「する」を表す言葉|行う・実行する・作るからdo・make・performまで

「する」を表す言葉

「する」は、日本語の中でも特に意味の広い言葉である。

「仕事をする」「勉強をする」「料理をする」「決定をする」「運動をする」「準備をする」のように、非常に多くの行為を「する」の一語で表せる。

さらに、「静かにする」「医者にする」「赤くする」のように、何かを行うというより状態を変える意味でも使われる。

ところが英語では、日本語の「する」にそのまま対応する万能の動詞はない。

do、make、perform、carry out、conductなど、その「する」が何を意味しているかによって表現が分かれる。

つまり大切なのは、

「する=do」と覚えることではなく、そもそも何を『する』のかを考えること

である。

では、日本語の「する」は、どのような概念を一つの言葉の中にまとめているのだろうか。

「する」に関係する日本語

「する」には、「行為をする」という中心的な意味がある。しかし、その周辺には「行う」「実行する」「作る」「取り組む」「実施する」など、より具体的な言葉が広がっている。

日本語どのような「する」なのか
する行為・活動を広く表す
やる「する」に近い口語的な表現
行うある行為を実際にする
実行する決めたこと・計画したことを実際にする
実施する計画された活動などを実際に行う
遂行する任務などを最後まで行う
取り組む課題などに向き合って行う
作業する具体的な作業をする
活動する継続的な活動をする
作る何かを生み出す
処理する問題・仕事などに対応する
対処する問題や状況に対応する
運営する組織・事業などを動かす
実践する考え・知識などを実際の行動に移す
演じる役などを実際に表現する

こうして見ると、「する」の世界は単なる「行動」だけではない。

行為・実行・達成・創造・活動・処理・変化などへ枝分かれしている。

「する」の概念はどこへ枝分かれするのか

「する」に近い日本語を概念で整理すると、次のようになる。

違いの軸日本語表現中心となる考え方
一般的な行為する・やる何らかの行為をする
改まった行為行う行為を実際に行う
計画→行動実行する決めたことを行動に移す
計画→実施実施する予定されたものを行う
任務→完了遂行する責任をもって最後まで行う
課題への働きかけ取り組む対象に向き合って行動する
結果を生む作る行動によって何かを生み出す
問題への対応処理する・対処する問題に働きかける
状態の変化~にするある状態へ変える

