「来る」を表す言葉|訪れる・着く・近づくからcome・arrive・approachまで

「来る」を表す言葉

「来る」は、日常会話で非常によく使われる言葉である。

「友達が家に来る」「電車が来る」「春が来る」「チャンスが来る」「台風が来る」のように、人の移動だけでなく、乗り物、季節、出来事、時間などにも使える。

さらに周辺には、「訪れる」「着く」「到着する」「近づく」「やって来る」「戻って来る」「立ち寄る」など、多くの表現がある。

英語でも「来る」をすべて come で表すわけではない。come、arrive、approach、reach、visit など、何がどこへ、どのように移動しているのかによって表現が変わる。

では、そもそも「来る」とはどのような概念なのだろうか。

「来る」の世界を、日本語から整理してみよう。

「来る」と「くる」|漢字とひらがなの違い

「来る」には、「見る」と「観る」のような意味の異なる漢字表記は基本的にない。ただし、文章では「来る」と「くる」が使い分けられることがある。

表記中心となる概念使用例
来る実際にこちらへ移動する友達が家に来る
くる補助動詞として変化や動作の方向を表す寒くなってくる
やって来るこちらへ移動して現れる春がやって来る
戻って来る元の場所へ再び移動する家に戻って来る

特に重要なのが「〜てくる」である。

「雨が降ってきた」「分かってきた」「暑くなってきた」の「くる」は、単純な場所の移動ではない。ある変化が現在の自分のところまで進んでくるという感覚がある。

この「こちら側へ近づいてくる」という方向性は、「来る」という言葉のコアイメージを考えるうえで重要である。

「来る」に関係する日本語

まず英語を考えず、日本語の「来る」の周辺を整理してみよう。

日本語どのような「来る」なのか
来るこちら側・基準となる場所へ移動する
やって来る移動してこちらに現れる
訪れる人が場所を訪問する/時期や出来事がやって来る
訪問する目的をもって人や場所を訪ねる
着く移動の終点に達する
到着する目的地に着く
近づく距離が小さくなる
迫る強い勢い・緊張感を伴って近づく
戻って来る離れた場所から再びこちらへ来る
帰って来る外出先などから本来の場所へ戻る
立ち寄る移動の途中で短時間訪れる
現れる見える場所・場面に出てくる
到来する時期・機会・状況などがやって来る
押し寄せる人・波・出来事などが大量に迫って来る

ここで分かるのは、「来る」という言葉の中に方向・到着・接近・訪問・出現・時間的変化という複数の概念が含まれていることである。

「来る」の概念はどこへ枝分かれするのか

「来る」の中心には、

何かが基準となる場所・人・時点へ近づいてくる

というイメージがある。

そこから次のように枝分かれする。

違いの軸日本語表現注目していること
方向来る / 行くこちら側か、向こう側か
到達来る / 着く / 到着する移動か、終点か
距離来る / 近づく移動全体か、距離の縮小か
目的来る / 訪れる / 訪問する単なる移動か、訪問か
一時性来る / 立ち寄る本格的な訪問か、途中の短い訪問か
復帰来る / 戻って来る / 帰って来る初めての移動か、元の場所への復帰か
出現来る / 現れる移動か、姿を見せることか
時間来る / 到来する空間的移動か、時期・出来事の接近か

