「人」を表す言葉|人間・人物・個人からperson・people・humanまで

「人」を表す言葉

「人がいる」「人を探す」「あの人は優しい」「人は考える生き物である」。

日本語の「人」は、あまりにも日常的な言葉なので、普段その意味を細かく意識することは少ない。

しかし、「人間」「人物」「個人」「住民」「市民」「他人」「大人」「若者」などまで広げると、日本語でも「人」をさまざまな視点から捉えていることが分かる。

「あの人」というときには一人の人物を指している。「人は誰でも間違える」というときの「人」は、人間一般を意味している。「10人集まった」の「人」は人数を数える単位でもある。

英語でも同じである。

person、people、human、human being、individual などはいずれも日本語では「人」「人間」と訳されることがあるが、見ているものは同じではない。

では、そもそも「人」とはどのような概念なのだろうか。

まず日本語の「人」の世界から整理してみよう。

「人」は「ひと・じん・にん」と読み方も変わる

「人」は漢字そのものが変わる言葉ではないが、使われ方によって読み方が変化する。

読み中心となる使い方使用例
ひと人そのものを表す人を見る、あの人
じん国・地域・属性などに属する人日本人、外国人、社会人
にん人数・役割などを表す三人、本人、管理人

「人」は単独では「ひと」と読むことが多いが、複合語になると「じん」「にん」も使われる。

ただし、「じん=属性」「にん=人数」と完全に分けられるわけではない。「本人」「犯人」「達人」など、「にん」がさまざまな複合語に使われている。

重要なのは、同じ「人」という漢字でも、人そのものを見る場合、集団への所属を見る場合、人数や役割を見る場合があるということである。

「人」に関係する日本語

「人」を中心にすると、その周辺には多くの言葉が広がっている。

日本語どのような「人」なのか
人人を表す最も広い日常語
人間生物・社会的存在としての人
人類種全体としての人間
人物ある一人を特徴のある存在として見る
個人集団に対する一人の人
本人話題となっているその人自身
他人自分以外の人、関係のない人
他者自分ではない存在としての人
人々複数の人
大衆社会を構成する多数の一般の人々
住民ある地域に住んでいる人
市民市・社会・国家を構成する人
国民ある国に属する人々
大人成人した人
子ども成長途中にある人
若者若い年代の人
高齢者年齢が高い人
男性男という性別・属性から見た人
女性女という性別・属性から見た人
仲間同じ集団や目的を共有する人
知人知っている人
友人友達として関係を持つ人

「人」という存在そのものは同じでも、生物として見るのか、一人の存在として見るのか、集団との関係で見るのか、社会的立場で見るのかによって言葉が変化している。

「人」の概念はどこへ枝分かれするのか

「人」の世界は、どの視点から人を見るのかによって整理できる。

概念の軸日本語表現中心となる考え
基本人人という存在
生物人間他の生物と区別した人
種全体人類人間という種全体
一人人・人物特定の一人
個別性個人集団に対する一人
自他本人・他人・他者誰を基準に見るか
複数人々複数の人
集団大衆・国民大きなまとまりとしての人々
地域住民・市民地域や社会との関係
年齢子ども・若者・大人・高齢者年代による分類
関係知人・友人・仲間自分との関係による分類

