「物」を表す言葉|物体・品物・物質からthing・object・itemまで

「物」を表す言葉

「物」は、日本語の中でも非常に広い意味を持つ言葉である。

「物を置く」
「物を買う」
「物を作る」
「物が散らかっている」
「大切な物をなくした」

どれも自然な表現である。

さらに、「物体」「品物」「持ち物」「物質」「製品」「商品」「道具」など、「物」を中心とした言葉は数多く存在する。

日本語では、名前をはっきり言わなくても、とりあえず「物」と呼ぶことができる。そのため「物」は、非常に大きな概念を包み込んでいる言葉である。

英語にもthingという広い言葉があるが、いつでも「物=thing」と考えればよいわけではない。

object、item、stuff、material、product、belongingsなど、何を「物」として見ているのかによって言葉が変わる。

では、そもそも「物」とはどのような概念なのだろうか。

「物」と「もの」|漢字とひらがなで意味の範囲は変わるのか

「物」と「もの」は、同じ「もの」と読むが、文章の中で果たす役割には違いがある。

表記中心となる概念使用例
物具体的な物体・品物を表しやすい重い物を運ぶ
もの具体物だけでなく、事柄や抽象的な内容にも広がる大切なものを学ぶ
者人を表す担当する者
モノ商品・製造物などを強調することがあるモノづくり

「物」は、目に見えたり触れたりできる具体的な対象を表すことが多い。

一方、ひらがなの「もの」は意味の範囲が広い。

「人生とは不思議なものだ」
「知らないものを学ぶ」
「昔はよく遊んだものだ」

のように、具体的な物体とは呼べないものにも使われる。

つまり、日本語の「もの」は、英語のthingと同じように、名前を具体的に示さず何かをひとまとまりとして捉える働きも持っている。

この記事では、主に具体的な「物」を中心にしながら、その周辺にある概念を整理していく。

「物」に関係する日本語

「物」の周辺には、その物をどのような視点から見るかによって多くの表現がある。

日本語どのような「物」なのか
物最も広く具体的な対象を指す
もの具体物から抽象的な事柄まで広く指す
物体空間を占める物理的な存在
品物一つ一つの品として見た物
物品管理・取引などの対象となる物
持ち物人が持っている物
所持品人が所持している物
荷物運んだり持ち歩いたりする物
物質物を構成している実体・成分
材料何かを作るために使う物
素材材料となるものの性質に注目した言葉
道具何かをするために使う物
製品作られた結果としての物
商品売買の対象としての物
品個々の物・商品を数える感覚を持つ
雑貨日常生活で使うさまざまな物
不用品必要でなくなった物
所有物誰かが所有している物

同じ「物」であっても、見方を変えるだけで呼び方が変わる。

たとえば一つの木製の椅子でも、「物体」として見ることも、「家具」として見ることも、「商品」として見ることも、「持ち物」として見ることもできる。

ここが「物」の世界を理解する重要なポイントである。

「物」の概念はどこへ枝分かれするのか

「物」の世界は、何としてその対象を見るのかによって枝分かれする。

見方日本語中心となる概念
名前を限定しない物・もの何らかの対象
物理的存在として見る物体空間に存在する物
一個の品として見る品・品物個別の物
管理対象として見る物品管理・保管される物
所有関係から見る持ち物・所持品・所有物誰かが持っている物
運搬対象として見る荷物持ち運ぶ物
構成成分として見る物質何からできているか
作る前の段階から見る材料・素材何かを作るための物
用途から見る道具何かをするための物
生産結果として見る製品作られた物
売買対象として見る商品売るための物