つまり、「来る」を理解するときには、単に「移動する」と考えるだけでは足りない。

どこを基準点として、何がその基準点へ近づいているのかを見る必要がある。

「来る」と「行く」|基準となる場所が違う

「来る」と「行く」は、同じ移動を異なる方向から捉える言葉である。

「来る」は基本的に、話し手などの基準となる場所へ向かう移動を表す。

一方、「行く」は基準となる場所から別の場所へ向かう。

たとえば、

「友達が私の家に来る」

なら、自分の家が基準点である。

「私は友達の家に行く」

なら、自分のいる場所から友達の家へ移動している。

ただし実際の日本語では、現在地だけでなく、話し手が心理的に置いている基準点によって「来る」を使うこともある。

「来る/行く」の違いは、単なる移動方向ではなく、どこに視点を置いているかの違いなのである。

「来る」と「着く」|移動か到達か

「来る」は、こちらへ向かう移動を広く捉える。

「着く」は、その移動の終点に達することに焦点を当てる。

たとえば、

「電車が来る」

なら、電車がこちらへやって来ることを捉えている。

「電車が駅に着く」

なら、駅という目的地点への到達を捉えている。

そのため、「もうすぐ来る」は接近している途中でも使えるが、「着いた」は基本的に到達した後である。

来る=こちらへの移動

着く=目的地への到達

という違いがある。

「来る」と「訪れる」|移動そのものか、訪問・到来か

「訪れる」は「来る」より意味が限定されている。

「友達が来た」は単純な移動として言えるが、「友達が訪れた」とすると、その場所を訪問したという意味が強くなる。

また、「訪れる」は人以外にも使える。

「春が訪れる」

「チャンスが訪れる」

「平和が訪れる」

この場合、物理的に何かが移動してきたわけではない。「ある時期・状態・機会が現実になる」という意味である。

したがって「訪れる」は、場所への訪問から抽象的な出来事の到来まで広がっている言葉である。

「来る」と「近づく」|方向か距離の変化か

「近づく」は、ある対象との距離が小さくなることに焦点がある。

「台風が来る」

なら、台風がこちらへ向かっていることを表す。

「台風が近づいている」

なら、台風との距離が徐々に縮まっていることを表す。

時間についても同じである。

「冬が来る」

「冬が近づいている」

前者は冬の到来を広く表し、後者は冬までの時間が短くなっていることに注目している。

「来る」と「迫る」|普通の接近か、圧力のある接近か

「迫る」も「近づく」に似ているが、より強い緊張感を伴うことが多い。

「締め切りが来る」

よりも、

「締め切りが迫る」

のほうが、残された時間が少なくなっている感覚が強い。

「敵が迫って来る」「危険が迫る」のように、避けにくいものが近づく場面にもよく使われる。

つまり、

近づく=距離が縮まる

迫る=圧力や緊張を伴って近づく

という違いがある。

「来る」と「戻って来る」|一方向の移動か、復帰か

「戻って来る」には、以前そこにいたという前提がある。

「彼が家に来た」

だけなら、その人が以前家にいたかどうかは分からない。

「彼が家に戻って来た」

なら、一度家から離れ、その後再び家へ来たことが分かる。

「帰って来る」も近いが、「帰る」には自宅・故郷・所属する場所など、本来いる場所へ戻るという感覚が強い。

「来る」と「立ち寄る」|目的地として来るか、途中で寄るか

「立ち寄る」は、移動の途中で別の場所を短時間訪れることである。

「友達が家に来た」

なら、家を目的地として来た可能性が高い。

「友達が家に立ち寄った」

なら、別の移動の途中で家に寄ったような感覚になる。

「来る」という大きな概念の中から、短時間・途中の訪問を切り出した言葉が「立ち寄る」である。

「来る」と「現れる」|移動を見るか、出現を見るか

「現れる」は、移動の過程よりも見える状態になることに注目する。

「彼がこちらに来た」は移動を表す。

「彼が突然現れた」は、それまでいなかった、あるいは見えなかった人物が姿を見せたことを表す。

そのため、「問題が現れる」「症状が現れる」のように、実際には移動していないものにも使える。

「来る」から「現れる」へ進むと、移動という概念から「出現」という概念へ広がっていくのである。

ここまでの日本語を概念で整理すると

日本語だけで「来る」の世界を整理すると、次のようになる。

概念日本語表現
基本的な接近・移動来る、やって来る
反対方向への移動行く
目的地への到達着く、到着する
距離が縮まる近づく
強く近づく迫る
人や場所への訪問訪れる、訪問する
短時間の訪問立ち寄る
元の場所への復帰戻って来る、帰って来る
姿を見せる現れる
時期・機会の出現来る、訪れる、到来する

「来る」は非常に広い概念であり、その中のどこに注目するかによって別の日本語が生まれている。

では、この概念世界を英語ではどのように表すのだろうか。

英語では「来る」をどう表すのか?

