「社会」を表す言葉|世間・共同体・社会全体からsociety・community・publicまで

「社会」を表す言葉

「社会」は、日常でもニュースでも学校でも頻繁に使われる言葉である。「社会に出る」「社会問題」「地域社会」「社会全体」「社会の目」のように、その意味はかなり広い。

しかし、「社会」とは何なのかと聞かれると、意外に説明が難しい。

人が集まれば社会なのか。地域の人々は社会なのか。「世間」と「社会」は同じなのか。「共同体」とは何が違うのか。

さらに英語では、すべてを一つの単語で表すわけではない。society、community、public、worldなど、どの側面を見るかによって表現が変わる。

つまり、

社会 → 人々の集まり・関係・制度・共同体・世間 → 英語

という順番で考える必要がある。

そもそも「社会」とは、どのような概念なのだろうか。

「社会」に関係する日本語

「社会」には、「見る/観る」のような意味のある漢字表記の違いはほとんどない。そのため、漢字違いを無理に考えるよりも、「社会」の周辺にどのような日本語が広がっているかを見るほうが重要である。

日本語どのような「社会」なのか
社会人々が関係しながら生活する大きなまとまり
世間自分の周囲にある人々や、その人々の目・評価
世の中自分を取り巻く社会全体を日常的にとらえた表現
共同体共通点やつながりを持つ人々のまとまり
地域社会特定の地域を基盤とする社会
集団複数の人が集まったまとまり
組織目的や役割を持って構成された集団
公共個人ではなく社会の人々全体に関係する領域
大衆社会を構成する多数の一般の人々
市民社会や地域を構成する一人ひとりの人
人間関係社会を作る人と人とのつながり
制度社会を動かすために作られた仕組み
文化社会の中で共有される考え方や生活様式
社会全体個別の集団ではなく広い社会を一つとして見る表現

ここで重要なのは、「社会」が単なる人の集まりではないことである。

人が集まり、互いに関係し、一定のルールや制度、価値観などを共有する。そこに「社会」という概念が生まれる。

「社会」の概念はどこへ枝分かれするのか

「社会」を中心にすると、日本語の概念は次のような方向へ広がっている。

概念の軸主な日本語注目しているもの
大きなまとまり社会・世の中人々が生きる世界全体
周囲の人々世間周囲からの評価や常識
つながり共同体・地域社会人々の結びつき
単なるまとまり集団人が複数集まっていること
構造組織目的・役割・秩序
共有領域公共みんなに関係すること
構成員市民・大衆社会を構成する人々
仕組み制度社会を動かすルールや構造
共有されるもの文化価値観・習慣・生活様式

「社会」という言葉には、人々そのものだけでなく、人々の関係や、それによって作られた仕組みまで含まれているのである。

「社会」と「世間」|大きな仕組みか、周囲の人々か

「社会」と「世間」は近いが、視点が異なる。

「社会」は、人々の関係や制度まで含めた比較的大きな概念である。

  • 高齢化は大きな社会問題である。
  • 社会の仕組みについて学ぶ。
  • 社会が大きく変化している。

一方、「世間」はもっと自分に近い。

  • 世間の目が気になる。
  • 世間ではそう思われている。
  • 世間を騒がせた。

「社会の目が気になる」よりも「世間の目が気になる」のほうが自然である。

つまり、

社会 → 人々によって作られた大きな世界や仕組み
世間 → 自分を取り巻く人々と、その評価や常識

という違いがある。

「社会」と「世の中」|客観的に見るか、生活の世界として見るか

「世の中」も「社会」にかなり近い。

しかし、「社会」がやや客観的・制度的な言葉なのに対し、「世の中」は人が実際に生きている世界としてとらえる日常的な表現である。

たとえば、

  • 社会の構造を研究する。
  • 世の中にはいろいろな人がいる。

は自然である。

一方、

  • 世の中の構造を研究する。

も意味は通じるが、「社会の構造」のほうが学術的・客観的である。

逆に、

  • 社会にはいろいろな人がいる。

より、

  • 世の中にはいろいろな人がいる。

のほうが日常会話では自然な場合がある。

「社会」は対象として外から眺めやすく、「世の中」は自分もその中で暮らしている世界という感覚が強い。

「社会」と「共同体」|広い関係か、結びつきのある集まりか

「共同体」は、単に多くの人が存在するだけではない。

何らかの共通点やつながりを持った人々のまとまりである。

たとえば、

  • 地域共同体
  • 宗教共同体
  • 共同体意識

などと言う。

「社会」は非常に大きな範囲にも使える。

現代社会には多くの問題がある。

一方、

この地域には強い共同体意識がある。

では、人々の結びつきそのものが意識されている。

したがって、

社会 → 人々が関係して生きる広い仕組み
共同体 → 共通点や帰属意識によって結びついた人々

と考えると分かりやすい。

「社会」と「集団」|関係の世界か、人のまとまりか

「集団」は「社会」よりも単純な概念である。

駅前に100人が集まっていれば、それを「人の集団」と呼ぶことができる。しかし、その100人が一時的に同じ場所にいるだけなら、それだけで一つの「社会」と呼ぶことは普通ない。