つまり、「人」は単に生物の名前ではない。

一人の存在としての人、集団の中の人、生物としての人、社会の一員としての人、自分との関係から見た人など、見る角度によってさまざまな概念へ枝分かれする。

「人」と「人間」|一人の人か、人という存在そのものか

「人」と「人間」は非常に近い言葉だが、完全には同じではない。

あそこに人がいる。
彼は優しい人だ。

このような場合は「人」が自然である。

人間は言葉を使う。
人間と動物の違いを考える。

この場合の「人間」は、人という生物・存在そのものに焦点を当てている。

したがって、

人 → 日常的に一人一人の人を指せる広い言葉

人間 → 人という生物・存在・性質を意識した言葉

という違いがある。

「あそこに一人の人間がいる」と言うこともできるが、普通の日常会話なら「あそこに人がいる」の方が自然である。

反対に「人間とは何か」のように、人という存在そのものを考える場面では「人間」が自然になる。

「人間」と「人類」|人という存在か、種全体か

「人間」と「人類」も似ているが、範囲が異なる。

人間には感情がある。
人類は宇宙へ進出した。

「人間」は、一人一人にも人全般にも使える。

「人類」は、すべての人間を一つの種・大きな集団として捉える言葉である。

そのため、

彼は面白い人間だ。

とは言えるが、

彼は面白い人類だ。

とは言えない。

人間 → humanという存在

人類 → humanity / humankindという全体

という違いがある。

「人」と「人物」|人そのものか、特徴を持った一人か

「人物」は、単にそこに存在する人というより、その人の性格・能力・立場などを含めて一人の存在として捉えるときに使われやすい。

彼は信頼できる人物だ。
歴史上の人物について調べる。

「あそこに人物がいる」とは普通言わない。

「あそこに人がいる」が自然である。

つまり、

人 → 人を指す一般的な言葉

人物 → その人の特徴や立場を含めて捉える言葉

という違いになる。

「重要人物」「登場人物」「歴史上の人物」などの表現にも、この感覚が表れている。

「人」と「個人」|ただの一人か、集団に対する一人か

「個人」は、一人の人を集団や組織との対比の中で見る言葉である。

個人の意見を尊重する。
これは会社ではなく個人の責任である。

単に、

公園に個人がいる。

とは通常言わない。

ここでは「人」が自然である。

「個人」が必要になるのは、「会社と個人」「社会と個人」「集団と個人」のように、一人一人の独立性を意識するときである。

したがって、

人 → 一人の人を広く表す

個人 → 集団から切り離して一人として見る

という違いがある。

英語の individual を理解するときにも重要な区別である。

「人」と「他人」|人一般か、自分ではない人か

「他人」は、自分を基準として人を分類する言葉である。

他人の物を勝手に使ってはいけない。
彼はもう他人ではない。

単なる「人」には、自分との関係は含まれていない。

「他人」になると、自分とは別の人、特に自分と親しい関係にない人という意味が加わる。

「他者」も近いが、やや抽象的である。

他者の立場を理解する。

「他者」は心理学・哲学・社会について語る場面などで、「自分ではない存在」という対立を示すのに使いやすい。

日常的な「知らない人・よその人」に近いのが「他人」、抽象的な「自己ではない人」に近いのが「他者」である。

「人」と「人々」|一人を含む広い表現か、複数を意識するか

日本語の「人」は、文脈によって人間一般も表せる。

人は一人では生きられない。

この「人」は特定の一人ではなく、人間一般を意味している。

一方、「人々」は明確に複数の人を意識する。

多くの人々が広場に集まった。

「人々」は複数性を強調するが、日常会話では単に「人」を使うことも多い。

英語ではこの単数・複数の区別が、日本語よりも文法上はっきり表れる。

ここが person と people を理解する重要な入り口になる。

「人々」と「大衆」|複数の人か、大きな社会集団か

「人々」は、単純に複数の人を表せる。

「大衆」は、社会を構成する多数の一般の人々を一つの集団として捉える。

多くの人々がそのニュースを見た。
その音楽は大衆に広く受け入れられた。

したがって、

人々 → 複数の人

大衆 → 社会の多数の一般人を一つの層として見る

という違いになる。

英語でも people、the public、the masses など、どのような集団として人を見るかによって表現が変わる。

「住民」と「市民」|住んでいる人か、社会の構成員か

「住民」と「市民」も「人」の社会的な捉え方である。

地域住民に説明する。
市民の権利を守る。

「住民」は、ある場所に住んでいることが中心である。

「市民」は、文字どおりの「市に住む人」を指すこともあるが、より広く社会を構成する一員という意味でも使われる。

そのため、

住民 → 居住地から見た人

市民 → 社会・共同体の一員として見た人

という違いがある。

英語では resident、citizen などが関係するが、英語側の区別も日本語と完全には一致しない。

ここまでの日本語を概念で整理すると

ここまでの日本語を、「どのような視点から人を見ているのか」でまとめると次のようになる。

概念日本語表現
人を広く指す人
生物・存在として見る人間
種全体として見る人類
特徴を持った一人として見る人物
集団に対する一人として見る個人
話題のその人自身本人
自分ではない人他人・他者
複数の人人々
社会の多数の人大衆
場所に住んでいる人住民
社会の構成員として見る市民・国民
年齢から見る子ども・若者・大人・高齢者
自分との関係から見る知人・友人・仲間

日本語でも「人」を一つの概念として扱っているわけではない。

「人」という存在を、数・生物・個別性・所属・社会・関係などの視点から切り分けているのである。

英語では「人」をどう表すのか?

