「建物」を表す言葉|家・建築物・施設からbuilding・house・structureまで

「建物」を表す言葉

「建物」は、日常生活で非常によく使われる言葉である。

「大きな建物がある」
「古い建物を壊す」
「この建物は病院である」
「歴史的な建物を保存する」

このように、人が造った屋根や壁のあるものを広く「建物」と呼ぶことができる。

しかし、その周辺には「家」「住宅」「建築物」「施設」「構造物」「ビル」など多くの言葉がある。

家は人が暮らす場所である。施設は何らかの目的のために設けられた場所である。構造物まで広げれば、橋や塔など「建物」とは呼びにくいものまで含まれてくる。

英語でも同じである。

building が「建物」の中心的な語になるが、house、home、structure、facility などは、それぞれ異なる視点から「建物」の世界を切り分けている。

つまり、

建物=building

と覚えるだけでは、この概念世界全体は見えてこない。

そもそも「建物」とは何なのか。「家」「建築物」「施設」「構造物」とは何が違うのか。

まず日本語から整理してみよう。

「建物」と「建築物」|日常語か、建築という視点から見た言葉か

「建物」には、「見る・観る」のような一般的な漢字表記の使い分けはない。

その代わり、非常に近い言葉として「建築物」がある。

表現中心となる概念使用例
建物人が建てた、屋根や壁などを持つものを広く指す日常語駅前に大きな建物がある
建築物建築によって造られたものとしてとらえる歴史的な建築物を保存する
建造物人が造った比較的大きなものを広くとらえる歴史的建造物
構造物一定の構造を持って人工的に造られたもの橋やダムなどの構造物

日常会話なら「この建物は古い」が自然である。

一方、「歴史的建築物」「歴史的建造物」のように、建築・文化財・技術などの視点が加わると別の言葉が使われる。

さらに「構造物」まで広げると、橋・トンネル・ダムなども含められる。

つまり「建物」の世界には、どこまで人工物を広く含めるのかという境界がある。

「建物」に関係する日本語

「建物」の周辺にある日本語を整理すると、次のようになる。

日本語どのような「建物」なのか
建物人が建てたものを指す一般的な言葉
建築物建築によって造られたもの
建造物人が造った比較的大きなもの
構造物一定の構造を持つ人工物
家人が住むための建物、または生活の場
住宅人が居住するための建物
住居人が生活する場所
ビル一般に中高層の建物
高層ビル高さのある大型のビル
施設特定の目的・機能のために設けられた場所や設備
店舗商品販売やサービス提供に使う建物・区画
校舎学校で授業などに使う建物
庁舎官公庁が使用する建物
工場製品などを生産するための施設・建物
倉庫物を保管するための建物
小屋小規模で簡素な建物
塔高くそびえる細長い建造物
屋敷大きな住宅やその敷地
建築建物を設計・建設すること、または建築物を作品としてとらえる概念

「建物」は形から見た言葉だが、「住宅」「学校」「工場」などになると何に使うのかという機能が加わる。

ここが「建物」の概念を整理する重要なポイントである。

「建物」の概念はどこへ枝分かれするのか

「建物」を中心にすると、いくつかの方向へ概念を分けることができる。

概念の軸日本語中心となる違い
一般性建物・建築物日常的に物として見るか、建築として見るか
人工物の範囲建物・建造物・構造物どこまで広い人工物を含めるか
居住建物・家・住宅・住居人が暮らすことを中心に見るか
機能建物・施設形を見るか、目的・機能を見るか
規模小屋・建物・ビル・高層ビル大きさや形態による違い
用途住宅・店舗・校舎・工場・倉庫何のために使うか
作品性建物・建築物体として見るか、設計・文化・様式まで見るか