「社会」には、人と人との継続的な関係や仕組みが含まれるからである。

集団 → 人がまとまっている
社会 → 人々が関係しながら生活している

という違いが見えてくる。

「社会」と「組織」|広がりか、目的を持った構造か

会社、学校、団体などは「組織」である。

組織には通常、

  • 目的
  • 役割
  • 構成員
  • ルール

などがある。

社会にも制度やルールは存在するが、一つの明確な目的のために作られているとは限らない。

会社は組織であり、その会社もまた社会の一部である。

つまり、

社会 > 多くの組織や集団を含む広い世界

と考えることができる。

「社会」と「公共」|人々の世界か、みんなに関係する領域か

「公共」は「社会」とかなり異なる方向の概念である。

「公共交通」「公共施設」「公共の利益」のように、特定の個人ではなく、多くの人に関係するものを表す。

たとえば公園は、

社会そのもの

ではないが、

公共の場所

である。

「社会」が人々の関係や仕組みを指すのに対し、「公共」は個人ではなく、みんなに開かれた領域に注目している。

ここまでの日本語を概念で整理すると

ここまでの日本語をまとめると、「社会」という一語から複数の方向へ概念が広がっていることが分かる。

概念日本語表現
人々が関係して生きる大きな世界社会
自分の周囲の人々・評価世間
人が生きている世界世の中
結びつきのある人々共同体
地域を基盤としたつながり地域社会
人のまとまり集団
目的を持った構造組織
多くの人に共通する領域公共
社会を構成する人々市民・大衆
社会を動かす仕組み制度
社会で共有されるもの文化

「社会」という日本語をそのまま英語に置き換える前に、社会の何を見ているのかを考える必要がある。

英語では「社会」をどう表すのか?

では、英語では「社会」の世界をどのように表すのだろうか。

代表的な言葉を整理すると次のようになる。

日本語のイメージ英語コアイメージ
社会全体society人々が関係しながら生きる社会
共同体・地域社会community共通点や場所でつながる人々
一般の人々・公共public社会一般の人々
人々people社会を構成する人々そのもの
世の中world人が生きている世界
社会集団social group社会的なつながりを持つ集団
組織organization目的を持って構成された組織

ただし、この表は「社会=society」「共同体=community」という完全な一対一対応を示しているわけではない。

日本語と英語では言葉の守備範囲が異なる。

大切なのは訳語を覚えることではなく、どの側面を切り取っている英語なのかを見ることである。

society|人々が関係しながら生きる社会

societyは「社会」を考えるときの中心的な英単語である。

コアイメージは、

人々が関係し、一定の仕組みや価値観の中で生きている社会

である。

Society is changing rapidly.
社会は急速に変化している。

We need to think about the role of technology in society.
私たちは社会における技術の役割について考える必要がある。

