「許す」を表す言葉|認める・大目に見る・見逃すからforgive・allow・excuseまで

「許す」を表す言葉

「許す」は、日常で非常によく使われる言葉である。

「友達の失敗を許す」
「子どもが遊びに行くのを許す」
「今回だけは許してあげる」
「そんな行為は許されない」

どれも「許す」だが、実は同じことをしているわけではない。

相手への怒りを手放すことも「許す」であり、何かをすることを認めることも「許す」である。小さな失敗を大目に見ることや、規則違反を見逃すことまで「許す」の周辺に入ってくる。

英語でも、この広い「許す」を一つの単語では表さない。

forgive、allow、permit、excuse、pardon など、何を、どのような意味で許すのかによって言葉が変わる。

では、そもそも「許す」とはどのような概念なのだろうか。

日本語の「許す」の世界から整理してみよう。

「許す」と「赦す」|同じ「ゆるす」でも何が違う?

「ゆるす」には「許す」のほかに「赦す」という表記がある。

現代の日常文では「許す」が広く使われ、「赦す」は限られた文脈で使われる。

表記中心となる概念使用例
許す認める・許可する・責めないなど広い外出を許す、失敗を許す
赦す罪や過ちに対する責め・罰を解く罪を赦す

「許す」は非常に広い。

一方、「赦す」は「罪を赦す」「神が人を赦す」のように、罪や過ちに対する責めを解く意味を強く表す。

ただし、一般的な文章では「過ちを許す」と書いても自然である。

そのため「赦す」は「許す」と完全に別の言葉というより、「許す」の中の『罪・過ちを責めない』という意味を漢字によって明確にした表記と考えると分かりやすい。

「許す」に関係する日本語表現

まず英語を考えず、日本語の中にある「許す」の世界を見てみよう。

日本語どのような「許す」なのか
許す責めない・認める・許可するなどを広く表す
赦す罪や過ちへの責め・罰を解く
許可する行為をしてよいと正式に認める
認める行為・存在・状態などを受け入れる
容認する問題などがあっても認める
承認する正式に正しい・有効であると認める
大目に見る問題を厳しく追及しない
見逃す問題に気づいても処罰・追及しない
勘弁する責めたり要求したりすることをやめる
許容する一定の範囲まで受け入れる
免除する義務や負担を負わなくてよいとする
恩赦する罪に対する刑罰を国家などが軽減・免除する
水に流す過去の問題をこれ以上問題にしない
受け入れる相手や状況を否定せず受容する