つまり、一つの建造物を見ても、どの視点から見るかによって呼び方が変わる。

同じものを「建物」と呼ぶことも、「家」と呼ぶことも、「住宅」と呼ぶこともあり得るのである。

「建物」と「家」|人工物として見るか、暮らす場所として見るか

「建物」は用途を限定しない。

家も学校も病院も工場も建物である。

一方、「家」は基本的に人が暮らす場所という意味を持つ。

「駅の前に大きな建物がある」

と言えば、その用途はわからない。

「駅の前に大きな家がある」

と言えば、人が住む場所だと考えるのが普通である。

したがって、

建物
→ 人が建てた物として見る

家
→ 人が暮らす場所として見る

という違いがある。

さらに「家」は、「早く家に帰りたい」のように、建物そのものではなく自分が生活する場所を意味することもある。

この違いが英語の building、house、home の違いにつながる。

「家」と「住宅」|生活の場か、居住用の建物か

「家」と「住宅」も完全には同じではない。

「家」は日常的であり、生活との結びつきが強い。

「住宅」は、人が住む用途に使われる建物という客観的な分類に近い。

たとえば、

「家に帰る」
「新しい家を買う」

は自然である。

一方、

「住宅地」
「集合住宅」
「住宅を供給する」

のように、不動産・行政・建築などの文脈では「住宅」が使われやすい。

家
→ 暮らしとのつながりが強い

住宅
→ 居住用建物という種類・用途を表す

という違いである。

「建物」と「建築物」|物として見るか、建築として見るか

「建築物」は「建物」と非常に近い。

しかし、日常会話では普通「建物」のほうが使いやすい。

「向こうに変わった建物がある」

は自然である。

「向こうに変わった建築物がある」

と言うと、少し専門的・説明的に聞こえる。

「建築物」は、設計・建築・法律・文化財など、建築されたものとして対象を見るときに使われやすい。

そのため、「歴史的建築物」「建築物の耐震性」のような表現では自然である。

「建物」と「建造物」|建物だけか、より広い人工物か

「建造物」は「建物」より広い概念として使われることがある。

たとえば、塔・橋・巨大な記念物などは「建造物」と呼びやすい。

「世界最大級の建造物」
「歴史的建造物」

などである。

「建物」は人が内部を利用する空間を持つものをイメージしやすいが、「建造物」は人間によって造られた大きな人工物という側面が強い。

したがって、すべての建造物が日常的な意味での「建物」とは限らない。

「建物」と「構造物」|人が使う空間か、構造を持つ人工物か

「構造物」はさらに広い。

橋、ダム、トンネル、塔なども構造物である。

ここでは「中に人が入って利用するか」よりも、一定の構造を持って造られていることが重要になる。

たとえば、橋を「建物」と呼ぶのは普通ではない。

しかし「構造物」なら自然である。

建物
→ 人が利用する内部空間を持つ人工物をイメージしやすい

構造物
→ 構造を持つ人工物を広くとらえる

という違いである。

英語の building と structure を考えるときにも、この違いが重要になる。

「建物」と「施設」|形を見るか、機能を見るか

「施設」は建物と非常に重なりやすい言葉である。

「スポーツ施設」
「医療施設」
「福祉施設」
「商業施設」

などと使う。

しかし、「施設」の中心にあるのは建物の形ではない。

何らかの目的のために設けられていることである。

たとえば、一つの商業施設に複数の建物・駐車場・設備などが含まれることもある。

したがって、

建物
→ 物理的な建築物として見る

施設
→ 目的や機能を持つ場所・設備として見る

という違いがある。

同じ病院でも、「この建物は古い」と言えば物理的な建物を見ている。「この医療施設では高度な治療を行っている」と言えば機能に注目している。

「建物」と「ビル」|広い概念か、特定の形態の建物か

日本語の「ビル」は英語の building に由来するが、日本語では意味が狭くなっている。

「建物」は一戸建て住宅や小屋にも使える。

一方、日本語で「ビル」と言えば、一般に鉄筋コンクリートなどで造られた中高層の建物をイメージしやすい。

「3階建てのオフィスビル」
「駅前の高層ビル」

などである。

したがって、

建物
→ 大小・用途を問わない広い概念

ビル
→ 都市部などにある比較的大きな多層の建物

という関係になる。

ここで注意したいのが、英語の building は日本語の「ビル」よりはるかに広いということである。

「建物」と「小屋」|一般的な建物か、小さく簡素な建物か

「小屋」は、規模や造りから建物を分類する言葉である。

「山小屋」
「物置小屋」
「犬小屋」

などと使う。

人が住むこともあるが、一般的な「家」より小さく、簡素なものをイメージしやすい。

つまり、

建物
→ 規模を限定しない

小屋
→ 小さく簡素な建物

という関係になる。

英語では用途や形によって hut、shed、cabin など、さらに細かく分かれる。

「建物」と「建築」|物そのものか、設計・文化まで含む概念か

「建築」は少し特殊である。

「建築する」と言えば建物を造る行為である。

一方、

「日本の伝統建築」
「近代建築が好きだ」

と言えば、単なる一個の建物ではなく、設計・様式・技術・文化を含めた建築の世界を表している。

「この建物は美しい」は、その物を見ている。

「この建築は美しい」と言えば、設計や空間構成まで含めて評価しているように聞こえる。

英語でも、この方向では building だけでなく architecture という別の概念が現れる。

ここまでの日本語を概念で整理すると

日本語の「建物」の周辺をまとめると、次のようになる。

概念日本語表現
人が建てたものを広く指す建物
建築されたものとして見る建築物
大きな人工物として見る建造物
構造を持つ人工物として見る構造物
人が暮らす場所家・住居
居住用の建物として分類する住宅
目的・機能を中心に見る施設
中高層の建物ビル・高層ビル
小さく簡素な建物小屋
用途から分類する店舗・校舎・工場・倉庫など
設計・様式・文化まで含めて見る建築

