「通る」を表す言葉
「通る」は、日常のさまざまな場面で使われる非常に広い日本語である。
「この道を通る」
「トンネルを通る」
「駅を通過する」
「人混みを通り抜ける」
「試験に通る」
「審査が通る」
「声がよく通る」
「話の筋が通る」
「電話が通じる」
一見すると、まったく違う意味にも見える。
しかし、その中心には共通するイメージがある。
それは、ある場所・範囲・障害・基準などを越えて、その先へ進むという感覚である。
実際の空間を移動する「通る」から、「試験に通る」「要求が通る」「話が通る」のような抽象的な意味まで広がっているのである。
英語では、この広い「通る」の世界を一つの単語だけで表すことはできない。
pass、go through、get through、go past、crossなど、何をどのように「通る」のかによって表現が変わる。
では、そもそも「通る」とはどのような概念なのだろうか。
まず日本語の世界から整理してみよう。
「通る」と「徹る」|漢字による違いはある?
現代日本語では、基本的に「通る」と書けばよい。
「とおる」には「徹る」と書かれる場合もあるが、現在の日常的な文章では一般的ではない。
| 表記 | 中心となる概念 | 使用例 |
|---|---|---|
| 通る | ある場所や範囲などを経て進む | この道を通る |
| 徹る | 奥まで届く・貫く | 骨身に徹る |
「徹る」は「徹する」「徹底」などにつながる漢字であり、「内部の奥まで届く」という感覚を持つ。
ただし、現代では「身にしみる」「骨身にこたえる」など別の表現が使われることも多く、「通る」の漢字違いとして積極的に使い分ける必要はない。
「通る」の世界で重要なのは、漢字よりも「通り過ぎる」「通り抜ける」「通過する」「横切る」などとの違いである。
「通る」に関係する日本語
まず、英語を考えずに日本語の「通る」の周辺を見てみよう。
| 日本語 | どのような「通る」なのか |
|---|---|
| 通る | ある場所・経路などを経て進む |
| 通っていく | ある場所を経由して進んでいく |
| 通り過ぎる | ある地点のそばを越えて先へ進む |
| 通り抜ける | ある空間の中に入り、反対側などへ出る |
| 通過する | ある地点・区域を経て先へ進む |
| 横切る | ある場所を横方向に渡る |
| 渡る | 道・川などの一方から他方へ移る |
| 抜ける | 内部から外へ出る |
| すり抜ける | 狭い隙間などをうまく抜ける |
| 突き抜ける | 内部を貫いて向こう側へ出る |
| 経由する | 目的地へ行く途中で別の場所を通る |
| 通りかかる | 偶然その場所を通る |
| 通行する | 道路・場所などを人や車が通る |
| 通す | 何かを通れる状態にする・通過させる |
| 試験に通る | 基準を満たして合格する |
| 審査に通る | 審査基準を満たして認められる |
| 要求が通る | 要求が受け入れられる |
| 声が通る | 声が遠くまでよく届く |
| 筋が通る | 論理や考えに一貫性がある |
| 話が通る | 内容や事情が相手に理解される |
このように、「通る」は単なる移動を表す言葉ではない。
場所を経る → 中を抜ける → 地点を越える → 基準を越える → 相手に届く
というように、具体的な空間から抽象的な世界へ意味が広がっている。
「通る」の概念はどこへ枝分かれするのか
「通る」の世界は、「何を越えているのか」「どこを進んでいるのか」で整理すると分かりやすい。
| 概念の軸 | 表現 | 違い |
|---|---|---|
| 経路 | 通る / 経由する | そこを進むか、目的地までの途中として使うか |
| 地点 | 通る / 通り過ぎる | その場所を経るか、その先まで進むか |
| 内部 | 通る / 通り抜ける | 中を進むか、入口から出口まで抜けるか |
| 方向 | 通る / 横切る | 経路を進むか、横方向に渡るか |
| 出口 | 通る / 抜ける | 経路全体を見るか、外へ出ることを見るか |
| 偶然性 | 通る / 通りかかる | 意図した経路か、偶然そこを通ったか |
| 基準 | 通る / 合格する | 条件を満たして先へ進める |
| 承認 | 通る / 認められる | 提案・要求などが受け入れられる |
| 到達 | 声が通る | 音などが遮られず遠くへ届く |