societyは、人の集まりだけを指しているのではない。人々の関係、制度、価値観、生活などを含む大きな枠組みとして使える。

また、

Japanese society
日本社会

のように、特定の国や文化圏の社会を表すこともできる。

community|つながりを持つ人々

communityのコアイメージは、

何かを共有することでつながっている人々

である。

She is active in the local community.
彼女は地域社会で積極的に活動している。

This is a small farming community.
ここは小さな農業共同体である。

communityでは、societyよりも人々のつながりが前面に出やすい。

場所だけが共通点とは限らない。

たとえば、

the scientific community
科学界・科学者の共同体

のように、職業や関心などでつながった人々にも使われる。

societyが大きな社会構造を見やすい言葉なのに対し、communityは「その中でつながっている人々」に焦点を当てる言葉である。

public|社会一般の人々

publicは、日本語の「社会」と直接一対一で対応する単語ではない。

コアイメージは、

特定の個人や内部の人ではなく、一般の人々

である。

The park is open to the public.
その公園は一般の人々に開放されている。

The news shocked the public.
そのニュースは世間を驚かせた。

この二つ目の例では、日本語では「社会」より「世間」や「一般の人々」に近くなる。

また形容詞として、

  • public transportation → 公共交通機関
  • public space → 公共空間
  • public opinion → 世論

のようにも使われる。

「公共」という日本語の世界を考えるうえでも重要な語である。

people|社会を作る一人ひとりの人々

peopleはsocietyより具体的である。

People have different values.
人々はそれぞれ異なる価値観を持っている。

societyなら「人々が作る社会全体」に視点が向くが、peopleなら「そこにいる人々」に視点が向く。

たとえば、

Society is changing.
社会が変化している。

と、

People are changing.
人々が変化している。

では意味が違う。

前者は制度、価値観、生活様式などを含む社会の変化を表せる。後者は人々そのものの考え方や行動などの変化に焦点がある。

「社会」を英語にするとき、必ずsocietyを使うのではなく、日本語が実際には「人々」を指しているならpeopleのほうが自然な場合がある。

world|人が生きている「世の中」

worldは基本的には「世界」であるが、日本語の「世の中」に近づくことがある。

The world is changing.
世の中は変化している。

ここで必ずしも地球そのものが変化していると言っているわけではない。

人間が生きている世界、社会情勢、生活環境などを広くとらえている。

この感覚は日本語の「世の中」に近い。

societyが社会という仕組みを比較的客観的にとらえやすいのに対し、worldは私たちが生きている世界全体という感覚まで広げられる。

「社会」の周辺にある英語表現

「社会」の概念をさらに広げると、関連する英語も見えてくる。

概念英語中心となるイメージ
社会society人々の関係から成る社会
共同体communityつながりを共有する人々
一般社会public一般の人々
人々people人間そのもの
世の中world人が生きる世界
組織organization目的を持つ構造
集団group複数の人のまとまり
市民citizens社会・国家を構成する市民
人口・住民populationある地域などにいる人々全体
文化culture共有される価値観や生活様式
制度・仕組みsystem要素が組み合わさった仕組み
社会制度social system社会を成り立たせる仕組み

たとえば「地域社会」でも、文脈によってcommunityが自然な場合もあれば、地域に住む「住民」を強調してlocal residentsなどと表現したほうがよい場合もある。

英語を選ぶときは、日本語の漢字ではなく、その文で何を指しているのかを見る必要がある。

societyとcommunity|社会全体か、つながりか

この二つは「社会」の世界を理解するうえで特に重要である。

societyは広い。

society
→ 人々
→ 人間関係
→ 制度
→ 価値観
→ 社会構造

まで含めて考えることができる。

communityは、その中の人々のつながりに焦点を当てる。

community
→ 共通の場所・目的・特徴
→ 人々のつながり
→ 帰属する集まり

という方向である。

たとえば「地域社会への貢献」なら、

contribute to the local community
地域社会に貢献する

が自然である。

一方、

the problems facing modern society
現代社会が直面している問題

ではsocietyが自然である。

「社会」という日本語だけを見て英単語を決めるのではなく、どのくらい広い社会を見ているのかが重要なのである。

「社会」の概念地図

「社会」という日本語から出発すると、概念世界は次のように広がっている。

社会
│
├─ 人々が関係して生きる大きな仕組み
│   └─ society
│
├─ つながりのある人々
│   ├─ 共同体
│   ├─ 地域社会
│   └─ community
│
├─ 自分を取り巻く人々
│   ├─ 世間
│   └─ public / people
│
├─ 人が生きている世界
│   ├─ 世の中
│   └─ world
│
├─ 社会を構成する人
│   ├─ 市民
│   ├─ 大衆
│   └─ people / citizens / public
│
├─ 目的を持ったまとまり
│   ├─ 集団
│   ├─ 組織
│   └─ group / organization
│
└─ 社会を成り立たせるもの
    ├─ 制度
    ├─ 文化
    └─ system / culture

こうして見ると、society、community、public、people、worldは、ばらばらの英単語ではない。

すべて「人間が他者とともに生きる世界」という大きな概念から、どこに焦点を当てるかによって枝分かれした言葉として理解できる。

まとめ|「社会の何を見ているのか」を考える

「社会」は非常に広い日本語である。

人々そのものを指すこともあれば、人々の関係、共同体、世間、制度、文化まで含めて使われる。

注目するもの日本語主な英語
人々が作る大きな社会社会society
人々のつながり共同体・地域社会community
周囲の人々・世間世間public / people
人が生きる世界世の中world
社会を構成する人々人々・市民people / citizens
目的を持つ集まり集団・組織group / organization
社会で共有されるもの文化culture
社会を動かす仕組み制度system

「社会=society」とだけ覚えると、communityやpublic、peopleとのつながりが見えなくなる。

まず日本語で、

社会全体なのか。
人々なのか。
つながりなのか。
世間なのか。
社会の仕組みなのか。

を考える。

その概念が見えてくると、society、community、public、people、worldなどの使い分けも自然に理解できるようになる。

英単語を一つずつ暗記するのではなく、「社会」という一つの概念世界から英語がどのように枝分かれしているのかを見ることが重要なのである。

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