この一覧を見ると、「許す」には大きく二つの方向があることが分かる。

過去に起きたことを許す

そして、

これからすることを許す

である。

この違いは、英語を理解するときにも非常に重要になる。

「許す」の世界はどのように分かれるのか

時間の方向|過去を許す / これからすることを許す

「許す」の最も重要な分岐の一つである。

彼の失敗を許した。

これは、すでに起きたことへの責めをやめている。

一方、

子どもが一人で出かけることを許した。

こちらは、これから行うことを認めている。

つまり、

過去の過ち → 責めない

これからの行為 → してよいと認める

という違いがある。

日本語ではどちらも「許す」だが、英語ではこの違いが forgive と allow などの違いにつながっていく。

責任への態度|許す / 大目に見る / 見逃す

悪いことが起きたあとにも、対応には段階がある。

「許す」は相手を責め続けないことである。

「大目に見る」は、問題があることを認識しながら厳しく扱わないことである。

「見逃す」は、問題を追及せず、そのまま通す方向が強い。

つまり、

相手そのものを許すのか

問題を軽く扱うのか

問題を追及しないのか

という違いがある。

許可の強さ|許す / 許可する / 承認する

「これをしてもいいよ」という意味の「許す」も一つではない。

日常的に認めるなら「許す」。

明確に「してよい」とするなら「許可する」。

組織などが正式に認めるなら「承認する」。

たとえば、

母が外出を許した。

と、

市が計画を承認した。

では、「認める」という共通点はあっても、その社会的・制度的な意味は異なる。

受け入れられる範囲|許す / 容認する / 許容する

「許す」には、「完全に賛成ではないが受け入れる」という方向もある。

「容認する」は、問題や異論があっても認めること。

「許容する」は、ある範囲内なら受け入れることを表しやすい。

ここでは感情的な「許し」よりも、

どこまで受け入れられるか

という範囲が重要になる。

罪や罰|許す / 赦す / 恩赦する

罪や過ちを「許す」場合には、さらに別の方向がある。

個人的に責めることをやめる。

罪そのものを赦す。

法的・制度的に刑罰を免除する。

同じ「許す」の世界でも、感情的な許しから制度的な免責まで広がっているのである。

「許す」と「赦す」|許可するのか、罪を責めないのか

「許す」は広い言葉である。

父は私が旅行に行くことを許した。

ここでは「してよいと認める」という意味である。

一方、

彼の過ちを赦した。

では、すでに起きた過ちに対する責めを解いている。

「赦す」には「許可する」という意味は基本的にない。

したがって、

許す → 許可から赦しまで広い

赦す → 罪・過ちへの責めを解く

という関係になる。

「許す」と「許可する」|広い言葉か、行為を認めることか

「許可する」は「許す」の中でも、

何かをしてよいと認める

ことに焦点を当てた言葉である。

親が外泊を許した。

先生が教室での使用を許可した。

「許す」は人間関係でも使えるが、「許可する」は行為や利用などを認める場面で使われやすい。

「失敗を許可する」とは通常言わない。

「許可する」は「これから何かをすることを認める」という方向に強く限定されている。

「許す」と「認める」|禁止しないことか、受け入れることか

「認める」は「許す」よりさらに広い言葉である。

彼の努力を認める。

自分の間違いを認める。

この場合、「許す」という意味はない。

しかし、

