「使う」を表す言葉|利用する・活用する・扱うからuse・utilize・employまで

「使う」を表す言葉

「使う」は、日本語の中でも非常に広い範囲をカバーする言葉である。

「道具を使う」「お金を使う」「時間を使う」「人を使う」「頭を使う」「制度を利用する」「知識を活用する」など、対象が変わっても「使う」と表現できる。

しかし、よく考えると同じ「使う」でも意味は少しずつ異なる。

道具を使うことと、知識を活用することは同じではない。サービスを利用することと、機械を操作することも違う。材料を消費することも、「使う」という大きな世界の一部である。

英語でも、この広い世界をすべて一つの単語で表すわけではない。中心には use があるが、utilize、employ、operate、apply、spend、consume などへ概念が枝分かれしていく。

では、そもそも「使う」とはどのような概念なのだろうか。

「使う」と「遣う」|現代では「使う」が中心

「つかう」には「使う」と「遣う」という表記がある。ただし、現代の一般的な文章では「使う」が圧倒的に広く使われる。

表記中心となる概念使用例
使う何かを目的のために働かせる道具を使う
遣う心・金銭などを働かせる、費やす気を遣う、金遣い
つかう漢字を避けた表記気をつかう

「遣う」は完全に「使う」と別の動詞というより、特定の表現に残っている表記と考えると分かりやすい。

「気を遣う」「心遣い」「金遣い」などでは現在もよく見られる。一方、「スマートフォンを遣う」のようには普通書かない。

「使う」に関係する日本語

「使う」の周辺には、「何を」「何のために」「どのように」使うのかによって多くの表現が広がっている。

日本語どのような「使う」なのか
使う何かを目的のために働かせる
利用する役立つもの・仕組みなどを目的のために使う
活用する持っている価値や能力を十分に生かす
使用する「使う」を客観的・形式的に表す
用いる方法・手段として取り入れる
扱う道具・機械・情報などに働きかける
操作する機械などを動かす
運用する制度・資金・システムなどを継続的に動かす
適用する規則・方法・知識などを具体的な対象に当てはめる
費やす時間・労力・金銭などを注ぎ込む
消費する資源・エネルギーなどを使って減らす
浪費する必要以上に無駄に使う
駆使する能力や技術を十分に使いこなす
使いこなす道具・技術などを十分に扱える
悪用する本来望ましくない目的に使う

こうして見ると、「使う」は単なる道具の使用だけを意味する言葉ではない。

目的のために何かの力・価値・量を働かせることが、「使う」の世界の中心にある。

「使う」の概念はどこへ枝分かれするのか

「使う」の周辺語は、「何を使うか」だけでなく、「使うことで何が起こるか」によって整理できる。

概念の軸日本語表現注目する点
基本的な使用使う・使用する何かを目的のために働かせる
役立てる利用する使えるものを目的に役立てる
価値を生かす活用する能力や価値を引き出す
手段にする用いる方法として採用する
動かす操作する機械などをコントロールする
継続的に動かす運用するシステム・制度などを機能させる
当てはめる適用する知識・規則などを対象に使う
資源を減らす消費する使った結果、量が減る
時間・金を注ぐ費やす限られた資源を割り当てる
高度に使う駆使する・使いこなす能力を十分に引き出す
悪い目的に使う悪用する使用目的に問題がある

