完全自動詞と不完全自動詞の違い

英語の動詞は、大きく「自動詞」と「他動詞」に分けられます。
自動詞は目的語を必要としない動詞です。
- I run.(私は走る)
- He smiled.(彼は微笑んだ)
- She is happy.(彼女は幸せだ)
- He became a doctor.(彼は医者になった)
どれも動詞の直後に目的語はありません。
しかし、同じ自動詞でも少し違いがあります。
run や smile は、それだけで意味が完成します。
一方、
She is …
と言われると、
「彼女は……何なの?」
と続きを待ちたくなります。
この違いが、完全自動詞と不完全自動詞の違いです。
完全自動詞とは?
完全自動詞とは、簡単にいえば、
「動詞だけで意味が完成する自動詞」
です。
たとえば、
Birds fly.
「鳥は飛ぶ」
fly の後ろに何もなくても意味が成立しています。
The baby cried.
「赤ちゃんが泣いた」
これも cried だけで意味が完成しています。
このような動詞を完全自動詞と呼びます。
基本的には、
S+V(第1文型)
を作ります。
| S(主語) | V(動詞) |
|---|---|
| Birds | fly. |
| The baby | cried. |
| He | smiled. |
| She | laughed. |
ポイントは、
「Vの後ろに説明を足さなくても、Sがどうしたのかがわかる」
ということです。
不完全自動詞とは?
一方、不完全自動詞は、
「目的語はいらないけれど、動詞だけでは意味が完成しにくい自動詞」
です。
代表的なのが be 動詞です。
She is …
これだけでは、「彼女は……何?」となります。
そこで、
She is happy.
とします。
happy が加わることで、
「彼女は幸せだ」
と意味が完成します。
この happy のように、意味を補う言葉を**補語(C:Complement)**と呼びます。
したがって、不完全自動詞は基本的に、
S+V+C(第2文型)
を作ります。
She is happy.
S=She
V=is
C=happy
となります。
「不完全」とは目的語が必要という意味ではない
ここは少し注意が必要です。
「不完全」という言葉を見ると、
「後ろに何か必要なんだから他動詞なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、必要なのは**目的語(O)ではなく補語(C)**です。
たとえば、
She likes apples.
likes は他動詞です。
apples は「何を好きなのか」という目的語です。
一方、
She is happy.
happy は「何を?」にあたる対象ではありません。
She = happy
という関係になっています。
つまり、
She is happy.
彼女 = 幸せな状態
です。
この「S=C」の関係が、第2文型を理解する重要なポイントです。
完全自動詞と不完全自動詞を比べる
整理すると次のようになります。
| 完全自動詞 | 不完全自動詞 | |
|---|---|---|
| 目的語 | 不要 | 不要 |
| 補語 | 不要 | 必要 |
| 基本文型 | SV | SVC |
| 動詞だけで意味 | 完成する | 完成しにくい |
| 例 | run, sleep, laugh, arrive | be, become, seem, look |
たとえば、
He slept.
なら、「彼は眠った」で完成しています。
しかし、
He became …
では、
「彼は……何になったの?」
と感じます。
そこで、
He became a doctor.
と補います。
doctor は目的語ではなく、He を説明する補語です。
He = a doctor
という関係が成立します。
不完全自動詞には「状態」を表す動詞が多い
不完全自動詞には、
主語が「どんな状態なのか」「どう変化したのか」「どう見えるのか」
を表す動詞が多くあります。
代表的なものを見てみましょう。
be ― ~である
He is kind.
彼は親切だ。
He = kind
become ― ~になる
He became famous.
彼は有名になった。
He = famous
seem ― ~のように思われる
She seems tired.
彼女は疲れているようだ。
She = tired
look ― ~に見える
You look happy.
あなたは幸せそうに見える。
You = happy
feel ― ~に感じる
I feel sick.
気分が悪い。
I = sick
sound ― ~に聞こえる
That sounds interesting.
それは面白そうだ。
That = interesting
smell ― ~のにおいがする
The soup smells good.
そのスープはいいにおいがする。
The soup = good
taste ― ~の味がする
This tastes sweet.
これは甘い味がする。
This = sweet
こうして見ると、不完全自動詞には共通するイメージがあります。
「主語についての説明を、後ろの言葉につなぐ」
という働きです。
「=」で考えるとわかりやすい
SVCを見分けるときには、
S=C
が成立するか考えてみるとわかりやすいでしょう。
Tom became a doctor.
