数・量・程度などが多くなる人口が増える、仕事が増える
殖える生物などが繁殖して数が多くなる細菌が殖える、魚が殖える

現代では、生物についても「増える」と書くことが多い。「殖える」は意味を明確に区別したい場合に使われる表記である。

つまり、「増える」は非常に広い概念であり、「殖える」はその中でも繁殖による増加に焦点を当てた表現と考えると分かりやすい。

「増える」に関係する日本語

「増える」の周辺には、変化の仕方をより具体的に表す言葉が広がっている。

日本語どのような「増える」なのか
増える数・量などが以前より多くなる
増す数量・程度・強さなどが大きくなる
増加する数量が多くなることを客観的に表す
伸びる数値・能力・売上などが上向きに変化する
上がる数値・価格・温度などが高い位置へ移る
高まる程度・関心・緊張などが強くなる
膨らむ中身や規模が大きくなる
広がる範囲が大きくなる
拡大する規模・範囲が大きくなる
増殖する生物・細胞などが増える
急増する短期間で大きく増える
倍増するおおむね倍になる、または大幅に増える
積み重なる少しずつ加わって量が多くなる

重要なのは、これらを「増える」の言い換えとして暗記しないことである。

「何が変化するのか」「どの方向へ変化するのか」を考えると、それぞれの概念が見えてくる。

「増える」の概念はどこへ枝分かれするのか

「増える」の中心にあるのは、ある基準よりも数・量・程度などが大きくなる変化である。

そこから、次のような方向へ枝分かれする。

概念の軸日本語表現注目しているもの
数・量増える・増加する数量そのもの
程度・強さ増す・高まる強さや程度
上方向への変化上がる数値・水準
成長伸びる売上・能力・記録など
容量・規模膨らむ中身や規模
範囲広がる・拡大する面積・影響範囲
繁殖殖える・増殖する生物・細胞など
速度急増する急激な増加