| 論理 | 筋が通る | 考えが矛盾なくつながる |
中心にあるのは、単なる「移動」よりも広い。
何かに遮られず、ある領域を経て先へ到達する
というイメージを置くと、「試験に通る」「声が通る」「筋が通る」までつながって見えてくる。
「通る」と「通り過ぎる」|そこを経るか、その先まで行くか
「通る」は、その場所が経路に含まれることを表す。
「毎朝、この公園の前を通る」
この文では、公園の前が普段の経路になっている。
一方、「通り過ぎる」は、
ある地点まで来て、そこで止まらず、その先へ進む
ことに焦点がある。
「店に気づかず通り過ぎた」
「バスが停留所を通り過ぎた」
「通る」よりも、「対象を後ろにして先へ進んだ」という感覚が強い。
したがって、
通る → その場所が経路に含まれる
通り過ぎる → その地点を越えて先へ行く
という違いである。
「通る」と「通り抜ける」|経路を進むか、中から外へ出るか
「通り抜ける」では、入口と出口のイメージが強くなる。
「トンネルを通る」
「トンネルを通り抜ける」
どちらも自然である。
しかし、「通る」はトンネルを経路として利用することを見る。
「通り抜ける」は、
トンネルの中へ入り、向こう側へ出る
という移動全体を見る。
「森を通り抜ける」
「人混みを通り抜ける」
「路地を通り抜ける」
などにも使える。
通る → 内部を経路として進む
通り抜ける → 内部を抜けて反対側へ出る
という違いである。
「通る」と「通過する」|日常的な移動か、地点を越えることか
「通過する」は「通る」より硬い表現である。
「電車が駅を通過する」
「台風がこの地域を通過した」
「チェックポイントを通過する」
などで使われる。
「通る」が日常的で広いのに対し、「通過する」は、
ある地点・区域・段階を越えて先へ進む
ことを客観的に表しやすい。
そのため、
「毎朝この道を通過して会社へ行く」
も意味は通じるが、日常会話なら「この道を通って」のほうが自然である。
「通る」と「横切る」|経路に沿うか、横方向に渡るか
「横切る」は、ある空間を一方から他方へ横断することである。
「道路を横切る」
「猫が庭を横切った」
「道路を通る」なら、その道路を経路として進むことが考えられる。
一方、
「道路を横切る」
なら、道路そのものを横断して反対側へ行く。
つまり、
通る → その場所・道を経路として進む
横切る → その場所を横方向に渡る
という違いがある。
英語を考えるときにも、この違いは重要になる。
「通る」と「抜ける」|経路を見るか、出口を見るか
「抜ける」は、「内部から外へ出る」という部分に焦点がある。
「トンネルを抜ける」
「森を抜ける」
「人混みを抜ける」
などである。
「トンネルを通る」はトンネル内を移動することまで含めた広い表現である。
「トンネルを抜ける」は、
トンネルの外へ出る
という到達点を強く感じさせる。
そのため、
「長いトンネルを抜けると海が見えた」
のような表現が自然になる。
「通る」と「経由する」|その場所を通るか、途中の経路として使うか
「経由する」は、出発地から目的地までの途中に別の場所を入れることである。
「東京を経由して仙台へ行く」
「この電車は新宿を経由する」
単にその場所を通ったというより、
目的地へ向かう経路の一部として、その場所を組み込む
ことに焦点がある。
「通る」は局所的な移動を表せるが、「経由する」は出発地と目的地を含む経路全体を意識した表現である。
「通る」と「通りかかる」|予定した経路か、偶然そこにいたか
「通りかかる」は、
たまたまその場所を通る
ことを表す。
「店の前を通りかかった」
「事故現場を通りかかった人」
などである。
「店の前を通った」だけなら、その道を選んだ理由は分からない。
「通りかかった」と言うと、その場所自体が目的ではなく、偶然そこを通ったという意味が加わる。
「通る」に「偶然性」が加わった表現と考えられる。
「通る」と「試験に通る」|場所から基準へ
「通る」の面白いところは、物理的な移動から抽象的な意味へ広がることである。
「試験に通る」
「審査に通る」
「書類審査を通る」
ここでは実際の道を移動しているわけではない。
しかし、
基準という関門を越えて、次の段階へ進む
と考えると、物理的な「通る」とつながる。
「試験に落ちる」が反対方向の表現になることからも、試験や審査が一種の「通過点」として捉えられていることが分かる。
「通る」と「要求が通る」|障害を越えて受け入れられる