つまり、「物体」「商品」「材料」は、まったく別の世界にあるとは限らない。

同じ対象をどの角度から捉えているかが違うのである。

「物」と「物体」|名前を限定しない対象か、物理的な存在か

「物」は非常に広い。

「そこに何か物がある」

と言えば、それが箱なのか石なのか機械なのかは重要ではない。

一方、「物体」は、その対象を物理的な存在として捉える言葉である。

「空から謎の物体が落ちてきた」
「物体に力が加わる」

などで使われる。

日常会話で、

「机の上の物体を片づけて」

とは普通言わない。

「机の上の物を片づけて」

が自然である。

「物体」は、その対象が何であるかよりも、「空間に存在する一つの物理的存在」として見るときに使われる。

「物」と「品物」|広い対象か、一つの品か

「品物」は「物」よりも、一つ一つの品として扱われる物という感覚が強い。

「店にたくさんの品物が並んでいる」
「注文した品物が届いた」

などで使われる。

単なる物理的存在ではなく、人が使ったり、売ったり、受け渡したりする対象として見ている。

「部屋に物がたくさんある」は自然だが、「部屋に品物がたくさんある」と言えば、商品や何らかの品が並んでいるような印象が生まれる。

つまり、

物 → 名前を限定しない広い対象

品物 → 個々の品として扱われる物

という違いがある。

「品物」と「物品」|個々の品か、管理される物か

「品物」と「物品」は似ているが、使われる場面が違う。

「品物」は日常的な言葉である。

「この品物を包んでください」
「届いた品物を確認する」

などと言える。

一方、「物品」は事務・管理・制度などで使われやすい。

「会社の物品を管理する」
「必要な物品を購入する」

のような表現である。

「物品」は一つの物の特徴よりも、管理・保管・購入などの対象となる物の集合として捉える感覚が強い。

「物」と「持ち物」|単なる物か、誰かとの所有関係がある物か

「持ち物」は、物そのものではなく、誰かが持っているという関係に注目した言葉である。

「忘れ物がないように持ち物を確認する」
「自分の持ち物には名前を書く」

などで使う。

同じペンでも、机の上に置かれているだけなら「物」である。

それを「私のペン」として見ると、「私の持ち物」になる。

つまり、対象そのものが変化したわけではない。

物と人との関係が加わったことで「持ち物」になるのである。

「持ち物」と「所持品」|日常的な所有か、所持している物か

「持ち物」と「所持品」はかなり近い。

ただし、「持ち物」のほうが日常的である。

「学校の持ち物」
「旅行の持ち物」

などと言える。

「所持品」はやや事務的・客観的である。

「所持品を確認する」
「所持品検査を行う」

など、誰かが現在所持している物を客観的に扱う場面で使われやすい。

どちらも「物+所有者」という関係を表すが、文体や場面が異なる。

「物」と「荷物」|存在する物か、運ぶ物か

「荷物」は、持ち運び・輸送という視点から見た物である。

旅行かばんも、中に入っている服も、宅配便の箱も、状況によって「荷物」と呼ばれる。

「荷物を車に積む」
「荷物をホテルに置く」
「荷物が届く」

などで使う。

つまり「荷物」は物の種類ではない。

椅子でも箱でも本でも、運ぶ対象として見れば荷物になり得る。

ここでも、「何であるか」ではなく、どのような役割でその物を見ているかが重要である。

「物」と「物質」|一つの対象か、何からできているか

「物質」は「物体」と混同しやすいが、視点が異なる。

机を考えてみよう。

机そのものを一つの物理的存在として見れば「物体」である。

一方、その机を構成している木材・金属・プラスチックなどに注目すると、「物質」の世界に近づく。

つまり、

物体 → 形を持って存在する一つの対象

物質 → 物を構成している実体

という違いである。

科学では特に重要な区別である。

「物質」と「材料」|存在そのものか、何かを作るために使う物か

「材料」は、何かを作るために使う物である。

木材は物質として見ることもできるが、

「この木材で机を作る」

という場面では材料になる。

「物質」は、そのものが何であるかを見る。

「材料」は、それを何に使うかを見る。

したがって、同じ木材でも視点によって呼び方が変わる。

「材料」と「素材」|作るための物か、元になる性質を持ったものか

「材料」と「素材」も近い。

料理なら、

「カレーの材料を買う」

が自然である。

一方、

「天然素材の服」
「軽い素材を使う」

では、その物が持つ性質や特徴に注目している。

材料は何かを作るために使う物という用途が中心であり、素材は加工される前の元となるものや、その性質を意識しやすい。

ただし実際には重なる場面も多い。

「物」と「道具」|存在する物か、目的のために使う物か

「道具」は、何かをするために使われる物である。

ハンマーは物である。

しかし、

「釘を打つために使う」

という機能に注目すれば道具になる。

さらに日本語では、

「言葉はコミュニケーションの道具である」

のように、物理的な物ではないものまで「道具」と呼べる。

つまり道具は、物の形ではなく、何かをするための手段として機能することが中心である。

「製品」と「商品」|作られた物か、売られる物か

「製品」と「商品」は、同じ物を指すことがある。

工場でスマートフォンが完成したとする。

作られた結果として見れば「製品」である。

店で売られる対象として見れば「商品」である。

つまり、

製品 → 生産という視点

商品 → 売買という視点

である。

一つのスマートフォンが、工場では「製品」、店では「商品」、購入後には「持ち物」になることもある。

対象そのものではなく、人がその物をどのような関係の中で捉えているかによって言葉が変わるのである。

ここまでの日本語を概念で整理すると

日本語の「物」の世界を整理すると、次のようになる。

概念日本語表現
名前を限定しない対象物・もの
物理的存在物体
一つ一つの品品・品物
管理される物物品
人が持っている物持ち物・所持品・所有物
運ぶ対象荷物
物を構成する実体物質
何かを作るための物材料・素材
目的のために使う物道具
作られた物製品
売買される物商品

ここで重要なのは、これらが完全に別々の種類の物ではないことである。

一つの対象でも、

存在として見る
→ 物体

材料として見る
→ 素材

作られた結果として見る
→ 製品

売る対象として見る
→ 商品

買った人との関係で見る
→ 持ち物

というように、視点によって呼び方が変化する。

英語では「物」をどう表すのか?