この施設では飲食が認められている。

なら、「飲食してよい」という許可に近づく。

「認める」の中心はあるものを受け入れることであり、その一部が「許す」と重なるのである。

「許す」と「容認する」|積極的に許すか、問題があっても受け入れるか

「容認する」は、単純な「許す」と少し違う。

そのような行為は容認できない。

という使い方が典型的である。

「容認する」には、

必ずしも望ましいとは思っていないが、存在や行為を認める

という感覚がある。

そのため「許す」よりも、評価・判断としての「受け入れる」に近い。

「許す」と「大目に見る」|責めないのか、軽く扱うのか

「大目に見る」は、相手に問題があったことを前提とする。

今回だけは大目に見よう。

問題がなかったことにしているわけではない。

本来なら責めたり罰したりできるが、厳しく扱わない

のである。

「許す」よりも「今回は特別に厳しくしない」というニュアンスが出やすい。

「許す」と「見逃す」|許したのか、追及しなかったのか

「見逃す」には複数の意味があるが、「許す」に近づくのは、

問題に気づいているが追及しない

という意味である。

今回の違反は見逃せない。

これは「見ることができなかった」という意味ではない。

「問題をそのまま通すことはできない」という意味である。

「許す」が相手との関係や感情にも使えるのに対し、「見逃す」は問題となる行為への対応に焦点がある。

「許す」と「勘弁する」|責めるのをやめる・負担から解放する

「勘弁する」は会話でよく使われる。

今回だけは勘弁してやる。

なら、「今回だけは責めない」という意味になる。

一方、

もう勘弁してくれ。

なら、「これ以上やらないでくれ」という意味になる。

つまり「勘弁する」は単純な「許す」だけではなく、

相手への追及・要求・負担などをやめる

という方向を持つ。

「許す」と「水に流す」|過去を終わったことにする

「水に流す」は、

過去の問題をこれ以上持ち出さない

という表現である。

昔のことは水に流そう。

「許す」が心の中の態度まで含み得るのに対し、「水に流す」は「この問題をここで終わりにする」という関係上の処理に焦点がある。

ここまでの日本語を概念で整理すると

概念日本語表現
広い意味で責めない・認める許す
罪や過ちへの責めを解く赦す
行為をしてよいとする許可する
受け入れる認める
問題があっても認める容認する
一定範囲まで受け入れる許容する
正式に認める承認する
厳しく責めない大目に見る
問題を追及しない見逃す
責め・要求をやめる勘弁する
義務を負わせない免除する
過去の問題を終わらせる水に流す
刑罰を免除・軽減する恩赦する

日本語の「許す」は、大きくまとめると、

責めない

してよいと認める

問題があっても受け入れる

罰・義務などを解く

という方向へ枝分かれしている。

この違いを理解すると、英語の forgive、allow、permit、excuse、pardon などがなぜ別の単語なのかも見えてくる。

では、英語では「許す」をどう表すのか?

代表的な表現を、日本語側で整理した概念とつなげてみよう。

日本語のイメージ英語コアイメージ
過ちを許すforgive相手への怒り・責めを手放す
行為を許すallowすることを認める
正式に許可するpermit規則・権限の上で認める
小さな失敗を許すexcuse責任・非礼などを大目に見る
罪・違反を赦すpardon罪や責任を赦免する
問題があっても認めるtolerate好ましくなくても許容する
義務から外すexempt義務・規則などの対象から除く