では、英語では「人」をどう表すのか。

まず代表的な表現を整理してみよう。

日本語のイメージ英語コアイメージ
一人の人person一人の人として捉える
複数の人々people人々という集まり
人間・人のhuman人間という種類・性質
一人の人間human being生物・存在としての一人の人間
個人individual集団から区別された一人
人類humanity / humankind人間全体
住民residentある場所に住む人
市民・国民citizen国家・社会の構成員

この表も「人=person」「人間=human」という一対一の対応表ではない。

日本語の「人」は、場面によって person にも people にも human being にもなり得る。

反対に human は名詞としてだけでなく、「人間の」「人間らしい」という形容詞としても使われる。

重要なのは、その「人」をどのような視点から捉えているのかである。

person|一人の「人」

person の中心にあるのは、一人の人を一つの存在として数えたり指したりする感覚である。

There is a person at the door.
ドアのところに人がいる。

She is a kind person.
彼女は親切な人である。

このように、特定の一人を指すときに使いやすい。

person は可算名詞なので、

one person
一人

two people
二人

となるのが基本である。

複数形 persons も存在するが、普通に「人々」と言う場合は people が一般的である。persons は法律・規則・案内などの形式的な文脈で見られることがある。

日本語の「人」は単数・複数を形そのもので区別しないことが多いが、英語ではこの違いが表面に出る。

people|複数の「人々」

people は、日常英語で複数の人を表す最も基本的な言葉である。

Many people came to the event.
多くの人がそのイベントに来た。

People are waiting outside.
人々が外で待っている。

person が「一人」に焦点を当てるのに対し、people は複数の人をまとめて捉える。

ただし people には、もう一つ「民族・国民」という意味もある。

the Japanese people
日本国民・日本の人々

この意味では a people と言うこともあり、複数形 peoples も存在する。

つまり people は単なる person の複数として使われる場合と、一つの民族・集団として人々を見る場合がある。

human|「人間」という種類・性質を見る

human は、person とは視点が異なる。

中心にあるのは、人間という生物・存在であることである。

Humans need water to live.
人間は生きるために水を必要とする。

この場合、個々の人物というより「人間という生物」を他の生物と区別している。

human は形容詞としても非常によく使われる。

the human body
人体

human behavior
人間の行動

human nature
人間の本性・人間性

person が「誰か一人」に焦点を当てやすいのに対し、human は「人間であること」に焦点を当てる。

そのため、

She is a nice person.
彼女はいい人だ。

が自然であり、通常この意味で She is a nice human. とは言わない。

human being|生物・存在としての一人の人間

human being は「人間」「人間という存在」を明示的に表す。

Every human being needs food and water.
すべての人間には食べ物と水が必要である。

person と human being はどちらも一人の人間を指せるが、焦点が違う。

person → 社会の中の一人の人

human being → 生物・存在としての一人の人間

という違いである。

たとえば、

He is a good person.
彼はいい人だ。

では、その人の人格について話している。

一方、

He is only human.
彼もただの人間だ。

では「人間なのだから完璧ではない」という、人間という存在の性質に注目している。

individual|集団の中の「個人」

individual は、集団を構成する一人一人を別々の存在として見る言葉である。

Each individual has different needs.
一人一人必要なものは異なる。

The rights of the individual must be respected.
個人の権利は尊重されなければならない。

person と比べると、individual には「他の人とは別の一個の存在」という視点が強い。

そのため日常的に、

あそこに人がいる。

と言いたいだけなら person が自然である。

individual は、社会・法律・研究・組織など、集団と一人一人を対比するときに使われやすい。

日本語の「個人」とかなり近い概念である。

person・people・humanの違いを一度整理する

「人」を表す中心語の違いは、視点を変えると分かりやすい。

英語注目しているもの日本語のイメージ
person一人の存在人・人物
people複数の人人々
human人間という種類・性質人間・人の
human being一人の人間という存在人間
individual集団に対する一人個人

