「だめ」を表す言葉|うまくいかない・失敗する・使えないからfail・not work・no goodまで

「だめ」を表す言葉

「だめ」は、日常会話で非常によく使われる日本語である。

「やってみたけど、だめだった」
「この方法ではだめだ」
「ここに入ってはだめ」
「この機械はもうだめだ」
「今日はどうしてもだめだ」

どれも同じ「だめ」である。しかし、表している内容はかなり違う。

あるときは「失敗した」という結果を表し、あるときは「機能しない」という状態を表す。また、「してはいけない」という禁止や、「もう見込みがない」という判断まで「だめ」で表現できる。

そのため、「だめ=bad」や「だめ=fail」と覚えるだけでは、多くの場面を説明できない。

英語では、fail、not work、no good、can’t、not allowed、useless、hopelessなど、何が「だめ」なのかによって表現が変わる。

では、そもそも「だめ」とはどのような概念なのだろうか。

日本語の「だめ」の世界から整理してみよう。

「だめ」と「駄目」|もともとは囲碁の言葉

「だめ」は漢字では「駄目」と書く。

現代ではひらがなの「だめ」も非常によく使われる。「ダメ」とカタカナで書けば、会話的で強調された印象になることもある。

表記中心となる使われ方使用例
だめ日常的で柔らかい表記今日はだめだ
ダメ強調・会話的な表記それはダメ!
駄目漢字表記努力しても駄目だった

「駄目」はもともと囲碁で、どちらの陣地にもならない場所を指す言葉である。そこから、役に立たない、価値がない、うまくいかないといった意味へ広がった。

ただし、現代の日常語として「だめ」を使うときに、この語源を意識しているわけではない。

重要なのは、現在の「だめ」が非常に広い意味を持つ言葉になっていることである。

「だめ」に関係する日本語

「だめ」の周辺には、何が望ましい状態から外れているのかによって、多くの表現が存在する。

日本語どのような「だめ」なのか
だめ望ましい状態ではないという広い判断
うまくいかない物事が期待したように進まない
失敗する目的を達成できない
失敗に終わる試みの結果が成功にならない
できない能力・条件・状況などにより実現できない
使えない道具・方法・人などが目的に役立たない
動かない機械などが機能しない
効かない薬・方法・対策などに期待した効果がない
通用しない方法・考え・能力などがその場では役立たない
無理実現することが難しい、または不可能である
よくない状態・行為などが好ましくない
悪い品質・状態・行為などの評価が低い
不適切その場や目的に合っていない
いけない好ましくない、または禁止されている
禁止されている規則によって許されていない
役に立たない必要な機能や価値を果たさない
見込みがない成功・回復などを期待しにくい
手遅れ対応するには時期が遅すぎる
おしまい継続・回復などが難しい状態

「だめ」が広いのは、これらのかなり異なる状況を一言でまとめられるからである。

「だめ」の概念はどこへ枝分かれするのか

「だめ」は「良くない状態」を漠然と表すだけではない。何が「だめ」なのかを考えると、いくつかの方向へ枝分かれする。

概念代表的な日本語
結果失敗する、うまくいかない
進行行き詰まる、順調に進まない
機能動かない、機能しない、使えない
効果効かない、効果がない
能力・可能性できない、無理
適切さよくない、不適切
許可いけない、禁止されている
有用性役に立たない、使い物にならない
見込み見込みがない、絶望的
時間手遅れ