つまり「使う」を英語にするときも、単に「useを知っていれば終わり」ではない。

何をどのような形で使っているのかを見る必要がある。

「使う」と「利用する」|単に使うか、役立てるか

「使う」は最も広い表現である。

このパソコンを使う。
電車を使って会社へ行く。

「利用する」には、すでに存在するもの・仕組み・機会などを自分の目的に役立てるという感覚が強い。

図書館を利用する。
公共交通機関を利用する。
空き時間を利用して勉強する。

そのため、「ハサミを利用して紙を切る」も意味は通じるが、日常会話では「ハサミを使って紙を切る」のほうが自然である。

「利用する」は「使う」よりも、「そこにある有用性を役立てる」という方向へ意味が絞られている。

「使う」と「活用する」|使うだけか、価値を生かすか

「活用する」は単に何かを使うことではない。

そのものが持っている能力・情報・価値を生かして役立てるという意味を持つ。

学んだ知識を仕事に活用する。
空いている土地を活用する。
データを活用して売上を分析する。

たとえば「英語を使う」は、英語で話したり書いたりすることである。

一方、「英語力を仕事に活用する」では、自分の能力を生かして価値につなげるという意味になる。

「使う → 役立てる → 十分に生かす」と考えると、「使う」「利用する」「活用する」の関係が見えやすい。

「使う」と「使用する」|日常語か、客観的な表現か

「使用する」は意味としては「使う」に非常に近い。

違いは主に文体である。

この部屋では火を使わないでください。
この場所での火気の使用は禁止されている。

「使う」は日常的で幅広い。一方、「使用する」は説明書、規則、案内、技術文書などで使われやすい。

「この鉛筆を使用していい?」と言っても間違いではないが、普通の会話なら「この鉛筆を使っていい?」のほうが自然である。

「使う」と「用いる」|何かを手段として取り入れる

「用いる」は、単に物を使うことよりも、目的を達成するための手段・方法として採用するという意味が強い。

新しい方法を用いる。
この実験では特殊な装置を用いる。
図を用いて説明する。

「使う」より硬い表現であり、論文や説明文でもよく現れる。

「何かを手に取って使う」というより、「ある目的のための手段として選ぶ」という方向へ意味が寄っている。

「使う」と「扱う」|道具を働かせるか、対象に働きかけるか

「扱う」は「使う」と重なることがあるが、視点が異なる。

「使う」は、そのものを目的のために働かせることに注目する。

「扱う」は、そのものに人がどう働きかけるかに注目する。

この機械を使う。
この機械を安全に扱う。

前者では機械の使用そのものが中心である。後者では操作方法や取り扱い方が中心になる。

さらに「個人情報を扱う」「この問題を扱う」のように、物理的な道具以外にも広がる。

「使う」と「操作する」|使うことの中でも動かすことに注目する

「操作する」は、機械・装置・コンピューターなどを意図したとおりに動かすことである。

スマートフォンを使う。
画面を操作する。

スマートフォンを「使う」には、電話する、写真を撮る、調べるなど多くの行為が含まれる。

「操作する」はその中でも、ボタンや画面などを通して機器をコントロールする部分に注目している。

「使う」と「費やす」|時間・お金・労力を注ぎ込む

時間やお金も「使う」ことができる。

しかし、この場合は道具とは性質が異なる。

勉強に時間を使う。
勉強に多くの時間を費やす。

「費やす」は、限られた時間・お金・労力などをある目的へ注ぎ込むことを表す。

使えばその分だけ残りが減るという感覚が重要である。

「使う」と「消費する」|使った結果として減っていく

「消費する」は、資源・エネルギー・商品などを使うことで量が減っていくことに注目する。

電気を使う。
大量の電力を消費する。

前者は行為に注目している。後者は「どれだけ減ったか」という結果に注目しやすい。

この違いは英語の use と consume を考えるときにも重要になる。

「使う」と「使いこなす」|使えるか、十分に扱えるか

「使う」ことができても、「使いこなせる」とは限らない。

新しいソフトを使っている。
新しいソフトを使いこなしている。

「使いこなす」は、機能や特徴を理解し、必要に応じて十分に活用できる状態を表す。

「駆使する」はさらに強く、能力・技術・知識などを自在に使うというニュアンスがある。

最新技術を駆使して映像を制作する。

単なる使用から「熟練した使用」へ概念が広がっている。

ここまでの日本語を概念で整理すると

概念日本語表現
基本的に何かを働かせる使う
客観的・形式的に使う使用する
役立つものを目的に使う利用する
価値や能力を生かす活用する
手段・方法として採用する用いる
対象に働きかける扱う
機械を動かす操作する
仕組みを継続的に動かす運用する
知識・規則などを当てはめる適用する
時間・お金などを割く費やす
資源を使って減らす消費する
無駄に使う浪費する
十分に使える使いこなす
能力を最大限に使う駆使する
悪い目的に使う悪用する