「要求が通る」
「希望が通る」
「意見が通る」
という表現もある。
ここでは、
自分の要求や意見が相手側の判断という障害を越え、受け入れられる
という意味になっている。
「試験に通る」が自分自身が基準を越えるイメージなら、「要求が通る」は要求そのものが相手まで届いて受け入れられるイメージである。
「声が通る」|遮られず遠くまで届く
「声が通る」は、人が場所を移動する「通る」とはかなり違って見える。
「彼女はよく通る声をしている」
これは、
声が途中で弱くならず、遠くまで届く
という意味である。
「通る」の「ある範囲を遮られずに進む」というイメージが、音の伝わり方へ広がっている。
「鼻が通る」「風が通る」なども、何かが途中で遮られずに進めるという点で共通している。
「筋が通る」|考えが途中で矛盾しない
「筋が通っている」は、論理や主張について使われる。
「彼の説明は筋が通っている」
「その理屈では筋が通らない」
ここでの「筋」は、考えの道筋である。
出発点から結論までが矛盾せずにつながっているため、
考えの道を途中で行き詰まらずに通れる
と考えることができる。
物理的な「道を通る」という感覚が、論理的なつながりへ抽象化された表現である。
ここまでの日本語を概念で整理すると
日本語の「通る」の世界を整理すると、次のようになる。
| 概念 | 日本語表現 |
|---|---|
| ある場所を経路として進む | 通る |
| 地点を越えて先へ行く | 通り過ぎる |
| 内部を進んで外へ出る | 通り抜ける |
| 地点・区域を越える | 通過する |
| 横方向に渡る | 横切る |
| 内部から外へ出る | 抜ける |
| 狭い場所などをうまく抜ける | すり抜ける |
| 途中の場所を経路に入れる | 経由する |
| 偶然その場所を通る | 通りかかる |
| 基準を満たして先へ進む | 試験・審査に通る |
| 提案などが受け入れられる | 要求・意見が通る |
| 遮られず届く | 声・風が通る |
| 論理的につながる | 筋が通る |
こうして見ると、「通る」の中心には、
ある領域・地点・障害を経て、その先へ進む
という共通した概念がある。
英語では「通る」をどう表すのか?
では、英語では「通る」をどう表すのだろうか。
日本語では「通る」一語でかなり広い範囲を表せるが、英語では移動の形によって表現が分かれる。
| 日本語のイメージ | 英語 | コアイメージ |
|---|---|---|
| ある地点を通る・通過する | pass | 対象となる地点を越えて進む |
| 内部を通る | go through | 中に入り、その内部を経る |
| 中を抜けて向こうへ出る | get through | 障害・内部を越えて先へ到達する |
| そばを通り過ぎる | go past | 対象の位置より先へ行く |
| 横切る | cross | 一方から反対側へ渡る |
| 途中で経由する | go via | 途中の場所を経路に入れる |
この表は「通る=pass」のような一対一の対応表ではない。
日本語で何を「通る」と捉えているのかを整理し、その場面で英語がどこに焦点を当てるかを見るための表である。
pass|ある地点を越えて進む
passは「通る」「通過する」「通り過ぎる」などに関係する中心的な英単語である。
コアイメージは、
ある基準点・対象の位置を越えて先へ進む
ことである。
We passed the station.
私たちはその駅を通り過ぎた。
駅という地点を越えて先へ進んでいる。
A car passed me.
車が私を追い越していった。
ここでも、自分という基準点を車が越えていく。
さらにpassは抽象的な「通る」にも広がる。
She passed the exam.
彼女は試験に合格した。
試験という基準を越えたのである。
日本語の「試験に通る」と非常によく似た概念の広がりを持っている点が興味深い。
go through|内部を通って進む
go throughではthroughが重要である。
throughには、
ある空間・範囲の中へ入り、その内部を経て向こう側へ進む
というイメージがある。
We went through the tunnel.
私たちはトンネルを通った。
単にトンネルという地点を越えたのではなく、内部を進んでいる。
The road goes through the forest.