ここで見えてくるのは、建物を形・用途・規模・構造・生活・機能・建築的価値のどこから見るかによって言葉が変わるということである。

では、この概念世界を英語ではどのように表すのだろうか。

英語では「建物」をどう表すのか?

「建物」に最も広く使える英語は building である。

しかし、日本語側で整理した概念を英語へ広げると、house、home、structure、facility、architecture などが現れる。

日本語のイメージ英語コアイメージ
建物building人が建てた、内部空間を持つ建物
家・一戸建て住宅house人が住むための建物
自分が暮らす家home自分の生活・帰属の場所
構造物・建造物structure構造を持って造られたもの
施設facility特定の目的・機能のための場所や設備
建築architecture建物の設計・様式・建築という分野

これは「建物=building」「家=house」「施設=facility」という完全な一対一対応ではない。

同じ場所でも、物理的な建物を見ているのか、住む場所として見ているのか、機能を見ているのかによって英語が変わる。

building|人が建てた「建物」

building は「建物」を表す中心的な英語である。

コアイメージは、人が建てた、屋根や壁を持ち、人が内部を利用できるものである。

This is the oldest building in the town.
これは町で最も古い建物である。

There are many tall buildings in the city.
その都市には高い建物がたくさんある。

学校、病院、家、オフィスなども、物理的な建物として見れば building と呼ぶことができる。

ここで日本語話者が注意したいのが「ビル」との違いである。

英語の building は、日本語の「ビル」のように中高層建築に限定されない。

小さな建物でも building である。

house|人が住むための建物

house の中心にあるのは、人が住むための建物そのものである。

They bought a new house.
彼らは新しい家を買った。

That house has a large garden.
あの家には大きな庭がある。

building と比較すると違いがわかりやすい。

building
→ 何に使うかを限定せず、建物として見る

house
→ 人が住む建物として見る

したがって、学校や工場は building ではあるが、普通 house とは呼ばない。

一方、一戸建て住宅も物理的な建造物として見れば building の一種である。

home|建物よりも「自分が暮らす場所」

home は「家」と訳されるが、house とは概念が異なる。

house が建物そのものを表しやすいのに対し、home は自分が暮らし、帰っていく場所という意味を持つ。

I went home after work.
仕事のあと家に帰った。

This house became our home.
この家が私たちの生活の場所になった。

後者を見ると違いがよくわかる。

house は物理的な建物である。

home は、その場所と人との関係を表している。

そのため、アパートの一室でも home になり得るし、home が必ずしも一戸建ての建物を意味するわけではない。

structure|構造を持って造られたもの

structure は building より広い概念を表すことができる。

コアイメージは、複数の部分が組み合わされて一定の構造を作っているものである。

The bridge is a huge steel structure.
その橋は巨大な鋼鉄製の構造物である。

This structure was built hundreds of years ago.
この建造物は数百年前に造られた。

橋・塔・記念物などは structure と呼べるが、必ずしも building ではない。

つまり、

building
→ 人が内部を利用する「建物」

structure
→ 構造を持って造られたもの

という違いがある。

「建物」と「構造物」の関係にかなり近いが、英語と日本語の範囲が完全に一致するわけではない。

facility|目的・機能のために設けられた場所

facility は建物の形ではなく、何らかの目的を果たすために設けられた場所・設備という視点を持つ。

The town has a new sports facility.
その町には新しいスポーツ施設がある。

The company built a new research facility.
その会社は新しい研究施設を建設した。

一つの facility が一つの建物とは限らない。

複数の建物や設備を含む場合もある。

したがって、

building
→ 物理的な建物

facility
→ そこで果たす機能

という違いで考えるとわかりやすい。

architecture|建物から設計・様式の世界へ

architecture は、個々の「建物」を単純に指す building とは異なる。

中心にあるのは、建物を設計すること、その様式・技術・建築という分野である。