英語では、日本語の「来る」の周辺を come、arrive、approach、reach、visit などに分けて表現する。

日本語のイメージ英語コアイメージ
こちらへ来るcome基準となる場所へ移動する
到着するarrive目的地への到着に焦点を当てる
近づくapproach対象との距離を縮める
ある地点に達するreach到達点に届く
人・場所を訪れるvisit訪問する
戻って来るcome back / return元の場所へ戻る
立ち寄るstop by / come by短時間訪れる
現れるappear / show up姿を現す

ここで重要なのは、この表が「来る=come」「着く=arrive」という完全な一対一対応を示しているわけではないことである。

日本語と英語では、言葉を切り分ける境界が異なる。

そのため、日本語をそのまま英語へ置き換えるのではなく、その場面では移動・接近・到達・訪問・出現のどこに注目しているのかを考える必要がある。

come|基準となる場所へ移動する

come のコアイメージは、基準となる場所・人・時点のほうへ移動することである。

日本語では「来る」「やって来る」「〜になる」など、文脈によってさまざまに訳される。

He came to my house yesterday.
彼は昨日、私の家に来た。

Can you come here?
ここに来てくれる?

come と go の違いを考えると分かりやすい。

go は基準点から離れて別の場所へ向かうイメージが中心であり、come は基準となる側へ向かう。

さらに come は物理的な移動だけではない。

Spring has come.
春が来た。

このように、時間や状況の到来にも広がる。

arrive|目的地に到着する

arrive のコアイメージは、移動の結果として目的地に到達することである。

come が「こちらへ向かう」という方向を含むのに対し、arrive は「着いた」という到達点に焦点を当てる。

The train arrived at the station.
電車が駅に到着した。

We arrived home late.
私たちは遅く家に着いた。

たとえば電車について、

The train is coming.
電車が来る。

と言えば、こちらへ近づいてくることに意識がある。

一方、

The train has arrived.
電車が到着した。

なら、到着が完了したことに意識がある。

approach|対象へ近づく

approach のコアイメージは、対象との距離を縮めることである。

come のように「こちら側」という視点を必ずしも必要としない。

The train is approaching the station.
電車が駅に近づいている。

時間についても使える。

Winter is approaching.
冬が近づいている。

日本語の「近づく」にかなり近い概念だが、approach は人や場所だけでなく、時期・問題などにも使える。

come が移動そのものを広く捉えるのに対し、approach は距離が縮まっていく過程に注目する。

reach|ある地点まで届く

reach のコアイメージは、ある地点・段階まで届くことである。

arrive と似ているが、視点が少し異なる。

arrive は「到着する」という出来事を捉え、reach は「ある地点まで到達する」という感覚が強い。

We reached the top of the mountain.
私たちは山頂に着いた。

The temperature reached 30 degrees.
気温は30度に達した。

後者のように、物理的な移動がなくても使える。

この点から、reach は日本語の「来る」よりも「達する」「届く」の概念に近い場合が多い。

visit|人や場所を訪れる

visit のコアイメージは、単なる移動ではなくある人・場所を目的として訪れることである。

I visited my grandmother last weekend.
私は先週末、祖母を訪ねた。

We visited Kyoto in spring.
私たちは春に京都を訪れた。

日本語なら、

「先週、おばあちゃんのところに来た」

「京都に行った」

と表現する場面でも、英語では visit が自然になることがある。

ここに、日本語と英語の概念の切り分け方の違いが見える。

「戻って来る」「立ち寄る」「現れる」は英語でどう広がるか

「来る」の周辺には、come を中心としながら別の表現へ広がる領域がある。

日本語の概念英語表現イメージ
戻って来るcome backこちらへ戻る
元の状態・場所へ戻るreturn復帰する
立ち寄るstop by移動途中に短時間寄る
ちょっと来るcome byこちらを訪れる
姿を現すappear見える状態になる
やって来る・顔を出すshow upその場に現れる
到来するcome / arrive時期・瞬間などが来る