同じ「大きくなる変化」であっても、何に注目するかによって日本語が変わるのである。

「増える」と「増す」|量が多くなるか、程度まで強くなるか

「増える」は、基本的に数や量が多くなることを表す。

  • 人口が増える
  • 荷物が増える
  • 仕事が増える
  • 体重が増える

一方、「増す」は数量だけでなく、程度や強さが大きくなる場合にも使いやすい。

  • 雨脚が強さを増す
  • 不安が増す
  • 重要性が増す
  • 興味が増す

「不安が増える」も自然だが、「不安が増す」とすると、不安という感情の程度が強くなっていく感覚が出る。

「増える」が広い数量変化を表すのに対し、「増す」は強度の上昇にも広がっているのである。

「増える」と「増加する」|日常的な変化か、客観的な数量変化か

「増加する」は「増える」とかなり近い。しかし、使われる場面が異なる。

「利用者が増えた」は日常的で自然な表現である。

「利用者が増加した」とすると、統計や報告のような客観的な響きが強くなる。

  • 最近、観光客が増えている。
  • この地域では観光客が増加している。

意味する現象はほぼ同じでも、後者は数量変化を分析している印象になる。

そのため、ニュース、統計、研究、ビジネスなどでは「増加する」がよく使われる。

「増える」と「伸びる」|量の増加か、成長としての増加か

「伸びる」には、単に数量が多くなるだけではなく、成長する・向上するというイメージがある。

  • 売上が伸びる
  • 成績が伸びる
  • 記録が伸びる
  • 利用者数が伸びる

「売上が増える」なら、以前より売上の量が多くなったことに焦点がある。

「売上が伸びる」なら、売上が上向きに成長している流れに焦点がある。

そのため「伸びる」は、時間とともに発展していく変化と相性がよい。

「増える」と「上がる」|量が多くなるか、数値が高くなるか

「上がる」の基本には、低いところから高いところへの移動がある。

この空間的な「上」が、数値にも広がっている。

  • 値段が上がる
  • 気温が上がる
  • 血圧が上がる
  • 点数が上がる

「物価が増える」とは通常言わず、「物価が上がる」と言う。

これは物価を「個数」として見ているのではなく、水準の高さとして見ているからである。

「増える」は量、「上がる」は高さという違いがある。

「増える」と「高まる」|数量か、程度か

「高まる」は、物理的な高さではなく、抽象的な程度が高くなる場合によく使われる。

  • 関心が高まる
  • 緊張が高まる
  • 期待が高まる
  • 危険性が高まる

たとえば「関心が増える」と言えば、関心を持つ人や関心の量が多くなるような感覚がある。

「関心が高まる」なら、関心そのものの程度が強くなる。

この違いは英語表現を選ぶときにも重要になる。

「増える」と「膨らむ」|数量か、内部から大きくなるか

「膨らむ」は、風船のように中から外へ大きくなることが基本イメージである。

そこから抽象的なものにも使われる。

  • 予算が膨らむ
  • 借金が膨らむ
  • 期待が膨らむ
  • 想像が膨らむ

「借金が増える」は数量の増加をそのまま表す。

「借金が膨らむ」は、借金が次第に大きな規模になっていく様子を感じさせる。

同じ増加でも、変化の見え方が異なるのである。

「増える」と「広がる」|量が増すか、範囲が大きくなるか

「広がる」は、数や量ではなく範囲に注目する表現である。

  • 火が広がる
  • 被害が広がる
  • うわさが広がる
  • 感染が広がる

たとえば「感染者が増える」は人数の変化である。

「感染が広がる」は、感染している地域や人々の範囲が拡大することである。

同じ現象を見ていても、どの部分に注目するかによって言葉が変わる。

「増える」と「殖える」|一般的な増加か、繁殖による増加か

「殖える」は、生物が繁殖して個体数が多くなることを強調する。

  • 魚が殖える
  • 細菌が殖える
  • 家畜が殖える

ただし、現代では「魚が増える」「細菌が増える」も普通に使われる。

「殖える」は「どのように増えたのか」という原因まで含みやすい。つまり、外から追加されたのではなく、自ら繁殖することで増えたという違いがある。

ここまでの日本語を概念で整理すると

ここまでの日本語を、「何が大きくなるのか」という視点で整理すると次のようになる。

概念日本語表現
数・量が多くなる増える・増加する
程度・強さが大きくなる増す・高まる
数値・水準が高くなる上がる
成長する伸びる
容量・規模が大きくなる膨らむ
範囲が大きくなる広がる・拡大する
繁殖によって多くなる殖える・増殖する
急激に多くなる急増する
積み重なって多くなる積み重なる

つまり「増える」の世界は、単純な「数が多くなる」だけではない。

量・程度・高さ・成長・規模・範囲・繁殖という複数の方向へ広がっている。

英語では「増える」をどう表すのか?

では、英語では「増える」をどう表すのか。

日本語で整理した概念を見ると、英語にも複数の表現が必要になる理由が分かる。

日本語のイメージ英語コアイメージ
数・量・程度が増えるincrease数量・程度が大きくなる
数値・水準が上がるrise下から上へ上昇する
成長して増えるgrow成長しながら大きくなる
範囲・規模が広がるexpand外側へ広がる
数がどんどん増えるmultiply数が何倍にもなる
急激に増えるsurge勢いよく跳ね上がる
徐々に蓄積するaccumulate積み重なって増える