I love traditional Japanese architecture.
私は日本の伝統建築が好きである。

The city is famous for its modern architecture.
その都市は近代的な建築で有名である。

「この建物」を指すなら普通は this building である。

一方、建物を「建築作品」「建築様式」という視点から見ると、architecture の世界へ入っていく。

建物の種類を表す英語|tower・skyscraper・hut・shed・cabin

「建物」という大きな概念から、形・規模・用途へ進むと英語はさらに細かく分かれる。

日本語のイメージ英語コアイメージ
塔tower高く細長く伸びる建造物
超高層ビルskyscraper非常に高い都市型建築
小屋hut小さく簡素な建物
物置小屋shed物・道具などを置く簡素な建物
山小屋・木造の小さな家cabin小さな簡素な家・小屋
倉庫warehouse商品・物資を保管する大型建物
工場factory製品を生産する建物・施設

ここでも、日本語と英語が完全に一対一で対応するわけではない。

たとえば日本語の「小屋」は非常に広いが、英語では「どのような小屋なのか」によって hut、shed、cabin などに分かれる。

「建物」という概念から、形・大きさ・用途へ進むほど、より具体的な単語が現れてくるのである。

「ビル」とbuildingは同じではない

日本語の「ビル」は英語の building から生まれた言葉である。

しかし、現在の意味は一致しない。

英語 building
├─ 家
├─ 学校
├─ 病院
├─ 店
├─ 工場
├─ オフィスビル
└─ その他さまざまな建物

英語ではこれらを広く building と呼べる。

一方、日本語の「ビル」は、

「駅前のビル」
「オフィスビル」
「10階建てのビル」

のように、中高層の比較的大きな建物をイメージすることが多い。

そのため、

building=ビル

とそのまま覚えると、英語の building の範囲を狭く理解してしまう。

building の基本はあくまで「建物」である。

「建物」の概念地図

「建物」の世界を、日本語から英語へつなげると次のようになる。

建物
│
├─ 人が建てた物として見る
│   ├─ 建物・建築物
│   └─ building
│
├─ 人が暮らす建物として見る
│   ├─ 家・住宅
│   └─ house
│
├─ 自分が暮らす場所として見る
│   ├─ 家・住まい
│   └─ home
│
├─ 人工的な構造として見る
│   ├─ 構造物・建造物
│   └─ structure
│
├─ 目的・機能から見る
│   ├─ 施設
│   └─ facility
│
├─ 設計・様式・文化から見る
│   ├─ 建築
│   └─ architecture
│
└─ 形・規模・用途から細かく分ける
    ├─ 塔 → tower
    ├─ 超高層ビル → skyscraper
    ├─ 小屋 → hut / shed / cabin
    ├─ 倉庫 → warehouse
    └─ 工場 → factory

ここで重要なのは、一つの物が必ず一つのカテゴリーにしか入らないわけではないことである。

たとえば、一軒の住宅は「建物」であり、「家」であり、「住宅」でもある。

英語でも、それを物理的な建造物として見れば building、居住用の建物として見れば house、自分が暮らす場所として見れば home になり得る。

つまり、物そのものが変わるのではない。

どの側面に注目するかによって言葉が変わるのである。

まとめ|「どのような建物として見るのか」を考える

「建物」は、単純に building と対応させるだけでは見えてこない広い概念である。

その周辺には、「家」「住宅」「建築物」「建造物」「構造物」「施設」「ビル」「小屋」「建築」などがある。

日本語の概念代表的な英語コアイメージ
一般的な建物building人が建てた建物
居住用の家house人が住む建物
自分が暮らす家home自分の生活・帰属の場所
構造物・建造物structure構造を持って造られたもの
施設facility目的・機能のための場所・設備
建築architecture設計・様式・建築の世界
塔tower高く伸びる建造物
超高層ビルskyscraper非常に高い都市型建築
小屋hut / shed / cabin用途や形によって異なる小さな建物

大切なのは、「建物=building」だけで終わらせないことである。

「単なる建物として見ているのか」
「人が住む場所として見ているのか」
「自分が帰る生活の場所なのか」
「構造を持つ人工物として見ているのか」
「何らかの機能を持つ施設なのか」
「設計や様式を含む建築として見ているのか」

という違いを見る。

すると、building、house、home、structure、facility、architecture が、ばらばらの単語ではなくなる。

同じ人工物をどの視点から切り取っているのかを考えることで、「建物」という一つの概念世界の中に英語を位置づけて理解できるようになる。

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