ここまで整理すると、日本語の「使う」自体が一つの意味ではないことが分かる。

この概念の枝分かれを理解したうえで、英語の世界を見てみよう。

英語では「使う」をどう表すのか?

英語で最も基本的な「使う」は use である。

しかし、何をどのように使うかによって別の表現も選ばれる。

日本語のイメージ英語コアイメージ
使うuse目的のために何かを使う
有効に利用するutilize利用可能なものを実用的に役立てる
手段として用いるemploy目的のために採用して使う
知識・方法を適用するapply対象に当てはめる
機械を操作するoperate機械・装置を動かす
時間・お金を費やすspend持っている資源を割り当てる
資源を消費するconsume使うことで減らす
能力などを生かすmake use of利用して役立てる

これは「使う=use」「活用する=utilize」という固定的な対応表ではない。

同じ日本語の「使う」でも、英語では話し手が使用・適用・操作・消費・支出のどこに注目するかによって表現が変わる。

use|目的のために何かを使う

use は「使う」の世界の中心となる最も広い単語である。

コアイメージは、何かをある目的のために働かせることである。

I use this computer every day.
私はこのコンピューターを毎日使っている。

道具だけではない。

We use English at work.
私たちは仕事で英語を使う。

She used her experience to solve the problem.
彼女は経験を生かしてその問題を解決した。

物、能力、情報、方法など、非常に広い対象に使える。

そのため、日本語で「使用する」「利用する」「活用する」と訳したほうが自然な場面でも、英語では普通に use が選ばれることがある。

「使う」の基本語として、まず use を中心に置くと分かりやすい。

utilize|利用可能なものを役立てる

utilize は use に近いが、「利用可能なものを実際の目的に役立てる」という感覚を持つ。

We need to utilize the available space.
利用できるスペースを活用する必要がある。

単純に「使う」と言いたいだけなら、通常は use のほうが自然である。

I use this pen every day.
私はこのペンを毎日使う。

ここで utilize this pen とすると、単純な日常動作としては大げさになりやすい。

そのため utilize を「useの難しい言い換え」と考えるのではなく、利用可能なものを実用的に役立てる方向へ焦点を絞った語と考えるとよい。

employ|手段として採用して使う

employ には「雇う」という有名な意味があるが、方法・技術・手段などを「用いる」という意味もある。

コアイメージは、目的を達成するための手段として取り入れることである。

The researchers employed a new method.
研究者たちは新しい方法を用いた。

この意味では日本語の「用いる」に近い。

ただし、日常的な「スマホを使う」「ペンを使う」なら use が自然である。

use が広い「使う」であるのに対し、employ は「方法・技術などを手段として採用する」という方向へ意味が絞られる。

apply|知識・方法・規則などを対象に当てはめる

apply は、知識・技術・規則などを具体的な対象へ「適用する」ときに重要である。

You can apply this rule to many situations.
この規則は多くの状況に適用できる。

She applied her knowledge to the problem.
彼女はその問題に自分の知識を応用した。

ここでは単に知識を use しているだけではなく、持っているものを具体的な対象に当てはめることに焦点がある。

日本語の「使う」の世界から、「応用する」「適用する」方向へ枝分かれした表現である。

operate|機械や装置を動かす

operate は、機械・装置などを操作して機能させることを表す。

Can you operate this machine?
この機械を操作できますか。

use a machine なら、その機械を目的のために「使う」ことが中心になる。

operate a machine なら、機械を動かし、コントロールすることが中心になる。

日本語でも「機械を使う」と「機械を操作する」は似ているが同じではない。この違いが英語にも現れている。

spend|時間やお金を使う

日本語では「お金を使う」「時間を使う」と言えるが、英語では spend が重要になる。