たとえば、一人の女性を見ても、見方によって表現が変わる。

She is a kind person.
彼女は親切な人である。

ここでは「どんな人か」を見ている。

She is a human being.
彼女は一人の人間である。

ここでは「人間という存在」であることを見ている。

She is an individual with her own ideas.
彼女は自分自身の考えを持った一人の個人である。

ここでは「集団とは別の一人の存在」であることを見ている。

同じ人を指していても、概念上の切り取り方が異なるのである。

「人類」はhumanity・humankind・mankindでどう表すのか

「人」の範囲を最大まで広げると「人類」になる。

代表的な英語には humanity と humankind がある。

Climate change is a challenge for humanity.
気候変動は人類にとっての課題である。

Humankind has always looked at the stars.
人類は昔から星を見上げてきた。

humanity には「人類」だけでなく「人間性」「人間らしさ」という意味もある。

humankind は、人間という種全体をまとめて表す言葉である。

mankind も「人類」を意味する伝統的な表現だが、現代では性別を限定しない humankind や humanity が選ばれることも多い。

ここでも単純に「人類=humanity」と固定するより、文脈によって表現を選ぶ必要がある。

「住民・市民・国民」は何を基準に人を分けているのか

英語でも、社会との関係によって「人」の呼び方が変わる。

日本語英語基準
住民residentどこに住んでいるか
市民・国民citizen市・国家などの構成員・法的地位
地元の人localその地域との結びつき
訪問者visitorその場所を訪れている
外国人foreigner / foreign national など国・国籍との関係

たとえば resident と citizen は同じではない。

She is a resident of Tokyo.
彼女は東京の住民である。

resident は「そこに住んでいる」ことが中心である。

She is a Japanese citizen.
彼女は日本国民である。

citizen は国家などとの社会的・法的な関係が中心になる。

「どこにいる人なのか」と「どこに属する人なのか」は別の概念なのである。

「知らない人」はstranger、「他の人」はsomeone else

日本語の「人」は、人間関係によっても別の英語へ枝分かれする。

日本語のイメージ英語コアイメージ
知らない人stranger自分と面識がない人
誰かsomeone / somebody特定していない一人
誰でもanyone / anybody誰であるかを限定しない
他の人someone else / other people今の対象とは別の人
地元の人localその土地の人
仲間・同僚fellow / colleague など同じ立場・集団の人

A stranger helped me.
知らない人が私を助けてくれた。

Someone is at the door.
誰かがドアのところにいる。

日本語では「知らない人」「ほかの人」「地元の人」のように「人」を残したまま表現できる。

英語では、その人との関係や立場そのものが一つの単語になる場合がある。

これも「人=person」だけでは捉えられない部分である。

「人」の概念地図

「人」という概念を日本語から英語へつなげると、次のようになる。

人
│
├─ 一人の人として見る
│   ├─ 人・人物
│   └─ person
│
├─ 複数の人として見る
│   ├─ 人々
│   └─ people
│
├─ 生物・存在として見る
│   ├─ 人間
│   ├─ human
│   └─ human being
│
├─ 集団に対する一人として見る
│   ├─ 個人
│   └─ individual
│
├─ 種全体として見る
│   ├─ 人類
│   ├─ humanity
│   └─ humankind
│
├─ 住む場所から見る
│   ├─ 住民
│   └─ resident
│
├─ 社会・国家との関係から見る
│   ├─ 市民・国民
│   └─ citizen
│
└─ 自分との関係から見る
    ├─ 他人・知らない人・仲間
    ├─ stranger
    ├─ someone else
    └─ fellow など

このように、person、people、human、human being、individual などは、単に「人」の言い換えとして存在しているわけではない。

人をどの視点から切り取っているのかが違うのである。

「一人なのか」「複数なのか」「人間という種なのか」「集団に対する個人なのか」。

この視点を持つと、英語の「人」の世界が一つにつながって見えてくる。

まとめ|「どのような人として見ているのか」を考える

日本語の「人」は非常に広い言葉である。

「人」の概念日本語代表的な英語
一人の人人・人物person
複数の人人々people
人間という存在人間human / human being
集団に対する一人個人individual
人間全体人類humanity / humankind
ある場所に住む人住民resident
社会・国家の構成員市民・国民citizen
面識のない人知らない人stranger

特に基本となるのは、person、people、human の違いである。

She is a nice person.
彼女はいい人である。

Many people live here.
多くの人々がここに住んでいる。

Humans need sleep.
人間には睡眠が必要である。

同じ「人」の世界でも、見ているものが違う。

person は「一人」。

people は「複数の人々」。

human は「人間という種類・性質」。

individual まで広げれば、「集団の中の一人」という別の視点も加わる。

だから、「人=person」「人間=human」と一対一で覚えるだけでは、言葉の境界は見えてこない。

一人の人物として見ているのか。

複数の人々として見ているのか。

人間という生物・存在として見ているのか。

集団に対する一人の個人として見ているのか。

「どのような人として捉えているのか」を先に考えることで、person、people、human、human being、individual といった英語が、ばらばらの単語ではなく「人」という一つの概念世界の中で見えてくるのである。

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