この違いを意識すると、「だめ」に対応する英語が一つに決まらない理由が見えてくる。

「だめ」と「うまくいかない」|期待した結果にならない

「うまくいかない」は、「だめ」の中でも物事の進行や結果に焦点を当てた表現である。

「この方法ではだめだ」

という文は、

「この方法ではうまくいかない」
「この方法では目的を達成できない」

という意味になり得る。

一方、「だめ」には禁止や品質の悪さなども含まれる。

「ここに入ってはだめ」は自然だが、「ここに入るとうまくいかない」では意味が違う。

つまり、

だめ > うまくいかない

という関係で考えると分かりやすい。

「何度やってもうまくいかない」
「この方法ではうまくいかない」

などが自然な例である。

「だめ」と「失敗する」|状態か、結果か

「失敗する」は、何かに挑戦した結果、目的を達成できなかったことを表す。

「計画は失敗した」
「実験に失敗した」

のように使う。

一方、「だめ」は必ずしも「挑戦した結果」を表すわけではない。

「このパソコンはもうだめだ」

と言っても、パソコンが何かに「失敗した」わけではない。

「失敗する」は試みの結果に焦点があり、「だめ」はもっと広く望ましい状態ではないことを表すのである。

「だめ」と「できない」|結果が悪いのか、実現できないのか

「できない」は能力・可能性・条件などによって、何かを実現できないことを表す。

「私は泳げない」
「今日は参加できない」

などである。

「だめ」でも、

「今日はだめだ」

と言えば、文脈によって「今日は参加できない」という意味になる。

しかし、

「この料理はだめだ」

は普通、「この料理ができない」という意味ではない。味や出来栄えなどへの否定的評価である可能性が高い。

「できない」は実現可能性、「だめ」はそれを含むさらに広い否定的判断である。

「だめ」と「使えない」|目的に役立つか

「使えない」は、道具・方法などが目的を果たせないことを表す。

「このカードはここでは使えない」
「この方法は実際には使えない」

などである。

「これ、もうだめだ」

と壊れた機械を指して言えば、「もう使えない」に近くなる。

ただし「使えない」は文字どおり使用できない場合だけでなく、「このアイデアは使えない」のように実用性がないことにも使われる。

ここでは「だめ」の意味が、役に立つか・機能するかという方向へ枝分かれしている。

「だめ」と「効かない」|期待した効果が出ない

薬、対策、説得、方法などについて「だめ」と言う場合、「効かない」という意味になることがある。

「この方法でもだめだった」
「この薬を使ってもだめだった」

という表現である。

「効かない」は、何らかの作用を期待したが、その効果が現れないことに焦点がある。

「だめ」は結果全体を評価する言葉だが、「効かない」は作用・効果が生じないという部分を具体的に表している。

「だめ」と「いけない」|悪いのか、してはいけないのか

「だめ」は禁止にも使える。

「ここで写真を撮ってはだめだ」
「それを触っちゃだめ」

この場合、「失敗する」「機能しない」という意味ではない。

「してはいけない」「許されていない」という意味である。

「いけない」も同じように禁止を表せるが、

「それじゃだめだ」

のような評価では、「いけない」と完全に置き換えられない場合もある。

「だめ」の世界には、結果だけでなく許可・規則という方向も含まれているのである。

「だめ」と「よくない」|強い否定か、好ましくない評価か

「よくない」は、「良い」の反対として比較的広く使える。

「このやり方はよくない」
「最近、体の調子がよくない」

一方、

「このやり方じゃだめだ」

と言うと、「よくない」よりも「このままでは目的を達成できない」という強い否定になることがある。

「よくない」は好ましくないという評価、「だめ」は文脈によって受け入れられない・成立しないところまで踏み込む表現である。

「だめ」と「無理」|成立しないのか、実現が難しいのか

「無理」は、実現することが難しい、あるいは不可能だという判断に焦点がある。

「今日中に終わらせるのは無理だ」
「一人で運ぶのは無理だ」

「今日はだめだ」も文脈によって「今日は無理だ」に近くなる。

ただし、「この料理はだめだ」を「この料理は無理だ」とすると、話し手がその料理を受け付けられないという別のニュアンスになりやすい。

「無理」は主に可能性・許容できる限界に関わる言葉である。

「だめ」と「見込みがない」|今が悪いのか、未来も期待できないのか

「だめ」は未来への判断にも使われる。

「もうだめだ」
「この計画はだめそうだ」

などである。

「見込みがない」は、現在の状態そのものよりも、そこから先に成功・改善・回復などを期待できないことを表す。

つまり、

「だめ」=現在を含む広い否定的判断
「見込みがない」=未来への期待が小さい

という違いがある。

ここまでの日本語を概念で整理すると

「だめ」の意味を日本語だけで整理すると、次のようになる。

概念日本語表現
期待した結果にならないうまくいかない
目的を達成できない失敗する
実現できないできない、無理
正常に働かない動かない、機能しない
目的に利用できない使えない
期待した作用がない効かない
状態・方法が好ましくないよくない、悪い
状況に合っていない不適切
行為が許されないいけない、禁止されている
目的に役立たない役に立たない
将来を期待できない見込みがない
対応する時期を過ぎた手遅れ

「だめ」はこれらを包み込む非常に広い日本語なのである。

英語では「だめ」をどう表すのか?

では、英語では「だめ」をどう表すのか。

英語では、「何がどうだめなのか」をより具体的に表現することが多い。

日本語のイメージ英語コアイメージ
失敗するfail目的・基準を達成できない
うまくいかないnot work期待どおりの結果を生まない
よくない・使い物にならないno good良いものとして評価できない
できないcan’t / be unable to実行・実現できない
効かないnot work / be ineffective期待した効果を生まない
役に立たないuseless用途・価値がない
許されないnot allowed規則などによって許可されない
してはいけないmustn’t / can’t行為を禁止する
見込みがないhopeless良い結果への希望がほとんどない
うまくいかなかったgo wrong予定・期待から悪い方向へ外れる