重要なのは、「する」自体がかなり抽象的な言葉だという点である。

たとえば、

  • 宿題をする
  • 計画を実行する
  • 調査を行う
  • 商品を作る
  • 問題に対処する

は、すべて大きく見れば「何かをする」である。

しかし、何をしているのかを具体化すると概念が分かれていく。

「する」と「やる」|広い「する」と口語的な「やる」

「する」と「やる」は非常に近い。

「宿題をする」と「宿題をやる」、「仕事をする」と「仕事をやる」のように、どちらも使える場面が多い。

ただし、「する」は中立的で幅広く、「やる」は話し言葉で使われやすい。

  • 宿題をする。
  • 宿題をやる。
  • サッカーをする。
  • サッカーをやる。

一方、「会議を実施する」を「会議をやる」と言えば、意味は通じてもかなり口語的になる。

「する」が広い基本語で、「やる」はその一部を日常的・口語的に表していると考えると分かりやすい。

「する」と「行う」|日常的な行為か、意識された行為か

「行う」は「する」よりも改まった表現である。

「運動する」は日常的だが、「検査を行う」「調査を行う」「会議を行う」のような表現では、あるまとまりを持った行為を実施する感覚が強い。

  • 明日、検査を行う。
  • 全国で調査を行った。
  • 会議をオンラインで行う。

「する」は行為全般を広く覆うのに対し、「行う」は一つの行為・活動として実際に実施することに焦点がある。

「する」と「実行する」|行為そのものか、決めたことを行動に移すか

「実行する」には、行動の前に「計画・命令・決定・考え」などが存在することが多い。

つまり、

考える・決める → 実際にする

という流れを含んでいる。

  • 計画を実行する。
  • 作戦を実行する。
  • 決めたことを実行する。

単に何かをしているのではなく、頭の中や計画上にあったものを現実の行動へ移すのが「実行する」である。

「する」と「実施する」|決めた活動を実際に行う

「実施する」も「実行する」に近いが、イベント、制度、調査、試験など、あらかじめ予定・計画されたものを実際に行う場面で使いやすい。

  • アンケートを実施する。
  • 試験を実施する。
  • キャンペーンを実施する。

「計画を実行する」とは言いやすいが、「計画を実施する」は、その計画の内容そのものを実際に行うという意味になる。

「実行」は決定から行動へ移すこと、「実施」は予定された活動を現実に行うことという違いが見える。

「する」と「遂行する」|行うだけでなく最後まで果たす

「遂行する」は「する」よりも、完了や責任に重点がある。

  • 任務を遂行する。
  • 職務を遂行する。
  • 計画を最後まで遂行する。

単に行動を開始するだけではない。

与えられた仕事や任務を進め、果たすところまで持っていく

という概念である。

そのため、日常的な「宿題をする」を「宿題を遂行する」とすると大げさに聞こえる。

「する」と「取り組む」|対象に向き合って行動する

「取り組む」は、何かを単に行うのではなく、課題や問題などに向き合う感覚を持つ。

  • 問題に取り組む。
  • 環境問題に取り組む。
  • 新しい研究に取り組む。

「問題をする」と「問題に取り組む」では意味が違う。

後者には、対象に意識を向け、解決や達成を目指して働きかけるという方向性がある。

「する」と「作る」|行為そのものか、結果を生み出すか

「する」と「作る」は一見別の言葉だが、英語を考えると非常に重要な違いである。

「する」は行為に焦点を当てる。

「作る」は、その行為によって何かが生まれることに焦点を当てる。

  • 料理をする。
  • 料理を作る。

日本語でも両方が使えるが、視点が違う。

「料理をする」は料理という活動を表し、「料理を作る」は完成する食べ物に意識が向きやすい。

この違いが、英語の do と make を理解する重要な入口になる。

「~する」と「~にする」|行動から変化へ

日本語の「する」は、行為だけでなく状態の変化にも使われる。

  • 部屋をきれいにする。
  • 音を小さくする。
  • 彼をリーダーにする。
  • 髪を短くする。

ここでの「する」は、「行為をする」というより、

AをBという状態に変える

という概念である。

日本語では同じ「する」だが、英語では make、keep、set、turnなど、結果となる状態によって表現が分かれる。

ここまでの日本語を概念で整理すると

概念日本語表現
広い行為する
口語的な行為やる
まとまった行為を行う行う
決定を行動に移す実行する
予定された活動を行う実施する
最後まで果たす遂行する
課題に向き合う取り組む
結果を生み出す作る
問題に対応する処理する・対処する
状態を変える~にする

「する」はこれらを広く包む上位的な言葉だと考えられる。

だからこそ、英語にするときには「する」を直接訳すのではなく、その中に隠れている具体的な概念を取り出す必要がある。

英語では「する」をどう表すのか?

英語には、日本語の「する」のすべてを一語で担当する動詞はない。

代表的な表現を整理すると次のようになる。

日本語のイメージ英語コアイメージ
行為・仕事をするdo行為を行う
作る・結果を生むmake何かを生み出す
行為・演技などを行うperform一定の行為を実際に行う
計画などを実行するcarry out決められたものを実行に移す
調査・実験などを行うconduct組織立てて進める
課題などに取り組むwork on対象に働きかける
状態を~にするmakeある状態を生じさせる

これは「する=do」「行う=perform」のような一対一対応表ではない。

たとえば日本語の「調査をする」でも、文脈によって do a survey、conduct a survey、carry out a surveyなどが考えられる。

英語では、どのような行為として「する」のかが表現の選択に強く関わる。

do|行為を行う

doのコアイメージは「行為・仕事・活動を行う」ことである。

何かを生み出す結果より、「行うこと」そのものに焦点がある。

  • I do my homework after dinner.
    私は夕食後に宿題をする。
  • She does yoga every morning.
    彼女は毎朝ヨガをする。
  • We have a lot of work to do.
    私たちにはするべき仕事がたくさんある。

日本語では「する」「やる」「行う」などと訳される。

doは「する」に最も近く見えるが、万能ではない。

たとえば「ケーキを作る」は通常 do a cake ではなく make a cake である。

ここに「行為」と「結果」の違いが現れる。

make|何かを生み出す・ある状態にする

makeのコアイメージは「働きかけによって何かを生じさせる」ことである。

そのため、「作る」だけではなく、日本語の「~にする」にも広く使われる。

  • She made a cake.
    彼女はケーキを作った。
  • This news made me happy.
    この知らせは私をうれしくした。
  • Please make the room quiet.
    部屋を静かにしてください。

doが「何をするか」という行為側に寄りやすいのに対し、makeはその行為によって何が生まれるか・どう変わるかに焦点がある。

日本語の「する」の中に「結果を生み出す」という概念が含まれていれば、makeが見えてくる。

perform|決まった行為を実際に行う

performは、一定の形を持った行為を実際に行うことを表す。

日本語では「行う」「実施する」「演じる」「遂行する」など、文脈によって訳が変わる。

  • The doctor performed the operation.
    医師はその手術を行った。
  • The students performed the experiment.
    生徒たちはその実験を行った。
  • She performed on stage.
    彼女は舞台で演じた。