ここでも、

許す=forgive

ではない。

「何を許すのか」を先に考える必要がある。

すでに起きた過ちを許すのか。

これから行うことを許すのか。

小さな失敗を大目に見るのか。

好ましくないものを我慢して受け入れるのか。

その概念によって英語が変わるのである。

forgive|過ちへの怒りや責めを手放す

forgive のコアイメージは、

相手の過ちに対する怒りや責めを手放す

ことである。

I forgive you.
あなたを許す。

She forgave him for lying to her.
彼女は自分に嘘をついた彼を許した。

ここで重要なのは、forgive は基本的に「これから何かをしてよい」という許可ではないことである。

母は私が外出することを許した。

という「許す」なら、普通 forgive ではない。

forgive が向いているのは、すでに起きた過ち・失敗・罪などに対する許しである。

日本語では「許す」「赦す」「水に流す」などにつながる。

allow|何かをすることを認める

allow のコアイメージは、

何かが行われるのを妨げず、してよいとする

ことである。

My parents allowed me to go out.
両親は私が外出することを許してくれた。

This app allows you to share photos.
このアプリでは写真を共有できる。

allow は人が人に許可を与える場合だけではない。

規則・状況・機能などが「可能にする」という意味にも広がる。

forgive が「過去の過ちへの許し」なら、allow は「行為を認める」という方向である。

permit|規則や権限の上で許可する

permit も「許可する」だが、allow よりも正式な場面で使われやすい。

Smoking is not permitted here.
ここでは喫煙は許可されていない。

The rules permit students to use calculators.
規則では生徒が電卓を使用することが認められている。

allow が日常的な「してよい」まで広く使えるのに対し、permit は、

規則・制度・権限によって認める

という感覚が強い。

日本語では「許す」より「許可する」に近づくことが多い。

excuse|小さな過ちや非礼を大目に見る

excuse は、

過ち・非礼・責任などを厳しく追及しない

という方向を持つ。

Please excuse my mistake.
私の間違いをお許しください。

Excuse me.
失礼します。/すみません。

forgive と重なる部分もあるが、excuse は比較的小さな失敗や非礼、事情などを「大目に見る」という感覚につながりやすい。

そのため日本語の「許す」だけでなく、「勘弁する」「大目に見る」などにも近づく。

pardon|罪や違反を赦す

pardon は、

罪・違反などに対する責任や罰を赦す

方向を持つ。

The prisoner was pardoned.
その囚人は恩赦を受けた。

日常的な人間関係でも使われることはあるが、法的・公的な「赦免」という意味を持つのが特徴である。

そのため日本語の「赦す」「恩赦する」とつながりやすい。

「許す」の周辺にある英語

中心語から少し外側へ広げると、「許す」の世界がさらに見えてくる。

好ましくなくても受け入れる|tolerate

tolerate は、

好ましくないものを排除せず、耐えて受け入れる

という概念である。

I can’t tolerate that behavior.
そのような行動は許容できない。

これは「相手を許す」という forgive とは違う。

「許容できる範囲か」という判断に近いため、日本語の「容認する」「許容する」とつながる。

今回だけ大目に見る|let it go

問題をそれ以上追及しないなら let it go が使われることがある。

I’ll let it go this time.
今回は大目に見よう。

直訳的な一対一対応ではないが、「今回はこれ以上問題にしない」という日本語の感覚とつながっている。

見逃してやる|let someone off

罰や責任を軽くしたり、追及しなかったりする方向には let someone off がある。

The teacher let him off with a warning.
先生は注意だけで彼を許した。

ここでは「心から許した」というより、本来与えられるはずの罰を軽くすることが中心である。

義務を免除する|exempt

exempt は、

ある義務・規則・支払いなどの対象から外す

ことを表す。

Children under five are exempt from the fee.
5歳未満の子どもは料金が免除される。

これも広い意味では「負担しなくてよいとする」という「許す」の周辺世界に位置する。

「許す」の概念地図

「許す」という日本語から出発すると、概念は次のように枝分かれする。

許す
│
├─ 過去の過ちを責めない
│   ├─ 許す・赦す
│   ├─ forgive
│   └─ pardon
│
├─ これからすることを認める
│   ├─ 許す・許可する
│   ├─ allow
│   └─ permit
│
├─ 小さな問題を厳しく責めない
│   ├─ 大目に見る
│   ├─ 勘弁する
│   ├─ excuse
│   └─ let it go
│
├─ 問題を追及しない
│   ├─ 見逃す
│   └─ let someone off
│
├─ 好ましくなくても受け入れる
│   ├─ 容認する・許容する
│   └─ tolerate
│
└─ 罰・義務などを解く
    ├─ 恩赦する・免除する
    ├─ pardon
    └─ exempt

この地図で特に重要なのは、「許す」には時間の方向があるということである。

すでに起きたことを許すなら、

過ち → 責めない → forgive

という方向になる。

これからすることを許すなら、

行為 → してよいと認める → allow / permit

という方向になる。

さらに、

問題はある → 厳しく責めない → excuse

好ましくない → それでも受け入れる → tolerate

という枝もある。

日本語では一つの「許す」に集まっている概念を、英語では別々の視点から切り分けているのである。

まとめ|「何を、どのように許すのか」を考える

最後に「許す」の世界を整理しよう。

「許す」の方向日本語英語の代表例
過ちへの責めを手放す許す・赦すforgive
行為をしてよいと認める許す・許可するallow
正式に許可する許可するpermit
小さな過ちを大目に見る大目に見る・勘弁するexcuse
罪・罰を赦す赦す・恩赦するpardon
好ましくなくても受け入れる容認する・許容するtolerate
問題を追及しない見逃す・大目に見るlet it go / let someone off
義務から外す免除するexempt

「許す」を英語にするとき、最初から forgive を探す必要はない。

まず、

何を許しているのか

を考える。

相手の過去の過ちなのか。
これからする行為なのか。
小さな失敗なのか。
好ましくない行動なのか。
罪に対する罰なのか。
義務や負担なのか。

この違いが見えれば、

forgive、allow、permit、excuse、pardon、tolerate、exempt

が単なる「許すの類義語」ではなく、それぞれ異なる概念を担当していることが分かる。

日本語 → 概念 → 英語

という順番で考えることで、「許す」という一つの日本語から広がる英語の世界が見えてくるのである。

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