なら、
Tom = a doctor
です。
一方、
Tom met a doctor.
では、
Tom ≠ a doctor
です。
a doctor はTom自身を説明しているのではなく、「Tomが会った相手」です。
そのため、
Tom / met / a doctor
S / V / O
となります。
この違いは非常に重要です。
同じ動詞でも完全自動詞になったり不完全自動詞になったりする
ここで注意したいのは、
「この動詞は完全自動詞」「この動詞は不完全自動詞」と、単語だけで完全に固定できるわけではない
ということです。
たとえば grow を見てみましょう。
Children grow.
「子どもは成長する」
これなら、
S+V
で意味が完成しています。
一方、
Children grow tired.
なら、
「子どもたちは疲れてくる」
という意味になります。
この場合、
Children = tired
という関係なので、
S+V+C
です。
つまり grow は使い方によって、
Children grow.
SV
にも、
Children grow tired.
SVC
にもなります。
英語を理解するときには、
動詞に貼られた「完全自動詞」「不完全自動詞」というラベルを暗記するより、その文の中で動詞がどんな働きをしているのかを見る
ことが大切です。
「完全」「不完全」は何が完全なのか?
「完全自動詞」「不完全自動詞」という言葉は、一見すると難しく感じます。
しかし、「完全」という言葉をそのまま受け取ると意外とわかりやすいものです。
He laughed.
これだけで、
「彼は笑った」
と意味が完成しています。
だから完全自動詞。
一方、
He became …
では意味がまだ不完全です。
「何になったの?」
という情報が必要です。
He became angry.
まで聞いて、ようやく意味が完成します。
つまり、
完全自動詞=Vだけで述語として意味を完成できる
不完全自動詞=Vだけでは足りず、Cによる補完が必要
と考えるとよいでしょう。
リスニングでは「次に何が来るか」を予測できる
完全自動詞と不完全自動詞の違いは、英文法の問題を解くためだけの知識ではありません。
リスニングにも役立ちます。
たとえば、
She became …
と聞こえたとします。
become が「~になる」という意味で使われているとわかれば、
「次に彼女がどうなったのかを説明する言葉が来そうだ」
と予測できます。
She became famous.
あるいは、
She became a doctor.
といった具合です。
一方、
She arrived …
なら、arrived の時点で、
「彼女が到着した」
という出来事そのものは成立しています。
その後ろに、
She arrived at the station.
と続くかもしれませんが、at the station は「彼女=駅」という補語ではありません。
「どこに到着したのか」という追加情報です。
ここが、
「後ろに何か付いている=不完全自動詞」ではない
という重要なポイントです。
「後ろに何かあるか」ではなく「必要か」で考える
完全自動詞にも、実際の英文ではさまざまな言葉が続きます。
He runs every morning.
She arrived at the station.
The baby slept for three hours.
後ろに言葉があるからといって、不完全自動詞になるわけではありません。
それらを取っても、
He runs.
She arrived.
The baby slept.
と、文の核となる意味は成立します。
一方、
She became.
では通常、「何になったの?」という感じが残ります。
したがって、完全・不完全を考えるときは、
「後ろに言葉があるか?」ではなく、「その言葉が動詞の意味を完成させるために必要か?」
を見ることが重要です。
まとめ
完全自動詞と不完全自動詞は、どちらも目的語を必要としない自動詞です。
違うのは、補語が必要かどうかです。
He laughed.
S+V
laugh はそれだけで意味が完成するので完全自動詞。
He became angry.
S+V+C
become は「何になったのか」という説明が必要なので不完全自動詞です。
覚え方としては、
完全自動詞=「Sがどうした?」で終われる
不完全自動詞=「Sはどんな状態?」という説明がまだ必要
と考えるとわかりやすいでしょう。
そして不完全自動詞を見抜く大きなヒントが、
S=C
です。
She is happy.
She = happy
He became a doctor.
He = a doctor
この感覚が身につくと、SVとSVCの違いもかなり見えやすくなります。
「完全」「不完全」という一見難しそうな文法用語は、実は、
「動詞だけで意味が完成するか?」
という、とても単純な違いを表しているのです。