その道は森の中を通っている。
この場合も「森の内部」が意識されている。
passが「地点を越える」方向に強いのに対し、go throughは「内部を経る」という過程に焦点がある。
get through|障害を越えて先へ到達する
get throughも「通り抜ける」と訳されることがある。
go throughとの違いは、getが「ある状態・地点へ到達する」感覚を加えることである。
We finally got through the crowd.
私たちはようやく人混みを抜けた。
単に人混みの中を進んだのではない。
人混みという障害を越えて、向こう側まで到達した
という感覚がある。
このイメージから、get throughは抽象的な障害にも広がる。
I finally got through the exam.
ようやく試験を切り抜けた。
文脈によって意味は変わるが、「困難なものを最後まで乗り越える」という感覚が中心にある。
go past|対象のそばを越えて先へ進む
go pastは、日本語の「通り過ぎる」を理解するのに分かりやすい表現である。
pastは、
ある対象より先の位置へ
という関係を表す。
Go past the bank and turn right.
銀行を通り過ぎて右に曲がって。
銀行の中を通るのではない。
銀行を基準として、その位置より先へ進む。
I walked past him without noticing.
私は彼に気づかず、そのそばを通り過ぎた。
passと近い場面もあるが、go pastは「対象より先へ」という位置関係を視覚的に捉えやすい表現である。
cross|一方から反対側へ横切る
crossは「通る」より「横切る」「渡る」に近い。
コアイメージは、
ある線・面を一方から反対側へ越える
ことである。
We crossed the street.
私たちは道路を横断した。
道路に沿って進んだのではなく、道路の反対側へ渡っている。
The river crosses the city.
その川は街を横切って流れている。
「道を通る」と「道を横切る」の違いを考えると、go throughやpassとcrossの違いも理解しやすい。
passとgo through|地点を越えるか、内部を通るか
passとgo throughはどちらも「通る」と訳されるため、混同しやすい。
違いは、何を見ているかである。
pass → 対象・地点を基準にして、その位置を越える
go through → 空間の内部に入り、その中を進む
たとえば、
We passed the park.
私たちは公園を通り過ぎた。
なら、公園を一つの地点・対象として見ている。
一方、
We walked through the park.
私たちは公園の中を歩いて通った。
なら、公園という空間の内部を移動している。
日本語ではどちらも「公園を通った」と言える可能性があるため、英語では「どこをどう通ったのか」をより具体的に考える必要がある。
go throughとget through|中を進むか、抜けきるか
go throughとget throughも近い表現である。
We went through the crowd.
私たちは人混みの中を進んだ。
We got through the crowd.
私たちは人混みを抜けた。
go throughは内部を進む過程に焦点を置きやすい。
get throughは内部・障害を越えて向こうまで到達することに焦点を置きやすい。
日本語でいえば、
通る・中を進む → go through
通り抜ける・抜けきる → get through
という違いに近い。
「試験に通る」はpassが中心
物理的な「通る」から抽象的な「基準を通る」への広がりは、英語のpassにも見られる。
I passed the exam.
私は試験に合格した。
He passed the test.
彼はテストに合格した。
ここでは試験が一種の基準点・関門として捉えられている。
passには「前を通過する」だけでなく、「一定の基準を越える」という概念がある。
そのため、「試験に通る」とpassは単なる偶然の訳語対応ではなく、概念的にもかなり近い。
「審査に通る」「法案が通る」は英語でどうなる?
抽象的な「通る」は、すべてpassになるわけではない。
たとえば法案については、
The bill passed.
その法案は可決された。
と言える。
一方、申請や提案についてはapproveが関係する場合がある。
My application was approved.
私の申請は承認された。
日本語なら「申請が通った」と言える場面である。
ここでは、
基準を越える → pass
権限を持つ人・組織に認められる → approve
という違いが見えてくる。
日本語の「通る」が「承認される」まで広がっているため、英語では状況を具体的に捉え直す必要がある。
「話が通る」「声が通る」は移動の英語から離れていく
「通る」の抽象化が進むと、英語ではpassやgo throughから離れることも多い。
たとえば「声がよく通る」は、状況によってcarryを使える。
Her voice carries well.
彼女の声はよく通る。
carryは本来「運ぶ」であるが、音が遠くまで運ばれるという発想である。
一方、「話が通じる」ならunderstandなどが中心になる。
He understands what I’m saying.