これは「だめ=fail」「だめ=no good」という対応表ではない。

日本語では一言の「だめ」で済ませられるところを、英語では何が問題なのかを考えて表現するのである。

fail|目的や基準を達成できない

failのコアイメージは、「求められた結果・目的・基準に届かない」である。

試験、計画、試みなどについて「失敗する」という場合に中心となる。

The plan failed.
その計画は失敗した。

I failed the test.
私はその試験に落ちた。

日本語なら「計画はだめだった」「試験はだめだった」と言える場面でも、英語では何がだめだったのかを明確にしてfailを使える。

ただし、

このパソコンはもうだめだ。

を単純に This computer failed. とするとは限らない。

機械が壊れて使えないのであれば、別の表現のほうが自然になる。

failは「だめ」全体ではなく、特に失敗・基準未達の領域を担当する言葉である。

not work|期待どおりに機能しない・うまくいかない

workには「働く」だけでなく、「機能する」「うまくいく」「効果を発揮する」という重要な意味がある。

その否定であるnot workは、日本語の「だめ」と非常に相性がよい。

This method doesn’t work.
この方法ではうまくいかない。

My computer isn’t working.
パソコンが動かない。

This medicine isn’t working.
この薬が効いていない。

日本語ではすべて「だめ」でまとめることもできる。

しかし英語のworkを見ると、

本来期待されている働きをしているか

という共通点が見える。

方法なら「うまくいく」、機械なら「動く」、薬なら「効く」と日本語訳が変わるのである。

no good|良いものとして評価できない

no goodは、人・物・方法・状況などについて「よくない」「役に立たない」「だめだ」と評価するときに使われる。

This old printer is no good anymore.
この古いプリンターはもうだめだ。

This plan is no good.
この計画ではだめだ。

not workが「機能・結果」に焦点を当てやすいのに対し、no goodはより広く良いものとして評価できないという判断を表せる。

ただし、人についてno goodを使うと、その人の人格や価値を強く否定するように響く場合があるため、文脈には注意が必要である。

can’t|できない・してはだめ

can’tは「能力的にできない」だけではない。

状況によっては「許されていない」という意味にもなる。

I can’t come today.
今日は行けない。

You can’t park here.
ここに駐車してはだめだ。

前者は実現できないこと、後者は許可されていないことを表している。

日本語の「だめ」も、

「今日はだめ」
「ここに止めちゃだめ」

のように、この二つの方向へ広がる。

ただし、can’tそのものが「だめ」を意味するのではない。「可能ではない・許されない」という概念が、日本語では「だめ」と表現される場合があるのである。

go wrong|悪い方向へ進んでしまう

go wrongは、「物事が予定・期待していた方向から外れて悪くなる」という表現である。

Something went wrong.
何かがうまくいかなかった。

The experiment went wrong.
実験がうまくいかなかった。

failが最終的な失敗に焦点を当てやすいのに対し、go wrongは途中で何かがおかしくなる感覚を持つ。

「最初は順調だったけれど、途中からだめになった」という場面にもつながる表現である。

「だめ」から広がる英語表現

中心語以外にも、「だめ」のどの部分を見るかによって英語表現は変わる。

概念英語表現イメージ
役に立たないuseless用途・価値がない
効果がないineffective期待する効果を生まない