たとえば、

I’ll come back tomorrow.
明日戻って来るよ。

I’ll stop by after work.
仕事のあとにちょっと寄るよ。

He finally showed up.
彼はようやく現れた。

いずれも日本語では「来る」と関係する場面だが、英語では「戻る」「立ち寄る」「姿を現す」という概念を明確に表現できる。

「来る」は時間や変化にも広がる

「来る」は空間的な移動だけではない。

「春が来る」

「順番が来る」

「チャンスが来る」

「時代が来る」

など、時間の流れの中で何かが現在へ近づき、現実になる場合にも使われる。

英語でも come が使える場合がある。

Your turn will come soon.
もうすぐあなたの番が来る。

The time has come.
その時が来た。

しかし、すべてを come で表すわけではない。

「締め切りが近づいている」なら、

The deadline is approaching.
締め切りが近づいている。

「チャンスが現れた」なら、

An opportunity came up.
機会が訪れた。

のような表現もある。

ここでも重要なのは「来る」という日本語そのものではなく、何がどのような形で自分の現在へ近づいているのかを考えることである。

「来る」の概念地図

「来る」の世界を、日本語から英語へつなげると次のように考えられる。

来る
│
├─ こちらへ移動する
│      └─ come
│
├─ 目的地に着く
│      ├─ 着く・到着する
│      └─ arrive
│
├─ 距離が縮まる
│      ├─ 近づく・迫る
│      └─ approach
│
├─ ある地点まで届く
│      ├─ 達する・届く
│      └─ reach
│
├─ 人・場所を訪ねる
│      ├─ 訪れる・訪問する
│      └─ visit
│
├─ 元の場所へ来る
│      ├─ 戻って来る・帰って来る
│      └─ come back / return
│
├─ 途中で来る
│      ├─ 立ち寄る
│      └─ stop by / come by
│
└─ 見えるところへ出てくる
       ├─ 現れる
       └─ appear / show up

このように見ると、come、arrive、approach、reach、visit は、ばらばらの単語ではない。

日本語の「来る」を中心とした大きな概念世界の中で、方向・到着・接近・到達・訪問・出現のどこに焦点を当てるかによって英語表現が分かれているのである。

まとめ|「どのように来るのか」を考える

「来る」は非常に広い日本語である。

人が来るだけでなく、電車が来る、春が来る、順番が来る、チャンスが来るなど、空間から時間・出来事まで広がっている。

注目する概念日本語主な英語
こちらへの移動来る、やって来るcome
目的地への到着着く、到着するarrive
距離の縮小近づく、迫るapproach
地点への到達達する、届くreach
人・場所への訪問訪れる、訪問するvisit
元の場所への復帰戻って来る、帰って来るcome back / return
短時間の訪問立ち寄るstop by / come by
出現現れるappear / show up

英語を覚えるときに、

来る=come

だけで覚えてしまうと、この概念世界は見えにくい。

まず日本語で、

「こちらへ来るのか」
「目的地に着くのか」
「だんだん近づくのか」
「ある地点まで達するのか」
「誰かを訪ねるのか」
「元の場所へ戻って来るのか」
「姿を現すのか」

と考える。

すると、come、arrive、approach、reach、visit などの違いも自然に見えてくる。

「来る」を英語に訳すのではなく、「どのように来るのか」という概念を考える。

そこから英語を見ることが、「来る」の世界を理解する近道である。

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