では、英語では「物」をどう表すのだろうか。

中心となるのは thing、object、item、stuff、material などである。

日本語のイメージ英語コアイメージ
名前を限定しない「もの」thing何らかのもの・こと
物理的な物体object一つの物理的対象
一つの品item集合の中の一項目・一品
いろいろな物stuffまとめて捉えたもの
材料・物質material何かを構成・製作するもの
所有している物belongings持ち物
売られる物goods商品・物品
作られた物product生産されたもの

これは「物=thing」「物体=object」と機械的に対応させる表ではない。

同じ対象でも、英語ではその対象をどのような視点から捉えるかによって使う語が変わる。

thing|名前を限定せず「何か」として捉える

thing は、「物」の世界で最も広く使える中心語である。

コアイメージは、何らかの一つの対象として捉えることである。

What’s that thing on the table?
テーブルの上にあるあれは何?

名前が分からない、あるいは名前を言う必要がない物をthingで表せる。

I have a few things to buy.
買う物がいくつかある。

さらにthingは、物理的な物だけではない。

The important thing is to keep trying.
大切なのは挑戦し続けることである。

このthingは「物体」ではなく、「こと」に近い。

つまりthingは、日本語の「物」だけでなく「もの」「こと」にも広がる非常に大きな概念を持っている。

object|物理的な一つの対象として見る

object は、thingよりも「物理的な存在」という感覚が強い。

There was a strange object in the sky.
空に奇妙な物体があった。

この場合、日本語でも「奇妙な物」より「奇妙な物体」のほうが近い。

Do not place heavy objects on the shelf.
棚の上に重い物を置かないでください。

objectは、形があり、空間の中に存在する対象として物を見る。

そのため、

thing → 名前を限定しない広い「もの」

object → 物理的な対象としての「物体」

と考えると分かりやすい。

ただしobjectには「目的」「対象」「反対する」という別の意味・用法もあるため、常に「物体」になるわけではない。

item|集まりの中の一つとして見る

item の重要な特徴は、複数あるものの中の一つとして対象を見ることである。

I bought three items.
私は3点の商品を買った。

This item is on sale.
この商品はセール中である。

店の商品だけでなく、

The first item on the list is milk.
リストの最初の項目は牛乳である。

のように、リストの「項目」にも使える。

つまりitemは物体そのものより、集合・一覧の中にある一単位という感覚が中心である。

そのため日本語では「品」「品物」「商品」「項目」など、文脈によって訳が変わる。

stuff|いろいろな「もの」をまとめて捉える

stuff は、個々の物を一つずつ区別せず、まとめて「もの」として捉える表現である。

There’s a lot of stuff in my room.
私の部屋には物がたくさんある。

ここで、机、本、服、箱などを一つずつ数えているわけではない。

全部まとめてstuffと呼んでいる。

I need to pack my stuff.
自分の荷物をまとめないといけない。

このstuffは「自分のいろいろな物」という感覚である。

thingとの違いを大まかに捉えるなら、

a thing → 一つの「もの」

stuff → いろいろな「もの」をひとまとめ

である。

stuffは基本的に不可算名詞として扱われるため、通常「a stuff」「three stuffs」のようには数えない。

material|何かを構成したり作ったりするもの

material は、完成した物そのものより、何かを構成するもの・作るために使うものに焦点を置く。

This bag is made from recycled material.
このバッグは再生素材から作られている。

We need more materials to build the house.
家を建てるためにもっと材料が必要である。

materialは文脈によって「材料」「素材」「資材」などになる。

また、

teaching materials
教材

のように、物理的な材料以外にも意味が広がる。

「何かを形作る元になるもの」という概念で理解すると分かりやすい。

thing・object・itemの違い|同じ「物」をどう見るか

thing、object、itemは、同じ物を指せる場合がある。

たとえば、机の上に時計があるとする。

名前を言わず「あの物」と捉えれば thing。

物理的な対象として捉えれば object。

一覧や商品の中の一品として捉えれば item になり得る。

thingobjectitem
中心何らかのもの物理的対象集合の中の一つ
範囲非常に広い具体物中心個別単位中心
「こと」にも使えるか使える基本的に別の意味になる「項目」へ広がる
日常会話非常に多いthingより限定的買い物・一覧などで多い