ここで注意したいのは、この表が「増える=increase」「伸びる=grow」という一対一の翻訳表ではないことである。

同じ日本語の「増える」でも、増え方をどう捉えるかによって英語が変わる。

increase|数・量・程度が大きくなる

increaseは、「増える」の中心に最も近い英語の一つである。

コアイメージは、ある数量や程度が以前より大きくなることである。

人口、価格、費用、需要、リスクなど、非常に幅広い対象に使える。

The number of visitors increased last year.
昨年、訪問者の数が増えた。

The cost has increased significantly.
費用が大幅に増えた。

increaseは特定の増え方を強く示さない。そのため、客観的に「増加した」と述べたい場面で使いやすい。

またincreaseは自動詞として「増える」、他動詞として「増やす」の両方に使える。

Sales increased.
売上が増えた。

We increased production.
私たちは生産量を増やした。

日本語では「増える」と「増やす」を区別するが、英語ではincreaseという同じ語が両方を担える点も重要である。

rise|低いところから高いところへ上がる

riseのコアイメージは、下から上への移動である。

そこから、価格、気温、水準、割合などが上昇する場合にも使われる。

Prices are rising.
物価が上がっている。

The temperature rose quickly.
気温が急に上がった。

日本語では「増える」と訳せる場合もあるが、「上がる」の感覚に近い。

increaseが「以前より大きくなった」という変化そのものを見るのに対し、riseは数値が上方向へ動くことをイメージしやすい。

なお、riseは基本的に自動詞である。

Prices rose.
価格が上がった。

誰かが「価格を上げる」ならraiseなどを使う。この違いは「増える」と「増やす」の関係にも似ている。

grow|成長しながら大きくなる

growの基本イメージは「育つ」である。

植物や子どもが成長するところから、会社、経済、需要、人気などが発展して大きくなる場合にも使われる。

The company is growing rapidly.
その会社は急速に成長している。

Demand for the service is growing.
そのサービスへの需要が増えている。

increaseとの違いは、growには時間とともに成長していく流れが感じられることである。

「売上が増えた」という一点の変化ならincreaseが使いやすい。

「事業が伸びている」「市場が成長している」という継続的な変化ならgrowが自然になる。

expand|範囲・規模が外側へ広がる

expandのコアイメージは、外側へ広がって大きくなることである。

日本語の「増える」よりも、「広がる」「拡大する」に近い。

The company expanded its business overseas.
その会社は海外へ事業を拡大した。

The city is expanding rapidly.
その都市は急速に拡大している。

人数そのものが多くなるというより、活動範囲や規模が大きくなる場面で使いやすい。

increaseが「量」、expandが「広がり」と考えると違いが見えやすい。

multiply|数が何倍にも増える

multiplyには「掛ける」という意味がある。

そこから、数が何倍にもなって増えていくことを表す。

The bacteria multiply quickly.
その細菌は急速に増殖する。

Problems began to multiply.
問題が次々と増え始めた。

特に生物の増殖では、日本語の「殖える」「増殖する」に近づく。

increaseよりも、次々と数が増えていくイメージが強い表現である。

「急増する」「膨らむ」「積み重なる」を英語でどう表すか

中心となるincrease、rise、growだけでは、「増え方」のすべてを表せるわけではない。

日本語側で細かく見た概念は、英語でもさらに枝分かれする。

増え方英語イメージ
急増するsurge急激に跳ね上がる
急上昇するsoar高く舞い上がるように上昇する
膨らむswell膨張して大きくなる
拡大するexpand範囲・規模が広がる
蓄積するaccumulate少しずつ積み重なる
増殖するmultiply数が何倍にもなる

たとえば、単に「価格が上がった」ならriseで表現できる。

Prices rose last month.
先月、価格が上がった。

ところが、価格が突然大幅に上がったことを強調するならsurgeが使える。

Oil prices surged.
原油価格が急騰した。

同じ「増える方向への変化」でも、変化の速度や形を見ることで使う英語が変わるのである。

「増える」の概念地図

「増える」を中心に置くと、日本語と英語の関係は次のように整理できる。

増える
│
├─ 数・量が多くなる
│   ├─ 増える
│   ├─ 増加する
│   └─ increase
│
├─ 数値・水準が高くなる
│   ├─ 上がる
│   └─ rise
│
├─ 成長しながら大きくなる
│   ├─ 伸びる
│   └─ grow
│
├─ 程度が強くなる
│   ├─ 増す
│   └─ 高まる
│
├─ 範囲・規模が大きくなる
│   ├─ 広がる
│   ├─ 拡大する
│   └─ expand
│
├─ 繁殖して数が多くなる
│   ├─ 殖える
│   ├─ 増殖する
│   └─ multiply
│
└─ 急激に大きくなる
    ├─ 急増する
    ├─ 急上昇する
    ├─ surge
    └─ soar

こうして見ると、increase、rise、grow、expandなどは、ばらばらの類義語ではない。

すべて「以前より大きくなる」という大きな概念世界に属しながら、何が、どの方向へ、どのように大きくなるのかをそれぞれ違う角度から表している。

まとめ|「何がどのように増えるのか」を考える

「増える」は非常に広い日本語である。

そのため、英語を考える前に、日本語の「増える」の中身を分解してみることが重要である。

注目する変化日本語英語の代表例
数・量増える・増加するincrease
数値・水準上がるrise
成長伸びるgrow
程度増す・高まるincrease / grow
範囲・規模広がる・拡大するexpand
繁殖殖える・増殖するmultiply
急激な増加急増するsurge
蓄積積み重なるaccumulate

「増える=increase」とだけ覚えると、riseやgrowとの違いが分かりにくくなる。

しかし、

量が増えるのか。
数値が上がるのか。
成長して伸びるのか。
範囲が広がるのか。
繁殖して数が増えるのか。

と考えれば、英語の使い分けも見えてくる。

日本語から概念を分け、その概念から英語を見る。「増える」という一つの言葉の奥には、increase、rise、grow、expand、multiplyなどへとつながる大きな言葉の世界が広がっている。

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