彼には私の話が通じる。
「筋が通っている」なら、
That makes sense.
それは筋が通っている。
のように表せる。
つまり、日本語では「通る」という空間的なイメージを抽象的な領域まで広く使うが、英語ではそれぞれ別の概念として表現する場合が多いのである。
「通る」の周辺英語表現
日本語側の概念から英語を整理すると、次のようになる。
| 概念 | 英語表現 | 中心となるイメージ |
|---|---|---|
| 地点を通過する | pass | 基準となる位置を越える |
| 内部を通る | go through | 中に入り内部を経る |
| 中を抜けきる | get through | 障害を越えて先へ到達する |
| そばを通り過ぎる | go past / walk past | 対象より先へ進む |
| 横切る | cross | 一方から反対側へ渡る |
| 経由する | go via | 途中の場所を経路にする |
| 試験に通る | pass | 基準を満たす |
| 承認される | be approved | 権限者から認められる |
| 法案が通る | pass | 議決を経て成立へ進む |
| 声が通る | carry | 音が遠くまで届く |
| 筋が通る | make sense | 論理として理解できる |
ここで重要なのは、「通る」の英訳を探すことではない。
日本語の「通る」が、その場面で何を意味しているのかを分解することである。
「通る」の概念地図
「通る」の世界を日本語から英語へつなげると、次のようになる。
通る
├─ 場所・地点を越える
│ ├─ 通る・通過する → pass
│ └─ 通り過ぎる → pass / go past
│
├─ 空間の内部を進む
│ ├─ 中を通る → go through
│ └─ 通り抜ける → get through / go through
│
├─ 一方から反対側へ移る
│ ├─ 横切る → cross
│ └─ 渡る → cross
│
├─ 途中の経路として使う
│ └─ 経由する → go via
│
├─ 基準・関門を越える
│ ├─ 試験に通る → pass
│ └─ 審査に通る → pass / be approved
│
├─ 提案・要求が認められる
│ ├─ 法案が通る → pass
│ └─ 申請が通る → be approved
│
└─ 何かが遮られず届く・つながる
├─ 声が通る → carry
├─ 話が通じる → be understood / understand
└─ 筋が通る → make sense
こうして見ると、「通る」の中心にある空間的なイメージから、さまざまな意味が広がっていることが分かる。
最初は「道を通る」である。
そこから、
場所を通る
→ 中を通る
→ 関門を通る
→ 基準を通る
→ 承認を通る
→ 音や意味が相手まで通る
と抽象化していく。
英語では、この一つの大きな世界をpass、go through、get through、cross、approve、carryなどに分けて表現しているのである。
まとめ|「何をどのように通るのか」を考える
「通る」は、物理的な移動から試験、承認、音、論理まで広がる日本語である。
| どのような「通る」か | 日本語 | 主な英語表現 |
|---|---|---|
| 地点を越えて進む | 通る・通過する | pass |
| 対象より先へ行く | 通り過ぎる | pass / go past |
| 空間の内部を進む | 通る | go through |
| 内部を抜けきる | 通り抜ける | get through / go through |
| 一方から反対側へ進む | 横切る・渡る | cross |
| 途中の場所を使う | 経由する | go via |
| 基準を満たす | 試験に通る | pass |
| 承認を得る | 審査・申請に通る | pass / be approved |
| 音が遠くまで届く | 声が通る | carry |
| 論理がつながる | 筋が通る | make sense |
「通る=pass」と覚えるだけでは、「トンネルを通る」「公園を通り抜ける」「道路を横切る」「申請が通る」「声が通る」といった表現の違いを説明できない。
まず日本語の「通る」を、
地点を越える
→ 内部を進む
→ 向こう側へ抜ける
→ 基準を越える
→ 承認される
→ 遮られず届く
という概念の広がりとして見ることが重要である。
そのうえで、**「何が、どこを、どのように通っているのか?」**を考える。
地点を越えるならpass、内部を進むならgo through、障害を抜けきるならget through、横断するならcrossというように、使う英語が見えてくる。
ばらばらの英単語として覚えるのではなく、日本語の「通る」を入口として一つの概念世界として捉えることで、英語の使い分けも理解しやすくなる。