つまり、この三つを単なる類義語として覚えるより、同じ対象をどの角度から切り取っているかを見るほうが理解しやすい。

stuffとthingsの違い|一つずつ見るか、まとめて見るか

「いろいろな物」を英語で表すとき、things と stuff の両方が使える。

ただし視点が違う。

I have a lot of things in my bag.
かばんの中にたくさんの物が入っている。

thingsでは、複数の物が一つずつ存在している感覚がある。

I have a lot of stuff in my bag.
かばんの中に物がたくさん入っている。

stuffでは、それらを細かく区別せず、ひとまとめに捉えている。

したがって、

things → 複数の「もの」

stuff → ごちゃっとまとまった「もの」

という違いで考えると分かりやすい。

belongings|「誰の物か」に注目する

「物」が人との所有関係に入ると、英語では belongings が重要になる。

Please take all your belongings with you.
持ち物をすべてお持ちください。

belongingsは、ある人が所有・携帯している物をまとめて表す。

日本語の「持ち物」「所持品」に近い。

She packed her belongings and left.
彼女は自分の持ち物をまとめて出ていった。

thingやobjectが物そのものを見るのに対し、belongingsは誰に属している物なのかという関係を含んでいる。

goodsとproduct|売る物か、作られた物か

goods は、売買される「商品・物品」という意味で使われる。

The store sells imported goods.
その店は輸入品を販売している。

一方、product は生産・製造された結果としての「製品」を表す。

The company launched a new product.
その会社は新製品を発売した。

日本語の「商品」と「製品」の違いと似た視点が見える。

product → 作る側から見た、生産されたもの

goods → 取引される物としてまとめて見る

という違いである。

ただしproductも実際には「商品」の意味で広く使われるため、一対一に分けられるわけではない。

「物」の周辺英語|持ち物・荷物・道具・商品へ

「物」の概念を広げると、英語にも多くの表現がある。

日本語の概念英語中心となるイメージ
何らかの物・ものthing一つの対象
物理的な物体object空間に存在する対象
一品・一項目item集合の中の一単位
いろいろな物stuffまとめて捉えたもの
持ち物belongings人に属する物
荷物luggage / baggage旅行などで運ぶ荷物
材料・素材material何かを構成・製作するもの
道具tool何かをするための物
製品product生産されたもの
商品・物品goods売買される物
所有物possessions所有している物

このように見ると、「物」という日本語の中に、英語では多くの異なる視点が隠れていることが分かる。

「物」の概念地図

「物」の世界を日本語と英語でつなぐと、次のようになる。

物・もの
↓
何らかの対象をひとまとまりとして捉える

├─ 名前を限定せず「何か」と見る
│ → 物・もの
│ → thing

├─ 物理的存在として見る
│ → 物体
│ → object

├─ 集合の中の一つとして見る
│ → 品・品物・一品
│ → item

├─ 個々を区別せずまとめて見る
│ → いろいろな物
│ → stuff

├─ 誰かとの所有関係から見る
│ → 持ち物・所持品
│ → belongings / possessions

├─ 運ぶ物として見る
│ → 荷物
│ → luggage / baggage

├─ 何かを作る元として見る
│ → 材料・素材
│ → material

├─ 用途から見る
│ → 道具
│ → tool

├─ 生産の結果として見る
│ → 製品
│ → product

└─ 売買の対象として見る
  → 商品・物品
  → goods / product

重要なのは、「これは何という英語なのか」と最初から考えないことである。

まず、その「物」をどのようなものとして見ているのかを考える。

すると、thing、object、item、stuff、materialなどが、一つの概念世界の中でつながって見えてくる。

まとめ|「どのような物として見ているのか」を考える

「物」は非常に広い日本語である。

名前が分からない物も「物」、店で売られている物も「物」、自分が持っている物も「物」、何かを作るための材料も「物」である。

しかし、そこに視点を加えると、言葉が分かれていく。

見方日本語英語の中心表現
名前を限定しない物・ものthing
物理的存在として見る物体object
一つの品として見る品・品物item
まとめて見るいろいろな物stuff
所有関係から見る持ち物・所持品belongings
運搬対象として見る荷物luggage / baggage
構成・製作の元として見る材料・素材material
用途から見る道具tool
生産結果として見る製品product
売買対象として見る商品・物品goods / product

「物=thing」とだけ覚えると、objectやitem、stuffとの違いが見えにくい。

大切なのは、

名前を限定せず「何か」と言っているのか。
物理的な物体として見ているのか。
たくさんある中の一品として見ているのか。
いろいろな物をまとめて捉えているのか。
誰かの持ち物として見ているのか。
材料・道具・製品・商品という役割から見ているのか。

という違いである。

同じ一つの物でも、見る角度が変われば言葉も変わる。

「物」を一つの英単語へ置き換えるのではなく、どのような「物」として捉えているのかを考えることで、その場面に合う英語が見えてくるのである。

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