適していないunsuitable用途・状況に合っていない
受け入れられないunacceptable許容できる範囲ではない
許されていないnot allowed許可されていない
禁止されているprohibited規則などで禁止されている
見込みがないhopeless良い結果への希望がない
不可能であるimpossible実現することができない
故障しているbroken壊れて正常に使えない
手遅れであるtoo late必要な時期を過ぎている

たとえば「この方法はだめだ」だけでも、理由によって英語は変わる。

This method doesn’t work.
この方法ではうまくいかない。

This method is ineffective.
この方法には十分な効果がない。

This method is unsuitable.
この方法は適していない。

This method isn’t allowed.
この方法は認められていない。

日本語の「だめ」を英語にするときは、まず「なぜだめなのか」を考える必要がある。

「だめ」の概念地図

「だめ」の世界を概念として整理すると、次のようになる。

だめ

├─ 結果がだめ
│ ├─ 失敗する → fail
│ └─ うまくいかない → not work / go wrong
│
├─ 機能がだめ
│ ├─ 動かない → not work / be broken
│ └─ 効かない → not work / ineffective
│
├─ 能力・可能性がだめ
│ ├─ できない → can’t / be unable to
│ └─ 不可能 → impossible
│
├─ 評価がだめ
│ ├─ よくない → no good / bad
│ └─ 不適切 → unsuitable / inappropriate
│
├─ ルール上だめ
│ ├─ してはいけない → can’t / mustn’t
│ └─ 許されていない → not allowed / prohibited
│
├─ 役に立たない
│ └─ 使えない → useless / no good
│
└─ 将来もだめ
  ├─ 見込みがない → hopeless
  └─ 手遅れ → too late

こうして見ると、「だめ」という日本語の中に、英語では別々に表現される複数の概念が入っていることが分かる。

まとめ|「なぜだめなのか」を考える

「だめ」は非常に便利な日本語である。

しかし、その便利さゆえに、英語にするときには一つの単語へ置き換えることができない。

「だめ」の中身日本語英語の代表例
結果失敗するfail
進行・方法うまくいかないnot work / go wrong
機能動かないnot work / broken
効果効かないnot work / ineffective
可能性できない・無理can’t / impossible
評価よくないno good / bad
適切さ不適切unsuitable / inappropriate
禁止してはだめcan’t / mustn’t / not allowed
有用性役に立たないuseless
見込み見込みがないhopeless
時期手遅れtoo late

「だめ=fail」と覚えるのではない。

まず日本語の段階で、

何がだめなのか?

を考える。

失敗したからだめなのか。
うまく動かないからだめなのか。
効果がないからだめなのか。
許されていないからだめなのか。
それとも、もう見込みがないからだめなのか。

そこまで概念を分ければ、fail、not work、no good、can’t、hopelessなどの英語が、ばらばらの暗記語ではなくなる。

「だめ」という一つの日本語から、その内側にある概念を分けていく。

日本語 → 概念 → 英語

という順番で考えることで、「だめ」の英語の世界が見えてくるのである。

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