I spent 3,000 yen on this book.
私はこの本に3,000円使った。

She spends a lot of time studying English.
彼女は英語の勉強に多くの時間を使っている。

spend のポイントは、持っている時間やお金をある目的へ割り当てることである。

そのため、日本語の「使う」を機械的に use に置き換えることはできない。

consume|使って減らす

consume は、エネルギー・燃料・資源などを「消費する」という方向の語である。

This machine consumes a lot of electricity.
この機械は大量の電力を消費する。

use electricity でも「電気を使う」と言える。

しかし consume electricity では、「使用した結果、その資源が消費される」という側面が強くなる。

同じ現象でも、どこに注目するかによって英語が変わるのである。

「利用する・活用する・使いこなす」を英語でどう広げるか

日本語の「使う」の周辺概念は、単独の英単語だけでなく句でも表現できる。

日本語の概念英語表現ニュアンス
~を利用するmake use ofあるものを利用する
~をうまく利用するmake good use of有効に使う
~を最大限活用するmake the most of与えられたものを最大限生かす
~を利用するtake advantage of機会・条件などをうまく利用する
道具などを使いこなすknow how to use使い方を十分理解している
資源などを浪費するwaste無駄に使う
~を悪用するmisuse間違った・不適切な使い方をする
~を再利用するreuseもう一度使う

たとえば、

Make good use of your time.
時間を有効に使いなさい。

では、単に時間を「使う」のではなく、うまく役立てるという意味が加わる。

We should make the most of this opportunity.
この機会を最大限に生かすべきである。

ここまで来ると、日本語の「活用する」「生かす」の世界にもつながっていく。

「使う」の概念地図

「使う」を中心にすると、日本語と英語は次のように広がっている。

使う
│
├─ 基本的に使う
│   └─ use
│
├─ 役立てる・利用する
│   ├─ use
│   ├─ utilize
│   └─ make use of
│
├─ 価値を十分に生かす
│   ├─ make good use of
│   └─ make the most of
│
├─ 手段として用いる
│   ├─ use
│   └─ employ
│
├─ 知識・方法を当てはめる
│   └─ apply
│
├─ 機械を操作する
│   └─ operate
│
├─ 時間・お金を使う
│   └─ spend
│
├─ 資源を使って減らす
│   └─ consume
│
└─ 無駄・不適切に使う
    ├─ waste
    └─ misuse

重要なのは、ここに一本の翻訳線を引かないことである。

「使う → use」と覚えて終わるのではなく、まず「何を、どのような意味で使っているのか」を考える。

すると use を中心として、spend、operate、apply、consume などがばらばらの単語ではなく、「使う」という一つの概念世界から枝分かれした表現として見えてくる。

まとめ|「何をどのように使うのか」を考える

概念日本語英語の代表例
基本的な使用使う・使用するuse
役立てる利用するuse / make use of
有効に役立てる活用するutilize / make good use of
手段として採用する用いるuse / employ
対象に当てはめる適用する・応用するapply
機械を動かす操作するoperate
時間・金を割く費やすspend
資源を減らす消費するconsume
無駄に使う浪費するwaste
不適切に使う悪用するmisuse

「使う」は非常に広い日本語である。

だからこそ、「使う=use」という一対一の対応だけでは英語の世界を十分に理解できない。

道具を使うのか。利用できるものを役立てるのか。知識を当てはめるのか。機械を操作するのか。時間を費やすのか。資源を消費するのか。

「どのような使い方なのか」を先に考えることで、その先に use・utilize・employ・apply・operate・spend・consume という英語の使い分けが見えてくるのである。

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