単なる日常的な「する」よりも、何らかのまとまりを持った行為を実際に行う感覚が強い。

そのため、日常的な「宿題をする」ならdoのほうが自然である。

carry out|計画・指示などを実行する

carry outは、計画・命令・調査・実験など、あらかじめ決められたものを実際の行動に移すときに使われる。

  • We carried out the plan.
    私たちはその計画を実行した。
  • They carried out an experiment.
    彼らは実験を行った。
  • The team carried out the instructions carefully.
    チームは指示を注意深く実行した。

日本語の「実行する」「実施する」に近い領域である。

重要なのは、「する」という行為そのものよりも、すでに存在する計画や指示を現実の行動として実現する点である。

conduct|組織立てて行う

conductは、調査・研究・実験・面接などを、ある程度組織立てて進める場面で使われる。

  • We conducted a survey.
    私たちは調査を行った。
  • The researchers conducted an experiment.
    研究者たちは実験を行った。
  • She conducted several interviews.
    彼女はいくつかの面接を行った。

単なる「する」ではなく、一定の方法や手順に沿って進める感覚がある。

そのため、日常的な活動より、調査・研究・業務などとの相性がよい。

「する」から広がる英語表現

「する」の周辺には、doやmake以外にも多くの表現がある。

ただし、単語をばらばらに暗記する必要はない。「どのような『する』なのか」で整理すると分かりやすい。

「する」の具体的な概念英語表現例
行為をするdodo homework
何かを生み出すmakemake a cake
行為を実施するperformperform an operation
計画を実行するcarry outcarry out a plan
調査などを行うconductconduct research
課題に取り組むwork onwork on a problem
問題を処理するdeal withdeal with a problem
課題を引き受けるundertakeundertake a task
活動を続けるengage inengage in research
状態を変えるmakemake it easier

特に日本語では「名詞+する」が非常に自由に作れる。

「勉強する」「運動する」「研究する」「説明する」「確認する」のような形である。

しかし英語では、それぞれが必ずdoになるわけではない。

  • study:勉強する
  • exercise:運動する
  • research / conduct research:研究する
  • explain:説明する
  • check / confirm:確認する

つまり日本語では「○○+する」と考える場面でも、英語ではその行為そのものを表す動詞が使われることが多いのである。

「する」の概念地図

「する」の世界を大きく描くと、次のようになる。

する
│
├─ 行為・活動をする
│   ├─ する・やる
│   └─ do
│
├─ まとまった行為を行う
│   ├─ 行う
│   └─ perform
│
├─ 決めたことを現実にする
│   ├─ 実行する・実施する
│   └─ carry out
│
├─ 組織立てて行う
│   ├─ 調査する・実験する
│   └─ conduct
│
├─ 対象に働きかける
│   ├─ 取り組む
│   └─ work on
│
├─ 結果を生み出す
│   ├─ 作る
│   └─ make
│
└─ 状態を変える
    ├─ ~にする
    └─ make など

さらに、「勉強する→study」「説明する→explain」のように、「する」を使わず一つの動詞として表現する方向にも広がっている。

日本語の「する」を中心に置いて考えると、do、make、perform、carry out、conductなどは、ばらばらの単語ではない。

「する」という広い概念を、英語が異なる視点から切り分けたものとして理解できる。

まとめ|「何をどのようにするのか」を考える

概念日本語主な英語表現
一般的な行為する・やるdo
結果を生み出す作るmake
一定の行為を行う行うperform
計画を行動に移す実行するcarry out
計画された活動を行う実施するcarry out / conduct
組織立てて行う調査する・研究するconduct
課題に向き合う取り組むwork on
状態を変える~にするmake など

「する」は、日本語では非常に便利な言葉である。その便利さゆえに、英語にするとき「する=do」と考えてしまいやすい。

しかし、本当に見るべきなのは「する」という表面の言葉ではない。

行為をしているのか。
何かを作っているのか。
計画を実行しているのか。
決められた活動を行っているのか。
何かを別の状態に変えているのか。

このように「どのような『する』なのか」を考えると、日本語の中に隠れていた概念が見えてくる。

そして、その概念を英語がどのように切り分けているのかを見ることで、do、make、perform、carry out、conductなどの違いも一つの世界として理解できる。

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